聞かざる私は着飾らない
○○ざる✕✕は○○らない。(しない。)的なタイトルをつけてみたかった。
婚約破棄物です。
あと、○○ざる。は○○するのかしないのか。
「地味なお前とは婚約破棄するっ!俺には綺羅びやかなピナティーアが相応しいっ!!」
見知らぬ、否、最近のお相手であるピナティーア・バズーレ男爵令嬢の腰に手を当て、婚約破棄を宣った馬鹿令息は私の婚約者、あ、元婚約者になったナルシーダ・ザール伯爵令息です。
馬鹿だ馬鹿だと思ってましたが、本当にお馬鹿さんでしたね。
そして此処はとある侯爵家が主宰する夜会です。
私、ナリア・ガルシア子爵家、いえ、私の顧客の令嬢のお披露目を兼ねた夜会なのです。
彼の行動は不敬ではないでしょうか。
私はゆったりと微笑むと、「了解しましたわ」と短く返事をして踵を返し、侯爵家の方々を探します。
馬鹿の言う事は聞いていられません。
場を騒がせた事を当事者として侯爵家の方々に謝罪しなければ。
侯爵家の夜会が馬鹿の余興で汚される事などあってはならないというのに。
そんな事を分かろうとしない馬鹿が後ろで騒いでいるが、気にする事なく私は主宰者の方をお探しする。
既に価値のないノーバリューに割く時間などない。
が、ナルシーダが私の腕を掴み激怒してきた。
「先にピナに謝れっていってんだよっ!!ピナはお前の店で暴力を振るわれた挙句、出禁にされたというじゃないかっ!!なんでそんな酷いことが出来るんだ!?」
「それは彼女が私の顧客にお渡しするフルオーダー品を盗もうとしたからですわ!
それに、一応穏便に解決したつもりです。
暴力については、顧客の令嬢が自分のドレスを守る為の無礼討ちです。
折角のオーダードレスが他人の手垢で汚されようとしていたのですから、当然でしてよ?」
「それの何処が穏便だ!ピナの可愛い顔を打つなんて酷い令嬢もいたもんだな!!
ピナはお前のとこのドレスを着るのを楽しみにしてたんだぞ!?
いいからピナに謝れよ、おいっ!!」
ぐいっと腕を更に引っ張るナルシーダ。
その彼の頬を、現れた侯爵令嬢が扇で引っ叩く。
「うちの夜会で何してますの?
無礼者風情が。
それに、私が私のドレスを守る事の何が悪いのかしら?
無礼な令嬢が私のドレスを汚そうとしたの。
今日の為のドレスなのよ?
それをベタベタ触ろうとするほうが悪いのではなくて?
それに店で無断無銭で、ドレスを盗もうとする女を無礼討ちするのはそんなに悪い事かしら?
ドロボウですのに。」
「なので彼女が無礼討ちで済ませましたので、私も店の出禁のみで済ませたのですわ。
本来ならその場で憲兵に突き出し、バズーレ男爵家に侯爵家と子爵家から抗議の通達がされ、大事になるハズでしたのよ。
内密にした積もりです。」
不服に思ったのか、ピナが私の前に出てくる。
「でも!あんたがナル様の奥さんになるんでしょ?
だったら、あんたの物はナル様の物じゃない!
私はナル様の最愛なの!
全部、私のものになるものを先に貰って何が悪いのよ!!
それをドロボウ扱いするなんて酷いっ!!」
ナニイッテンダロ、コイツ……
頭痛い。
何なら捕まれた腕も痛い。
打たれたうちに放された腕を擦りつつ、ナルシーダに苦言を告げる。
「貴方、彼女に伝えてませんの?貴方が当家に婿入りする事を。
それとも子爵家の爵位簒奪をお望みでしたか!?
私は愛人を伴ってくるような婿はいりませんし、婚約破棄したとしても、不貞を働いてる貴方の有責です。
それに私の店は私個人の所有物であって、何があっても、貴方の物にはなり得ないというのに。
つまり、彼女の物になり得ないのですけども。」
「だっ、だがお前は地味で陰気で、嫁の貰い手が無いはずだ!!
だから俺が貰ってやろうと優しくしてやったというのに!
両親には媚を売るのに、最近俺にプレゼント1つないではないか!!」
ぷっちーん。
はい、キレました。
やらかしましたねコイツ。
私は深く息を吐き出し、顔を上げた。
「確かに私は地味です。
髪色は焦げ茶で、瞳も灰色で落ち着きすぎですし、それは私も理解出来ていますわ。
けれども、私は私で輝かなくても良いと思った。
だから私は衣装店で、ほかの方を輝かせる事を選んだの。
彼らの、彼女らの煌めきが私の誇りになるの。
その為の努力を重ねてきたわ。」
「だから貴方との婚約は此方からも破棄で構わないわ。
確かに私は地味よね、でも、それは貴方が私に自分の価値観を押し付けてるだけじゃない。
都合のいいマネキンに文句を言われても困るわ。
でも、此方も一緒ね。
私にとって貴方はマネキンでしかなかったのだから。
そうそう、貴方の両親に媚、だったかしら?
彼らが正しいマネキンとして華やかで、品性高潔であったからこそ、私も彼らに衣装を提供出来たの。
益があったから。
確かに以前は貴方も華やかで洗練された美しさがあったわ。
でも貴方は蝶々に好かれ始めてから、どんどん品位を落としていったわ。
これ以上壊れたマネキンはいらないから、もうこの婚約は終わりね。
残念ね、貴方の両親は素敵な方々でしたのに。」
私は地味だ。
だけども、私は道を選んで生きてきた。
私の店は私の店だし、そのノウハウもデザインも私の頭の中にある。
誰彼に奪えるものではない。
私の賢しらな、強かさも。
醜い私も。
気付けば静かになっていた。
やらかした自信はある。
人様の家で、喧嘩を始めてしまったのだから。
ナルシーダは自分がただの広告塔であった事に項垂れていた。
ピナはその傍らで、幸せなお嫁さんになれない事実に心が追いつきそうもないのか、呆然としている。
いつしか彼らは静かに何処かへ運ばれていった。
私はただ静かに深々と、主催者である侯爵家の方々に頭を下げる。
「私の諍いに皆様を巻き込んでしまいすみませんでした。
大事な侯爵家の夜会を騒がせしまい申し訳ございません。
この度の事は、当家でなく私自身の責としてくださると有り難く存じます。」
「頭を上げてくださるかしら?
私はこれからも貴方の所でドレスを仕立てるつもりなのよ?
こんな事で倒れられては困るわ。
貴方は、私のドレスを守ってくれた。
私の想いを形にしてくれた。
私の心を守ってくれた。
貴方の所で作られたドレスは最高なのだもの。
これからも着たいわ。」
そのそばの婦人も声を掛けてくださった、
「うちの孫はとても内気で、自信のない子だったの。
でも、貴方の所のドレスを着て、あの子は変わったわ。
自信を持って、自分の好きな事や自分の意志を伝える事が出来るようになったの。
貴方のドレスは、令嬢を強くしてくれるのよ。
これからも是非お願いしたいわ。
勿論、私の分も欲しいわ、宜しくね。」
「確かに君は賢しらかも知れない。
だがクレバーな所がなければ自分の城を守りきるのは難しいのは、私でも分かる。
確かにザール家は君の衣装を体現するに相応しかったとも思う。
今日は色々あったが、娘も喜んでいる。
これからも懇意にしていただけると嬉しいよ。」
胸が詰まる。
この生き方が、この容姿が、ダメならダメでいい。
お互いに避けるなり自衛していくことは可能なのだ。
受け入れることも、拒否することも、自由なのだ。
その中で、彼らは、私を、私の仕事を、認めてくださった。
とても嬉しく、有り難く、得難い。
私は再び頭を下げる。
今日の事で、数人は私の元を去るだろう。
何処かで心無い事を囁くだろう。
私はただ今日の、日々の結果を玉石混交、清濁共々粛々と受け取るだけだ。
悪しき風評も、正しき評価も、自分の中で形を変える。
投げられた言葉も、受け取る側で変わっていく、変えられて伝わる。
自分が変えてしまう。
これからも賢しらな私は私のままだ。
だから玉に私は思う。
「自分に都合のいい私を見てるのかしら」と。
そうして自衛する。
婚約破棄痛み分け?
婚約者にプレゼント渡さなくったのは、彼の女性関係が緩くなったせいで、ブランドバリューが落ちたから。
(それでも主人公側も酷くはある。)
マネキン、はまぁ自衛の防御反応的なものです。
相手からの悪意をそのまま受け取るより、ちょっと離れた所から俯瞰して客観的に見ることで、第三者側として整理する感じというか。
それと、玉に自分自身に「頑張れ」といってみてます。
普通に「頑張るよ」と言えればいいのですが、自分の問いにもネガティブで返答してる時は、自分であれ他人であれ、相手の言葉を素直に受け止める事は難しいかと思います。(自分の不調を、相手のせいにしかねない時も?)
なので、マイナスな答えの時は、そこ(原因)から離れて休むようにしてます。
自衛です。
自衛大事。
皆様もご自愛下さい。




