撮り、残し
少年はいつもカメラを持っていた
道に咲いた花を撮り
垣根を渡る猫を撮る
空に浮かぶ雲を撮り
西へと沈む陽を撮った
クラスメイトの笑顔を撮る
楽しそうな集合写真を撮る
ファインダーを覗きこみ
その向こう側に広がっている
ほんの一瞬の世界を
切り取り 残す
少年は言う
「記憶は忘れ 消え去るけれど
記録は残せる」
時が経ち
花が残り 猫が残り
雲が残り 陽が残る
クラスメイトの笑顔が残る
気づけば少年はどこにもいなくなっていた
少年だけが残らなかった