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短編No1  

掲載日:2010/10/25

 光のない空間があった。それは壁面いっぱい柔らかいなにがしかで覆われた、湿り気の多い、生臭い空間だった。人肉、何日も放置したジャム、発酵しつくしたチーズ。ねちょねちょという擬音がこれ以上ないほど似合う粘性の高い液体で満ちている。

 その中にいる貴方は、全身の皮膚でおぞましく生ぬるい柔らかさを感じている。

 貴方はこれから生と死の境界を探しに深く潜らなくてはいけない。今、貴方は世界の底にいて、「ここ」こそが奈落だと思っている。それは大多数の人間に当てはまる事実ではあるが、生と死の境界を探し求める貴方にとっては欺瞞に過ぎない。貴方はもっと深く、柔らかく絞め殺そうとする肉の奥深くに潜っていかねばならない。貴方は肉を掻いて重力の方向に押し進んだ。

 瞼にぬめる肉の滑らかさが触れて貴方はここに光がないことを思い出す。瞳を開ける必要にかられるのはもっと先だ。

 貴方の世界はひどく暗く狭くそして希望のないものだった。だからこそ貴方は生と死の境界を探しに地獄の果てを目指している。地の底、これ以上ないほど深いところへ向けて。

 貴方はまるでダイビングをするかのように頭を奈落の方へ向けて泳ぐように落ちている。体中にまとわりつく肉のほだしを振り切りながら。

 ぬめりが貴方の性欲を刺激する。湿った肉に囲まれて、貴方は秘部を擦り下ろされるようにして降りているのだ。性感帯を刺激されて貴方は快楽に流されそうになる。しかし、済んでのところで踏みとどまり、理性を取り戻すと貴方はまた奈落深淵を見据えて潜りだすのだった。

 柔らかすぎた肉に芯が入り始めた。貴方の周りにある肉の触手、肉壁はすべてハリを持ち始め、貴方の沈降を阻止しようとしはじめた。押した分と同じ力で押し返してくる柔らかい肉の壁に阻まれて、これまで以上の力で掻きわける貴方の体力はますます削られていく。それでも貴方は沈み続けることができている。

 そして、ついに、貴方はどうにもならないところまできた。いくら手でどけようとしても固く閉まった肉の門は貴方の行く末を塞ぎ、それどころか来た道すら見失い(あなたに視覚はない。よってこれは比喩である)、貴方は肉に囲まれて身動きすらできなくなってしまった。

 生ぬるいと思っていた肉のぬくもりも、激しい運動の後では暑苦しくすら感じられうっとおしいくらいだ。

 肉に締め付けられながら貴方は感じた。生と死の境界とは。

 貴方の周りの肉が蠕動(ぜんどう)し始めた。貴方はさらに深みへと導かれ、そして瞼に光を感じた。

 上を見上げるとそこには女陰があった。

しょっぱなから二人称という暴挙に出てみました。

これ以上手を加えられないというところまで書きなおしてみたのですが、まだまだ至らぬところがあると思います。どうぞご指導ご鞭撻のほどをお願いたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ???と思ったけど、読みなおして納得。短さが良いと思います。 [気になる点] で?という感じがしてしまいました。 [一言] 生を受けるって、リアルに描くと崇高なものではなくなってしまいます…
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