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魔法使いと騎士

『魔法が使えたらいいなあ』


誰でも一度は考えたことがあると思う。もちろん私もその1人だ。でも今私がいるこの世界には魔法が実際に存在し、私は魔法使いと呼ばれているのだから、人生というのは何が起こるかわからないものだ。異世界トリップも含めて。


「これから国境警備の様子を視察することになったのだが、なるべく早く現地に到着しておきたい。適した魔法があれば私に貸してもらいたい」


「そうですね・・・。それでは、風を味方につけるための魔法と道に迷わないように星詠みの魔法でいかがでしょう?期間は今から、アスカムさんが任務を終えて王都へ入るまで。王都に入ればレンタルは終了し、自動的に使用できなくなりますので。宿す媒体は、いつものようにそちらの剣でよろしいですか?」


「ああ、頼む」


この世界には、確かに魔法は存在する。

しかし、誰にでも使えるという訳では決してない。魔法を使うことが出来るのは、この世界を巡り回っている魔力を汲み取ることが出来る人間だけ。そしてそれは学べば可能というわけではなく、血統でもなく、生まれ持った資質である。だからどこの国でも魔法というものは貴重で、魔法使いという職業はそれだけで優遇される。そのため、魔法使いの中でも魔力を汲み上げる、吸収することに長けた異世界人はこの国ではとても重宝されていた。


「それでは剣と、こちらの契約書にサインを。あ、あと髪の毛または血液の提出をお願いします」


「契約内容が変わったのか?以前は髪の毛など差し出すことはなかったろう」


「それがですね、この前魔法を持ち逃げしようとしたお客様がいまして・・・。万が一のために、お客様方に追跡の魔法をかけることにしたんです。お客様の身体の一部を媒体として。契約を破った場合、追いかけることが出来るように」


「それで、その持ち逃げしようとした奴は・・・」


「もちろん、追跡して・・・少しだけおしおきを。いやあ、魔法って便利ですよね。遠隔操作で雷落とせるなんて」


「・・・・・・」


この商売を始めて3年。

いろいろと至らない所も出てくるけれど、一応軌道に乗ってきたし随時改善していくということで。


「はい、サインと・・・髪の毛ですね。ありがとうございます。それでは、アスカムさんの剣に風と、星詠みの魔法をお貸ししていますので。任務のご無事をお祈りしています」


「っああ・・・。では私はこれで。・・・ああ、これを。仕事が落ち着いたら食べるといい」


「え、いいんですか?いつもいつも貰ってばっかりで・・・ありがとうございます」


「いや・・・、私が好きでやっていることだ気にするな。それでは」



チリン、とベルが鳴りドアが閉まる。アスカムさんはこのお店の一番のお得意様だが、彼は少し変わっていると思う。


「騎士なんだから王宮の魔法使いに頼めばタダなのに・・・」


そして必ず手土産を持ってくる。

結構な頻度でお店に来るので、手土産代も結構バカに出来ない額だと思ってしまうのは私の根っこの部分が一般庶民だからなのだろうか。


「ま、いっか」


今日も魔法レンタル店、開店です。


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