旅立ち?
広く白い空間に二人の人物が相対していた。
一人はややイケメンな若い男。
もう一人は微笑みを浮かべる長髭の老人。
「元気じゃったか?龍牙よ」
老人は若い男(龍牙)にそう問いかけた。
「あぁ、久しいな爺さん」
龍牙は短く答える。
「じ、爺さんって...儂をなんだと思っとるのじゃ」
「化け物を作り出した危険人物」
老人はため息を吐きながらこう答える。
「神じゃぞ?分かっておるのか?危険人物って、今のお前さんから見たら赤子同然ではないか」
「そうかもな。だが、他の者達から見れば俺に賛成するだろうが」
龍牙はそう返す。
神は「ぬぅ」と唸り、本題に入る。
「お前さんを此処へ呼んだのは前とは違う異世界へ行って勇者のサポートをして欲しいのじゃ。直接パーティに入っても構わぬし、影から援助しても構わぬ」
それを聞いた龍牙は問う。
「断ったら?」
「断られたら他の者へ頼むしか無かろう...」
少し悲しそうな表情を見せる神。
「そうか、わかった。行こう。未知なる転移先へ」
神は嬉しそうな顔で言う。
「おお!そうか!それは有難い。お前さんならそういうと思っておったぞ!」
老人の笑顔に興味無さそうに
「それで、今回の転移ボーナスはなんだ?力はいらんぞ」
「そうじゃな、土地なんてどうじゃ?」
「土地?世界を回るのに土地なんて要らないだろ」
龍牙はため息をつく。
「帰る家がないのは寂しいぞ?それに、あっちで仲間や客人が家に行きたいとなったらどうするのじゃ?まさか空間を無理矢理広げて『ここが自分の家です』なんていうんじゃないだろうな?」
「そうか、そういう考えもあるか。まぁ、深く関わる事はしないだろうが保険としてもらっておいてやる」
「そうか。じゃ、頑張りなさい。」
そういうと神は優しい微笑みを浮かべ手を振る。
「....あぁ、行ってくる。祖父さん」