表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と呼ばれる私、癒しの花を咲かせます  作者: しぃ太郎
第二章 優しい手、小さな息吹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/32

第21話 誇っていい



 翌日、エレナさんが大きな鞄を持って駆けつけてきた。

 きっと慌てて出てきたのだろう服装で、髪も纏めていなかった。


「うちの宿で、こんなトラブルを起こしてしまい、申し訳けありませんでした」


 宿の夫婦と、キアンの友人のアルが頭を下げていた。

 いたたまれなくなって、私も頭を下げる。


 原因は私が拐われそうになったからだ。

 キアンが気づいてくれたから、私はここにいられる。

 でも――。


「エレナさん……ごめんなさい。キアンが私のせいで」

「話は聞いてるよ」


 エレナさんは私の肩に手を置くと、アルのご両親に顔を向ける。その手は力強くて、温かかった。


「どうしようもなかったんだろう。キアンもルミアも無事だった。……私の責任もあるしね。通いやすくて、すぐに部屋を確保してくれる宿を手放したくないよ」


 そう言われた三人はさらに頭を下げた。

 エレナさんは、それを見て息をついたが、それ以上は何も言わなかった。


「じゃあ、ルミア。まずはキアンの部屋に行こうか」


 エレナさんの言葉に、私は黙って頷いた。

 振り返ると、アルが視線を落としている。


 ――友人が襲われたんだ。

 しかも自分の宿で。

 辛いのは当然かもしれない。


「……アル。あのね、キアンから話を聞いていたの。友達だって。原因は私でしょ?……自分を責めないで」


 申し訳なくて、両指を胸の前で絡ませる。

 彼の顔がくしゃりと歪んだ。


「こら、ルミア。あんたにはちゃんと話をしておく必要があるね。早くおいで」

「え、あ、エレナさん……!ちょっと待って」


 私は引きずられるように、階段を上がっていった。

 でも来てくれてよかった。

 キアンもきっと安心するだろうし。


 ――私も、エレナさんと一緒にいると、やっと息ができる気がする。


 ◇◇◇


 ベッドに横になっているキアン。

 包帯だらけで、痛々しい姿だ。

 それを一回、全部取って怪我の様子を確かめる。


 ひとしきりキアンの状態をみたエレナさんは、息を吐いた。


「良かった。聞いていたより重症じゃないよ。すぐに目を覚ます」


 キアンの額に乗せたタオルを替えながら、

 静かに荷物の中の薬を出すよう指示を出した。

 そして、私に対して真剣な声音で告げた。


「ルミア。あんたは被害者だ。その怒りは犯人に向けなさい」

「でも……!」


 その言葉に、身体が反射的に拒否をして強張ってしまう。

 口から出てくる言葉も、それを否定していた。


「……私のせいです。キアンはこんな怪我をしなくても良かった。本当ならこんなに酷い目に遭わなくても良かったんです」


 言い切った後。

 数秒の沈黙が落ちた。時計の秒針の音が耳につく。


「あんたがそう考えるのも無理ないけどね」


 エレナさんは、ことさら静かな口調で私の両腕を取った。


「キアンは誇っていい。女の子を守りきった男に贈る言葉はありがとうだけだよ」


 強い眼差しで見つめられる。

 キアンの前で、自分を責めるな――。

 そう言われた気がした。


「わかりました。キアンの目が覚めたら、最初にお礼を言います……」


 私が俯いて答えると、温かい腕に抱き込まれていた。

 張り詰めて、それでも耐えて、見ないように必死に目を逸らしていたものが、プツリと切れた。


「怖かったね。偉かった。ルミアは怖いなかでも、ずっと頑張った。そこは忘れちゃ駄目だよ」

「はい……。怖かったです……。力では敵わないし。キアンが痛いのも嫌だった……!」


 私はエレナさんの胸に縋り付いて大泣きしてしまい、そこで眠ってしまった。

 ようやく、あの長い夜が終わった――そんな気がしたのだった。


 ◇◇◇


「コラ、タヌキ寝入り息子。

 全部聞いてただろ。どうせあんたのことだから、守りきれなかったとか、無力だとか考えすぎてるんでしょ」




 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ