君が食べるまで泣くのをやめない
昨日は余りのショックに取り乱してしまった。しかし、今日こそは告白を成功させてみせる。
昨日は余りに贈り物が大き過ぎた。過ぎたるは及ばざるが如しという奴だ。大き過ぎる花束に、彼女も萎縮してしまったのだろう。
だから、今回は、手作りのお菓子を用意した。彼女への愛情を、これでもかという程詰め込んで作った。見た目はコンパクトだが、昨日の花束以上に俺の愛が詰まっている。
「御崎歌織! このカップケーキのように甘い時間を君と共に過ごしたい!」
「すみません、私、甘いの駄目なんですよ」
予想だにしない言葉に、思わず膝から崩れ落ちる。
しかし、今回の作戦はこれで終わりではない。
一般的に、料理ができる男というのはモテるらしい。例え、食べてもらえないとしても、これが手作りであることに気づいてもらえれば、それだけで好感度アップに繋がるだろう。
手作りであることを遠回しに伝えるために、ラッピングは少々雑にし、指にはわざとらしく絆創膏を貼ってきた。怪我など全くしていないが、アピールの為にはこれくらいしておいた方が良いだろう。
「これ、もしかして手作りですか?」
彼女が思惑通りにそれに気付いた事に、心の中でガッツポーズをする。さあ、その勢いで俺に惚れてくれ。
「カップケーキ作るのにそんな怪我するなんて、めちゃくちゃ不器用ですね、先輩。そんな不器用なら、無理してお菓子なんて作らなくていいんですよ?」
その日、俺は家に帰り泣きながらカップケーキを食べた。