騎士と憂鬱
(どうしたものか・・・)
ユーファリア王国騎士団団長クロード・アスカムは悩んでいた。
サラサラとした茶色の髪にそれよりも少し濃い瞳の色はこの国でも普通の色の組み合わせだが、きりっとした整った彼の容姿に非常に合っていた。しかし普段から決して良いとは言えない眼つきを更に険しくして、彼は悩んでいた。その姿は彼を心酔する騎士団や彼に思いを寄せるご令嬢達からすれば、これからの国の行く末を憂いている将来有望な騎士様に映っているのだろう。実際、任務のために率いてきた自身の部下はそんな思いを隠そうともせずにキラキラとした瞳を彼に向けている。
(花はこの前贈ったし・・・菓子は、今渡してきたばかりだしな。装飾品・・・いやいや流石に怪しまれるだろう。俺としては毎日でも贈りたいところだが程々にしろとキールに言われているし。というか彼女は一体何が好きなんだ?わからん。)
王国騎士であるクロードと王国唯一の異世界人であるマドカとの付き合いは召喚したキールの次くらいに長い。しかし、基本的に何事にも面倒くさがりで無関心なマドカと、整った容姿だが無口で決して愛想が良いとは言えないクロードではなかなか会話が成立しない。先ほどのように会話できるようになるまでに5年かかっている。
(そうだ!国境付近の町は採掘が主な産業だし、魔術に使えそうな鉱物でも持っていこう。それなら彼女も怪しまずに受け取ってくれるに違いない。プレゼントの品が加工していない鉱物とは味気ないが、この際いいだろう。魔法使いである彼女なら喜んでくれるに違いない)
無関心。
面倒くさがり。
基本的に無表情。
そんな彼女が稀に自分に向けてくれる笑顔にどうしていいのか分からなくなる。クロードだって恋なんてものはいくつもしたが、今回のような気持ちになるのはマドカが初めてで初恋した若者のような態度になってしまうのだった。そうでなければ、わざわざ王宮の魔法使いで事足りる事を彼女の所に頼みに行ったりなんてしない。
「よし、少し急ぐぞ」
「はっ」
手綱を握り馬にまたがる姿はかっこいい事この上ないが、残念ながら彼の頭の中は意中の相手へのプレゼントでいっぱいだった。
(マドカ・・・)
クロード・アスカム。
王国随一と言われる剣の使い手は、現在年下の異世界人に片思い5年目であった。




