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いつかこの子たちが救われますように

お涙頂戴を目指して書きました。

最後まで読んで初めて泣ける作品です。

ぜひ最後まで読んでください。

コメント待ってます。

  いつかこの子たちが救われますように




 「俺を殺してください。大丈夫です魔力は押さえ込んでいるので邪魔はさせません。お願いします、碧先輩」

 「あおい、やめてください、てんまを殺さないで」

 「殺るんだ、アオイ。君にしかできないんだろ。テンマをこれ以上苦しめさせるな」

 「やめなさいシル!今回の任務は放棄します。いくら天満でもこれは見過ごせません」

 「いや!天満、頼むから逃げてくれ!碧、後生だ天満を殺さないでくれ!お願いだ、止めてくれ!」

 「シル落ち着いてください。あなたなら天満さんがどれだけ危険な存在になりうるかわかないはずがないでしょ!碧先輩これ以上天満さんを苦しませないでください」

 碧先輩は弓に矢をつがえてはいるが尻込みし、エレインは碧先輩に襲いくる敵を押さえ、ユノは前進をボロボロにして動けない状態なのにこちらに手を伸ばして涙で顔を必死に懇願してくる。少し向こうではシルが必死に俺を助けようと暴れ回るが同じ部隊のレイカとセリシアに押さえつけられている。

 ごめんな、みんな。みんな・・・顔がグチャグチャだ。せっかく可愛い顔してるのに台無しだよ。

 体から漏れ出してくる魔力を、事の元凶を必死に押さえ込みながら

 みんな大好きだ。いつまでも忘れない。

 最期にみんなに伝える。声が出てくれたのかは俺にはわからない。

 俺は碧先輩に

 お願いします。

 やはり声になってくれたかはわからないが碧先輩の一層つらそうになってあふれ出てくる涙から伝わったのだろうことが分かる。

 俺は静かに目を閉じた・・・・・・


いつか先輩にはお姉ちゃんになってほしい


「天満!起きろーー!」

「っぶわっ」

突然の大声と横腹をえぐるような蹴りでベッドから転げ落ちカエルの断末魔のような声を上げる俺を

「なに今の声。きもいよ♪」

と口元に手を当てながらにっこりと見下ろしてくる少女。

 見てくれだけならまぁ美少女には違いない。

 そのうえ制服の上からでも胸のあたりが大きく曲線を描いているのがよくわかる。

 年頃の男子の理想をすべて兼ねそろえている完璧美少女。

 金雀児碧。俺より一つ上の先輩だ。

 外見は最高なのに性格がちょっとさばさばしてるというか。

 「なんで俺の部屋にいるんですか?ここ女禁ですよ」

 俺の住んでる家は、女子の進入禁止区域、男子専用の居住区の隅にある。

 本当は男女両方が居住できる家にいきたいけど、たまたま男子区域に三宮家の家があって、手放すのもさびしい気がするからしょうがなく住み続けている。

 というか、そもそも男子勢はみんな女子と近くの家がいいという理由でほとんどが男子区域をでていってしまっている。

まったくもって、うらやま・・・けしからん!

 女子進入禁止区域なわけだから、当然女子である碧先輩は俺の家には来てはいけないはずなのだが。

「もうみんな学校行ってるからだれにもバレなかったわよ。ていうか、そもそもここ、人少ないし」

「は?」

 首を傾げる俺に葵先輩は、はぁ、とため息をつき、んっとスマホの画面を見せつけてくる。

 ただいまの時刻、08:08

 登校時間が08:30・・・・・・だから?

 じかんよーもどれ!

 現実逃避にはしる俺を残したまま

「んじゃ、おっさきー」

 そういって軽快な足取りで俺の部屋をでていく葵先輩。

 先輩もなかなかきわどい時間だと思うのだが。

 静まりかえった部屋に取り残された俺はぽーっと時計を見つめる。

「はっ!やばい!」」


 それからの俺は神懸かった動きを見せた。

 パンをかじりながら着替えをすませ、歯磨きをしながらトイレに行く。

「よし、準備完了!」

天井に向かって高らかに拳を突き上げる。

 どうやら、俺はまだ事の重大さに、自分がおかれている危機的状況に脳が追いついてないみたいです。

「いってきまーす」

 一応部屋の中にいる相棒に声をかけて扉を開ける。


 寮の玄関をでると本当は禁止されているが、今はもう誰も住んでいない民家の屋根を飛び移りながら学校を目指す。

こっつーーーん!

 八軒目の屋根を飛び移り、着地をすると同時に後頭部に猛スピードで跳び蹴りをかましてくる小さな、比喩抜きで本当に小さな少女。

「いってぇ!」

「どうしておいていくんだよ!ボクが気が付かなかったら置いていくつもりだっただろキミ!」

「だから、声はかけただろ」

紹介しよう。

 いま定位置となっている俺の頭頂部にあぐらをかいて文句をたれる体が手のひらサイズくらいしかない妖精、エレイン。

 ちなみにエレインっていう名前は俺がが銘々した。



 こいつと初めてあった時のことを話そう。

 まだ高校に入学してからまだ間もない頃のことだ。

 俺はいつものように学校に登校していたわけだが、その道中朝っぱらから道のど真ん中にぶっ倒れている女性を発見した。

 あわてて駆け寄ってみると、その女性は人間ではなく妖精だった。

 知識こそあれど妖精はおろかモンスターにさえまだ出会ったことのなかった俺は仰天した。

 そんな慌てふためいていた俺に女性は

「なにか、食べる物をください」

か細い声でそんなことを言った。

 こっちの世界に来てまで食い倒れとかシュールだなとか思ったが、あまりにもかわいそうだったし、そのままなにもあげずに走り去るにも後味が悪かったから俺は昼飯の菓子パンを恵んでやった。

 それからだ。

 この女性がことあるごとに俺の前に現れ始めたのは。

 登下校中、トイレ、風呂などなど。

 挙げ句の果てには、俺の家の前を寝床にしていた始末。出すとこに出せば確実に鉄格子生活を約束されるだろう。

 さすがに腹の立ったというか、怖くなった俺は、

「な、なんでいっつも追い回してきてんだ!菓子パンを恵んでもらった恩を見事なまでに仇で返しやがって!あの日俺は水道水で腹を満たしてたのを見て、周りのやつらが俺の主食は水道水だとか言い始めてんだぞ」

 語尾を荒立てて言ってやった。

 すると女性は

「ボクをキミのところにおいてもらえないだろうか」

と上目遣いで頼んできた。

「は?」

「ボクをキミのところにおいてもらえないだろうか。と言ってる」

 いや、聞き取れなかったわけじゃなくて。

 聞くところによると、こっちの世界にきたのは本当に偶然でなんの準備もしてきてなかったから食べ物もないし仲間もいないらしい。

 でもさすがに亜人とはいえ、女子を男子区間にある俺の家に居候させるのには問題がある。もちろんそれ以外にも問題はあるけど。

 そう伝えると、女性は、それなら問題ないよ、といってどんな方法を使ったのかは知らないが見る見るうちに小さくなっていった。

 そう、ちょうど手のひらに収まるくらいの大きさに。

この女性がエレインだ。

 亜人を仲間にするには正式な手続きを踏んで部隊に入ることが条件になる。

 俺の家に居候するために部隊に入ったとはいえ、こいつは家の手伝いはしないし本読んでばっかだし、まったく役にたたない。完全なヒモ生活をエンジョイしていた。



 なんで妖精なんかいるんだよって?ごもっともなご指摘どうもありがとう。

 まず、妖精について話すまえにモンスターについてと、十年前の大災害によってもたらされた俺たちの体の変化について説明させてもらいたい。



 十年前、突如開いた異世界とこっちの世界をつなぐ穴、モンスターベントから出てきたモンスター達は現在、東京都内を障壁と呼ばれる、最新技術によって覆うことによって隔離されている。

 障壁は触れられない限り無色透明だが、ふれると反重力がはたらいて、おもいっきり投げ飛ばされる。

 だから今のところ障壁が唯一モンスターの進行を止められる手段になっている。

 エレインも亜人種ではあるがモンスターの部類に入る。

 エレインが言うにはあっちの世界にもいろんな種族がいて、人間族、亜人族、魔神族、女神族とかと、とにかく数え上げたらキリがないほどいるらしい。

 ただ、エレインみたいな亜人種のモンスターは基本的に人間を襲うことはないから俺みたいに使い魔や相棒として共生生活を送っている人たちも少なくない。



 そして次は俺たちの体について。

 モンスターの出現によってミュッテートウイルスという現状解析不可のウイルスが日本中にまき散らされた。

 ミュッテートウイルスは俺たち人類にしか影響しないらしい。

 ミュッテートウイルスに感染した人間は名前どおり突然変異する事になったわけだ。

 感染すると身体能力が強化される。

 それだけでもスゴいと思うが。

 さらには感染した人間には個人差はあるがもれなくアダム細胞というスペシャル特典までついてくる。

 このアダム細胞というのは、たとえるなら水を入れる皮袋のような働きをする。

 非現実的なことではあるけど、この場合の水っていうのは魔力だ。

 高名な科学者さんたちがあらゆる手をつくして解析を試みても結果はunknown、解析不能だった。

 皮袋の大きさは人それぞれ十人十色でバラバラだ。

 皮袋の許容量が多い人にはさらに別の特典までついてくる。

 魔力といったらだいたい察しはつくだろうけど、魔法だ。

 皮袋の大きさがあれば、当然皮袋の形、放出できる量もある。


「あっ、碧だ!」

 エレインが必死に大通りを駆け抜けている碧先輩を指さす。

 ヤバい。先輩に校則違反してるのバレたら絶対殺される。比喩抜きで。

 思い出されるはあの13日金曜日。


 その日、俺は今みたいに遅刻によるペナルティを免れるため民家を足場に学校を目指していた。

 勝った!とばかりに校門一歩手前に飛び降りたんだ。

 しかし口元をほころばせ立ち上がった俺の目の前に立ちはだかる胸のおっきなお姉さん。

 お姉さんの顔は般若のごとくゆがみまくり、無言でいる俺に振り落とされる仁王の怒りの鉄槌。

 鉄槌まだよかったかもしれない。ママンに幼い頃から食らってきたから。

 でもね、ぼくまだビンタってのは食らったことなかったのね。

 いたかったなー。

 あれって、やられたとき一瞬世界がゆがんで見えるんだね。マンガ特有の過剰表現だと思ってたけど、本当に膝がガクガクになったよ。

 ジェイソンの噂はマジです。犯人はいま大通りを駆け抜けているあの女です。間違いありません。ついでに校門で遅刻した生徒を竹刀で殴ろうとしてるあの教師もグルです。


 学校までもう少し距離があるが、トラウマを繰り返さないよう俺は、路地裏に飛び込み、音もなく着地させた。



 うーーん。幻覚かな?下を向いてるぼくの視界には小さめのローファーが一対。

 右からエレインがあわわわって言ってるのが聞こえる。

 違うよね?だって、さっき交差点を右に曲がってたじゃん。瞬間移動とか本当に笑えませんよ?

 俺は着地した体勢のまま一ミリも動かずその場に硬直する。

「てーんま」

はーい。

 ひきつった顔で上を向く。

 物静かな路地裏に小気味のいい音が響きわたった。


 「なんで、碧先輩って校則破っただけなのにあんな怒るんだろねー」

 言いながらハタかれた右の頬をさする。

 まだジンジンする。

 せめて、せめてビンタはやめてほしかった。

 腹パンくらいで手を打ってほしかった。

「まあ、碧はマジメさんだから仕方ないよ。天満は叩かれたあと、無心に碧のおっぱい凝視してたんだからそれでチャラじゃんっ」

 言いながら俺の頭を思いっきり蹴りつけてくるエレイン。

 違うんだ。弁解させてほしい。あれは故意にやったのではなく意識を手放さないように耐えてたらだんだん中腰になっていって、たまたま、ほんとうに、たまたま目の前に絶対量域があったのだ。

 ミテナイヨ。ボクハナニモミテイナイ。

 弁解の余地なく人生三度目のビンタは放たれた。

 「まあ、そのことは置いといて。今日の訓練って実習だよな。一応聞いとくけどお前はどうする?行くか?」

「しょ、しょうがないわね。ホンとは行きたくないんだけど暇だから付き合って上げる。べ、別にて、天満と一緒にいたいわけじゃないんだからね」

「はいはい、エセツンデレはいいから。安っぽいんだよ。百均の水鉄砲なみに安っぽいよ。あと、お前はどこでそういうネタを仕入れてきてんの」

「パソコンに天満が大好きなラノベのツンデレヒロインの画像がいっぱいあったからツンデレが好きなのかなって思った」

 ケロってした顔でなにいってんだこいつは。

 嘘だろ?

 こいつ俺のパソコンのパスワード知ってるの?万が一に備えて30桁のパスワードなのに。待て、落ち着け俺!パソコンのパスワード解除されててしかも画像を見てるだと?

 てことは、俺の秘蔵データも?

 脂汗が浮かび上がっている俺の横顔を二ヤッとした顔で見てくるエレインは

「今晩は、焼き肉がいいなぁ」

 んー、と伸びをしながらちらちらこっちを見ながら言う。

 もちろん答えは決まっている。というか、ほかに選択肢はない。

「好きなだけ食っていいぞ」

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