魔法使いと日常
まさか騎士様がそんなことを考えているなんて私が知るわけもなく、私はアスカムさんが帰った後淡々と仕事をこなしていた。時は金なり。この言葉を考えた昔の人は本当に偉大だと思う。
「この契約は明日までで・・・、水属性の魔石もう少し増やしたほうがいいかもなあ。在庫少なくなってきたし・・・」
私の営む魔法レンタル店は、基本的に城下の人たちをターゲットにした簡単な魔法・・・例えば食料を保存するために氷をだすものだったり、夜道を照らす街灯が壊れた時に直るまでの代用として火を灯すものだとか。たまに用心棒や冒険者たちが身を守るために攻撃を目的とした魔法を貸し出しすることはあるけれど滅多にあるものでもないし。だからさっきのアスカムさんに貸し出しした魔法は、ほぼアスカムさんにしか貸したことがなかったりする。
「国境に行くって言ってたっけ・・・。あそこ結構いい鉱物出るんだよねえ・・・1回行ってみたいな」
魔法のレンタルの仕方は2つ。
1つは、石に魔法を封じ込めて魔石を作成してそれを貸し出すもの。これは契約が終了した時点で魔石はただの石になってしまうので結構消費が多い。大体のお客さんがこの方法で契約していく。
2つ目はお客様の持参した物に魔法を封じ込めるもの。さっきのアスカムさんの剣に行ったものがこれにあたる。魔石を作る手間がないので私としてはこっちの方が楽だ。
どちらか貸し出し方法を決めて、あとは契約書(これにはあらかじめ追跡やら期間が終われば魔法が自動消去するための術式やらなにやらが編み込んである)にサインをしてもらって手続きは終了。最近は髪の毛や血液とかも貰うことにしたけれど、使う機会がないことを祈るのみだ。色々面倒くさいし。料金は貸し出し期間と魔法の質によって変わり、前払い。繁盛とまでは言わないけれど、固定客もいるし十分やっていけていると思う。思うのだけれど。
「こうやって契約書の整理とかしか普段やることないから腕前落ちそうだけど、アスカムさんが結構来るから助かるなあ。それにしてもあの人本当几帳面な字書くよね。・・・なんかこの世界来てから独り言多くなった気がする・・・。あっちにいた時は実家だったから誰か必ずいたし・・・1人暮らしすると独り言が増えるって本当だったんだ」
確認したくなかった事実に少し落ち込みながらも現在進行中の契約書と終了した契約書を仕分けしていく。こういう何も考えなくてもいい作業をしていると、うっかり夜になってたりして店に寝泊りすることが多くなってしまい、ご近所さんやどこから聞きつけたのかキールさんやアスカムさんに怒られる事態が最近多くなってしまっている。もういっそあの部屋引き払おうかな・・・こっち一軒家だから生活できるし。
なんてことをつらつら考えながら作業していると。
「マドカ!!!あたしに魔法貸して頂戴、なんかすごいヤツ!!」
・・・げ。きた。




