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魔女と呼ばれる私、癒しの花を咲かせます  作者: しぃ太郎
第二章 優しい手、小さな息吹

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第19話 絶対に離さない―夜中の侵入者―


 ――キアン視点――


 部屋の明かりを消して、並べられたベッドに二人で横になる。

 今日は疲れた。

 ただ、ルミアに笑ってほしくて街まで連れてきたのに……。

 テーブルに置いた水を一気飲みする。


 置いたコップから、水が垂れていく。


 昼間、言い返したかった言葉を頭をよぎる。

『守る』と口からでなかった。


 逃げたのか――その責任から逃げたのか?

 わからない。

 胸の中でぐるぐると苦いものが巡る。

 だが、簡単に口に出していい言葉とは思えなかった。


 俺が子どもなのはわかってる。

 世間知らず。その言葉も分かってるんだよ、畜生。


 隣を見ると、疲れたのかルミアが寝息を立てていた。

 規則正しく聞こえるその呼吸音に、ホッと息をつく。


 思ったよりも落ち込んでいなくて良かった。


 いや。最初からルミアは強かった。俺よりもずっと――。

 そんな事を考えながら目を閉じると、ガタリ、と音が鳴った。


 ――何だ?


 窓がいきなり開いた。


「……は?」


 ――ドカッ!


 抑えつけられて殴られる。

 頭が真っ白になった。


 床に倒れた。

 衝撃と痛み。

 床を転がり、板目が身体に傷をつけているようだ。


 さらに動けないように、上から伸し掛かられる。

 男?


 なんだこれ――。


「早く、そっちの少女を。悲鳴を上げさせるな」

「な……!」


 見れは、ルミアが抱きかかえられ、口を塞がれている。

 侵入者?

 男が三人、部屋に入り込んでいた。


 ルミアが今にも連れて行かれそうだった。

 無理やり上の人間を引き剥がした。


 そいつの足元に必死にしがみつく。

 何度も蹴られるが、それ以上に――。


『世の中、女の方が踏まれる――』


 ベイルの言葉が頭の中で木霊する。

 ここで離したら駄目だ。


 ――何があっても絶対に離さない。


 何度も衝撃を加えられた身体は、それでも耐えてくれた。

 頼むから。

 これ以上、この娘を気づけないでくれよ……!


「……キアン……!もういいから、やめて……」


 首を必死に振って、ルミアが声を出す。

 違う。

 違うんだ。


 やめたくない。

 ルミアはすぐに諦めるから。

 絶対に離すものか。


 俺は必死に声を上げた。


「誰か、誰か来てくれ!頼む……!」


 それしか出来ない。格好良くルミアを助けることも出来ない。

 床に、ポタポタと流れる、血や涙。


 意識が朦朧としてきても必死にしがみついた。

 遠くでルミアが泣いている気がする。


 騒ぎを聞きつけて駆けつけたのか。

 人の気配が辺りを埋め尽くす。


 アルの声もする。


「キアン……!ちくしょう、うちの宿でこんな事が!」


 鎧を着込んだ人物も確認できた。

 次々と侵入者を捕まえていく。


 治安隊が来てくれたのか……。



 ルミアは、毛布を掛けられていた。

 一番怖かったのは自分だろうに。

 その瞳は真っすぐに俺に向けられていた。


(良かった)


 そのまま、彼女は俺に駆け寄ってきた。

 未だに冷たいルミアの指先。

 それを温めてあげたかったけれど。


 ルミアは無事だった。

 守りきれて良かった。

 ベイルの言ったとおりにならなくて……。

 本当に良かった。


 声を出そうとすると、口の中に鉄の味が広がった。

 それでも、無理やり喋ろうとすると、咳き込みながら辺りを血で汚してしまった。


 ベッドに横にされ、医者に診察される。

 ――ルミアの、あの表情が忘れられない。

 まるで、すべての不幸でも背負っているような……。


 一言だけでも伝えたかった。

 安心させてあげて。

 少しでも笑顔になってもらいたかった。


(違う。絶対にお前のせいじゃない……)


 しかし。


 俺の意識はそこで途切れてしまった。








 

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