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逢魔ヶ時の赤マント〜穢れし花の貴公子の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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4/5

第四幕

やあ、君。

逢魔ヶ時の太陽がきた。

血のように大地を染め上げる日光。

白き潔白の着物は、

やがて異界の色へと変貌する。

そうして怪異のごとき存在へ堕ちる。

繰り返し。

繰り返し。

赤い光に照らされて

ーー僕は”赤マント”だ。

本名なんて意味はないーー。


第三幕では、上野駅にいた女が財布をすられた。


上駅の前で、女はうろたえて叫んだ。

「ゼニがねぇと、オラァとまるとこねぇぞ」と言って、女は泣き出した。

背の高い身体を縮こませて震えていた。

女なんて別に放っておいても良かった。だけど、何か見捨てきれないものがあった。


「おい。君は頼る者がいないのだろう。」と僕は女に聞いた。そして、言葉を続けた。

「ここで田舎の人情なんてあてにするな。路地裏で客をとらされる目になるぞ。僕についてきたまえ。」と女に提案した。

だが、女は疑いの目を向けた。

「ゼニさ、貸してくれたら、必ず返しますぅ。どぉか、おねげえします」


僕は、しばらく女を見つめていた。

「ーー手持ちの金は、持ってない。」と言った。

父上からは、小遣いをもらえているが。大金を持ち歩かせてもらえなかったからだ。吉原への支払いはツケですませてあった。

女は恨みがましい目を僕に向けた。

無視した。

「どうするんだ?」と僕は女に聞いた。

「自分で決めろよ。」それから、僕は女を置いて離れようとした。

「旦那さま!おねげぇします!

見捨てないでください」と女から声をかけられた。


僕は女についてこいとは言った。

だが自分の屋敷に、連れて行く事はできない。

こんな女を屋敷に連れ込んだら、

僕は兄たちに殴られかねないからだ。

だから僕は、女を吉原の女将に預けることにした。どうせ人手は欲しいだろう。

なぜかって?

女が一人減ったのだから。

僕に感謝をするだろうさ。


再び黒い門へと、僕は向かった。

太陽が沈みゆく中で、

周りの赤は強まった。

「旦那さま。

その白い外衣、

始めから赤のように見えます。

オラァ、それ見ながら歩くのはこえぇ。」

女は僕の後をついてきながら文句を言ってきた。

「いずれ暗くなる。そうしたら、服の色なんぞ気にする事はないさ。

足元に気をつけろよ。」

僕らは、しばらく黙って歩いた。

女は時々、僕に質問をした。

「旦那さまーーこれから行く場所は、どこです?

どんなとこなんですか?」

「休める場所とキレイな着物をもらえる所だ。お前のような田舎から出てきた娘にとって、地上の楽園なのだろうな。」

「地上の楽園?」

浅草の夜のざわめきが大きくなった。

食べ物の匂いが店からただよい、

仕事終わりを楽しむ連中の甲高い笑いが聞こえた。

女は都会の夜に好奇心を刺激されたのか、またキョロキョロと見回していた。

「おい、はぐれるぞ。」と立ち止まり、女の裾を掴んでひいた。

触り心地のザラっとした感触がした。

「安心しろ。旦那さまの目立つ外衣から、オラァ、目を離さない。」

「ふん。夜の道を白い服を着た男についていく!まるでダンテの神曲だ。

お前の行く先は地獄かもしれんな。」と僕は独り言のように呟いた。


それから僕らの視界に、闇の中に巨大な黒塗りの門が見えてきた。

夜の地獄門だ。太陽の光の下では陳腐なモノも夜の力が加わると、別のものに見えた。

仲町通りの本道には、

提灯が祭りのように吊るされていた。

道の両側には楼閣が並んでいた。

そこから花魁たちが、

僕らを見つめていた。

騒がしい男たちが後ろから、追い越していった。

女たちの視線は僕らから離れていった。


こうして、吉原の夜によって幕をとじる。

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