序章 悪が栄えた試し無し
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鬼の面を着けた狂気の群れ、怒号鳴り止まぬその場においては泣く子も黙る他ない。雷鳴轟き刹那の閃光が空と大地を結ぶ。
無数の鬼の面の側では同数の鈍色が血を求め、今にもこの世を蹂躙し兼ねない地獄の軍団は、里へとその先端を伸ばしてゆく。
伸びた先に見えていた点。それは地獄の触手に絡め取られたかに見えた。
しかし実際は違った、絡め取った筈の触手は爆ぜ、そこには穴が空く。生まれた空白には点。軍勢を蹴散らしたのはその点である。
点たる人々はそれぞれ武器を持っていた。それは身の丈程の鎌であり、同時に複数番えた弓であり、大地を砕く槌であり、結界を作り出す鞭であり、疾風怒濤たる刀であった。
「鬼の居ぬ間に何とやらか?」
「甘いわね。甘過ぎるわ」
「ふん、態々俺が来る事も無かったか」
「この場に居ない薄情者もいる様ですね」
「ったく、しょうのねぇ連中……げっ、刀にヒビが!?」
世界にその名を轟かせる冒険家ラインス、彼は多くの弟子を持っていた。そしてその弟子達が、それぞれの目的や情報を基に偶発的に師の故郷へと集った結果、地獄の軍団『鬼神党』は壊滅寸前まで追い込まれる事となる。
「ぐぬぬ、てめぇら! なんて事しやがる!!」
「あら? 随分と血気盛んな同門が居たものね」
「まぁ先生はお人が良いからな、放って置けなかったのだろう」
「ふん、俺はお前らも知らん」
「私は貴方を知っていますよ。あなたはずーーっと牢屋の中にいた人、……という事は脱獄囚かしら?」
それぞれ面識を持たない弟子達は、またそれぞれ一気呵成に駆け抜けてゆく。
それは正しく一騎当千と呼ぶに相応しいものであった。