魔法使いと友人
「マドカ!ねえ聞いてる!?アイツったらひどいんだから!もう別れてやる!!」
「はいはい。あのねアンナ、もうそれ今月に入って3回目・・・」
「回数じゃないの、あたし毎回本気だもの!!」
カウンターに身を乗り出して顔を近づけてくるのはアンナ。私の店の近くのレストランの看板娘であり、私がこの世界で初めて出来た友人である。きれいなウェーブのかかった金髪に空色の瞳を持つ彼女は、看板娘の名に恥じない容姿を持ち性格も明るく付き合いやすい性格なのだけれど、1つだけどうしても残念な部分があった。
「この前デートで行ったケーキ屋のウェイトレスを口説いてたのよ!?あたしにばれたらまずいって友達まで使って隠して!もう・・・あんな男だなんて思わなかった!」
男を見る目が徹底的に無いのである。
そりゃ私だって決して恋愛経験が豊富というわけでもないのでアンナにはっきりとは言わないが、アンナの男を見る目の無さは結構昔からのようでレストランのおばさん、つまりアンナのお母さんがため息をつきながらいっそお見合いでもさせるかとか何とか言っていたのをうっかり聞いてしまったりする。
「だからねマドカ、あたしにこう、ばーん!どーん!って感じの魔法を貸して!」
「・・・ちなみに魔法を封じ込める対象は?」
「あたしの拳よ」
「却下。お引取りください」
ナイフとかだったら困ると思って一応聞いてみれば、そのきれいな顔して拳ときたものだ。ムリムリ、却下だ却下。第一、拳に攻撃する魔法を貸し出してアンナが彼氏を殴ったりしたら大怪我は確実。殴るのをわかってて貸した私が捕まってしまう。いくら友人のためとはいえ、犯罪の片棒を担ぐつもりは無いのです。
「マドカ冷たい・・・」
「何とでも。・・・そんな顔しないでよ。振られる前に振ってきたら?そしたら愚痴くらいだったら聞くよ、作業しながらだけど」
「うぅ・・・本当に作業再開しちゃったし。わかった、約束だからね!」
「はいはい、いってらっしゃい」
まるで嵐のようにやってくるアンナは帰るときもやっぱり嵐のようだった。仕方ないが、長い愚痴のためにお茶とお菓子、泣きすぎて真っ赤になるだろう目を冷やすタオルくらいは準備しておいてあげよう。




