愚者の黄金
「ねぇ、あなた部屋の掃除終わった?」
「もう少しだよ。なぁこれ見てくれよ、小学生の時の絵日記出てきたんだ。懐かしいなぁ」
「どれどれ、あら可愛い字を書いてたのね。女の子みたい」
「その頃は姉に文字の書き方教わった名残があったんだよ。今は男らしい字を書くだろ?」
「今なんかほとんどメールばかりだから文字書いてるのなんか数年見てないわよ」
「そうかなぁ」
「そうよ。・・・えっあなたあだ名ぶーちゃんだったの?」
「あぁその頃は太ってたからなぁ」
「私と出会う頃には痩せて今は戻ったってことね」
「しょうがないさ、美味しい手料理ばかり食べてたから幸せ太りだよ」
「そんなの言い訳だわ。今度の日曜日から私と一緒にスポーツジムに通いましょう」
「・・・時間があったらね」
「駄目、約束よ。・・・絵日記面白いわね。これなんかすごいんじゃないカードゲーム大会優勝ってやつ」
「あぁ、それ懐かしいなぁ。友達と3人で全国大会出てそれぞれ1位2位3位取ったんだよ」
「小学生で?それってすごいんじゃない?」
「その頃のそのカードゲームはお金かければ勝てるって訳じゃなかったからね。運がよかったんだよ。
まぁ、それに入賞してカードもらって終わりでよかったよ。賞金もらってたら親が黙ってないだろうし」
「親に黙ってでてたの?」
「友達の家に泊まるってことで東京まで3人で旅行だよ。まぁその友達のいとこの家には泊めてもらったけど」
「ふぅん、それでそのもらったカードはどうしたのよ?よく昔のカードって価値ついて値段がすごくなること多いじゃない?」
「ダンボールの中にあると思うけど。売れるわけないさ、20年も前のカードだよ」
「私が売れるか調べるから、あなたは探してみてよ」
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・・・・
「見つからなかったよ」
「1000万」
「何が?」
「その、カードの値段よ。3枚それぞれ1000万」
「まさかぁ、小学生が手に入れられるようなカードだよ」
「20年も経てば事情は変わるの。今も人気があるらしいけどその時の3枚だけ復刻はされなかったんですって」
「だから1000万?冗談ぽいなぁ」
「だからあなたは馬鹿なのよ。1000万よ、さがす価値は絶対あるわよ」
「どこやったかなぁ。捨ててはないけどしまった場所が思い出せないよ」
「他のカードは見つかってそのカードだけ見つかってないってどうしてよ。絵日記に書いてないのどこしまったか」
「書いてはなかったと思うけど、明日にしない?明日休みだし」
「明日はあなた同窓会で昼からいなくなるじゃない。今しかないわよ」
(面倒くさいなぁ)
「貸して、私が調べるから」
「はい、大切に読んで」
「・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
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「あなた、タイムカプセルの場所はどこ?」
「タイムカプセル?・・・あぁ思い出した。学校の裏の公園のすべり台のしたに埋めたんだよ。そうだ大会の思い出として3枚とそれぞれの宝物を埋めたんだった」
「今から掘りにいくわよ」
「今から?午前2時だよ。それに車で行ったとしてもここから2時間ぐらいかかるよ」
「あなた、うまくいけば3000万よ」
「えぇ?友達の2枚も盗っちゃうの?」
「当たり前よ。やすやす2000万無駄にはできないわ」
「友達に悪いよ」
「じゃあいつ掘り起こしに行こうと約束したのよ?」
「還暦迎えるときに」
「その頃にはタイムカプセルなんかなくなっちゃうわよ」
「それに明日の同窓会でその友達とも会うんだよ?
理由話して3等分したほうがいいと思うんだけど」
「その友達と20年も連絡取り合ってなかったんでしょ?あっちだって忘れてるわよ」
「そうかもしれないけど」
「なら行くわよ」
(眠いなぁ)
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「ここだと思うけど」
「・・・月極駐車場」
「どうやら埋めてて駐車場にしちゃったみたいだね」
「みたいだねって何人事みたいに言ってるのよ。私たちは3000万失ったのよ。この馬鹿」
「ひどいなぁ。泣くなよ今度君の欲しがってたネックレス買ってあげるから」
「3000万あったらそのネックレス1000個は買えるのよ!!!」
「そんな耳元で大声で叫ばないでくれよ」
「はああああ」
「帰ろうよ。まぁ仕方ないさ」
「・・・・・・・」
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・・・・
「ぶーちゃん、久しぶりね」
「・・・委員長?変わってないなぁ」
「よしてよ。仕方なく幹事やってるだけなんだから。皆集まってるわよ。残念だけどあなたとトリオ組んでた残りの2人は来ないみたいよ」
「本当に残念だなぁ、理由はなんて言ってた?」
「2人で仕事で海外行ってるみたいよ」
「なんか寂しいなぁ、置いてきぼり食らったみたいだ」
「大学行ったあなたと違って2人はフラフラしてるの何度か見たことあるけど、見えない所で頑張ってたのね。最近になって忙しそうにしてるのを見たわよ」
「そうかぁ、帰ってきたら今度は3人で会おうかな」
「そうするといいわ。ラスベガスって言ってたけど来月には帰るみたいよ」