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幕間四 『終わりの始まり』
カチッ。
夜中にどうしても時計の音が気になる時がある。
音を聞く器官というのは当然耳だが、それを処理しているのはこれまた当然、脳だ。
脳は普段雑音をシャットアウトしている。聞こえていても、聞いてはいないという状態だ。昼間は時計の音を聞いていないため、気になることはない。
しかし、脳というのは一度意識してしまえばその雑音をシャットアウトすることが出来ない。前提として音は常に耳までは入っているのだから、意識するという脳の働きが加わってしまえば、もう無視が不可能となってしまうのだ。
「……ん」
しかし、フィーコ・アトライトが夜中に目を覚ましたのは、そういった小手先の科学が理由ではなく。
何かもっと違った原因があるように見えた。
「……ま、いっか。明日も早いし」
フィーコはその、何の変哲も無いカチッという音を出した原因である懐中時計を一瞥し、再び目を閉じる。
そう、明日も早いのだから……。




