魔法使いと魔法使い
この現象は、世に言う異世界トリップいうものなのだろうか。それにしては、私はトラックに轢かれるわけでもなく、穴に落ちたりしているわけじゃない。何の変哲もなく日常を過ごし、いつものように、漫画の新作が出た事に気づいて本屋に行く準備をして、瞬きをした。次の瞬間にはこの世界だった。
ユーファリア王国。
穏やかな気候と豊富な資源のある豊かな国。私はこの国の王宮魔法使いを名乗る男の人に召喚されたらしい。ユーファリアは何十年かに一度、異世界から人間を召喚することになっているのだという。その理由は、簡単に言えば人柱。といっても、殺されたり生贄になったりするわけではなくただこの世界で生きていればいいという単純なもの。なんでも、この王国は世界を巡っている魔力の終着地点であるため他の国の何倍も魔力の密度が濃いらしい。だからこその豊かな国であるのだが、消費する魔力よりも蓄積していく魔力のほうが多いため、何かの拍子に余剰分の魔力が暴走してしまう可能性が他の国よりも非常に高い。この状態を解消するのが、私や先代のトリップ経験者。つまり異世界人である。召喚の際に世界を渡るため、普通の人間よりも魔力に近い存在になるらしい私たち異世界人は、この国の不要な魔力を定期的に吸収するという役目がある。混乱を避けるためにこの役目を担うのは、つまり異世界人はこの国に常に1人だけ。私は先代の異世界人が亡くなったため、新たな異世界人を召喚する必要があり、ここに召喚されたのだという。
「貴女の世界にとっては身勝手極まりないでしょうが、どうかご容赦願いたい」
「はあ・・・。あの、1つ質問が」
「私に答えられる事でしたら何なりと」
「・・・衣食住の保障は」
「もちろんこちらで手配いたしますとも!歴代の異世界の皆様にも、急に召喚してしまっているので不自由のないようにこちらで衣食住やこちらの世界での戸籍等用意は整えております」
「わかりました。・・・まあ、仕方ないですよね、来ちゃったし」
「なんというか・・・。歴代の異世界人の方たちよりも落ち着いてらっしゃいますね」
「そうですか?」
まあ、驚いたかといって元の世界に戻れるわけでもないし。それなら早くこの状況を受け入れたほうが得だ。待遇は悪くないようだし。
「とりあえず、長いお付き合いになると思いますのでよろしくお願いいたします。私、ユーファリア王国王宮付き魔法使い筆頭キール・ルべリアと申します」
「マドカ・カツラです。よろしくお願いします、キールさん」
これが5年前。
私がこの世界にいなくてはいけない理由と、現在身元引受人であるキールさんとの出会いだった。




