攻撃は思想で
龍牙は呟く
「じゃあ、拳で来い。100発当てるまで俺はここから動かない」
「へへっ、精々死なねえようになぁ!」
大男は思い切り振りかぶり
「一発目ぇ!」
バキッ
放たれた拳は龍牙の目の前で止まり、男の手からは血が。
「ぐおおぉっ!...てめぇ、何しやがった!」
「何も?ほら、早く殴れよ。100発やんだろ?なぁ?」
勿論何もしていない訳ではない。龍牙の自作能力の超反射【自身に攻撃してきた者に最低3倍の威力で打ち返す。射程は無限であり、必中である。】で守られていたのだ。
「何もしてない分けねえだろうが!ふざけやがって。」
大男は内心焦っていた。大男の自慢のスキルである一撃粉砕【攻撃した者へのダメージが5倍になる】で一撃で終わらせようと考えていた。だが、正体不明の痛みが腕に襲いかかり、既に片腕は使いものにならなくなっていたのだ。こう大男は切り出す。
「気が変わった。今日は勘弁してやらぁ、さっさと失せろ」
早くこの場を離れたい一心でそう言うが
「奇遇だなぁ、俺もたった今気が変わった。さっきは動かないとか言ったけど、お前の態度が気に食わねえ」
その瞬間、大男の身体中から血が吹き出る。
そしてそのまま何も言わず倒れた。
野次馬達は何が起こったのかわからず沈黙。そして龍牙は言い放つ。
「俺に喧嘩売るなら死ぬ気で来い」
そして、捕食【対象を自身に吸収するスキル。吸収したものの能力を得る】を発動する。左手に黒い玉を出現させ男の死体に投げると、一瞬にして死体は消滅したのだった。
この光景を見た野次馬達は絶対に関わりを持ちたくない、そう思ったであろう。
龍牙は何も言わずその場を離れると人通りが多い道へと出た。
暫く歩いていると、一人の男が声をかけてくる。
「なぁ、お前さん、旅人か?良ければうちのギルドに入らないか?さっきの喧嘩みてたぞ」
「先ずは名乗るのが先じゃないか?」
「ふむ、そうだな。すまなかった。俺はサヌマのギルドマスターのガデンと言う者だ。それでそちらは?」
「俺は龍牙だ。面倒事は嫌いなのだが」
ガデンは立ち話もこれくらいにしてギルドで話さないか、と言いそれを了承。
「ここがサヌマのギルドだ。」
「....やはり同じだ」
「ん?なにか言ったか?」
「何も」
ギルド内は広く意外とキレイだった。応接室に入り話をした。
「先ずは説明を頼む。ここは商業ギルドも一緒に行っているのか?」
「いや、この街に商業ギルドは存在しない。アイテムの売買はギルド内であれば基本的に自由だ。商売スペースはあるからそこで行ってくれればいい。ただし、ギルドメンバー以外が使う場合は売上の20%を帰りに置いていって貰うがな」
「成る程」
「次はギルドについての説明だ。
サヌマのギルドは基本的にどんな依頼でも受け付けている。報酬が払えるなら引き受けるつもりでいるからな。どのギルドでもそうなんだが、ランク制度で回しているんだ。ランクが高ければ高いほど難しい依頼を受けられる。ただしランクが高くても採取依頼ばかりやっていたものが高難易度の討伐依頼を受けることは出来ない。何故なら戦績が無いからな。依頼の種類は大きく分けて2つ。討伐依頼と納品依頼だ。採取依頼は納品依頼に分類される。ランクについてだが皆最初はランク1からのスタートだ。」
それから幾つかの注意点を説明された。
「どうだ?入る気に少しはなったか?」
「あぁ、これからよろしく頼む」
「あ、一応試験ってのが必要なんだ。一回5000T。高いと思われる事があるが、メンバーになっちまえばすぐ返ってくるさ」
龍牙の所持金は3000T。足りない。だが、龍牙には関係ない。何故なら[創造]で金さえも作り出すことができるからである。龍牙は次元収納【他次元にアイテムやら何やらをしまっておける。入れたときの状態が維持される】から創造されまくった金を取り出しテーブルに置く。
「5000T。丁度だな。というか龍牙、お前収納魔法を使えるのか?凄いな」
「いや、こいつはスキルだ。俺は魔法を使えない。というより、使ったことがない」
「スキルで収納だと?聞いたことないな。」
「で、試験はいつ頃から何だ?」
「今からでもできるぞ。準備...必要はないか」
「不要だ」
場所を外へ移動する。
第一試験は戦闘。最低限戦闘を行えないと身を守れず命を落としたり、復帰できない程の怪我をおってしまう可能性があるからだ。
「それじゃあ、こいつを倒してみろ」
そう言って出てきたのは体長1m程の巨大な蜘蛛だった。
龍牙はフィンガースナップ一発。その瞬間、蜘蛛は破裂。
「...!龍牙、なにをした?」
「殺しただけだが」
「いや、そうではなくて、今パチンと鳴らしただけのように見えたが」
「あぁ、その通りだ。指を鳴らした。鳴らさなくてもできるが、鳴らした方が攻撃したとわかるだろ?」
「全く言っている意味がわからないのだが...。攻撃というのは武器や魔法で体外からダメージを与えていくものだぞ?どうやったんだ?まさか内側で爆発起こしたのか?」
「いや、破裂して絶命しろって思っただけだ。俺の基本攻撃スタイルは[思想]だ」
全く理解の追い付かないガデンは頭を抱えた。一応合格条件は満たしているので次へ行くことに。
第二試験は採取。依頼中にアイテムが切れそうになったときのために現地調達ができた方が良いと言う考えらしい。
「では、次は薬草を5つとってこい。制限時間は1時間。始め!」
龍牙は草原へ転移。そして薬草を創造。この時地面に創造したため、採取したように見せられる。そして転移で帰還。
「まさか、もうとってきたのか?それに、あれは...お前魔法を使ったことないというのは嘘だろ。瞬間移動なんて普通使えないぞ」
「取ってきた。目的達成は早い方がいいだろ?」
ガデンはため息すら出なかった。
わずか2分で第二試験終了。
第三試験は売買。魔物や動物の素材、植物など様々なものを売買できるとより生活がしやすいだろう、と言う考えらしい。実際は試験と言っているが関係ない。
「では、最後はアイテムの売買だ。制限時間は3時間。このギルド内で好きなだけ売りさばけ。一応確認として、名簿と金額なにを売ったのかを書く紙をやる。では始め」
龍牙は商売スペースの一番端へ行き、激安商売のスキルを発動。
ガデンだけにかからない様に発動すると一気に龍牙の方へ足を運ぶ者が増えた。
商品ラインナップ (ポーション=ポ)
商品名 通常価格 今回の価格
薬草 10 1
下級ポ 150 30
中級ポ 500 100
牛肉生 250 80
豚肉生 180 60
鉄の剣 800 200
矢×20 100 40
弓 450 180
スキル本 100000 5000
「おぉ、あんなに客が。すごい人気みたいだな」
三時間後...
「では、紙を見せてくれ。...なんだとおおお!?どう言うことだ?本当にこれだけ稼いだというのか!?」
「あぁ、嘘じゃない。売ればいいんだろ?好きなだけ」
売上金額:85万7862T
「...後で俺にも売ってくれないか?スキルブック」
「残念ながらもう無え」
「なにーー!?」
スキルブックが思ったより売れていた。スキルブック【ランダムなスキルが低確率で覚えられる】はもう暫く売らないことにした。
「で?結果は?」
「文句なしの合格だよ」
こうして新人ギルドメンバーになった龍牙は本来の目撃とは別に暫くギルドで過ごすことになったのだった。
眠い。仕事に集中できなそう。