〈6話〉掃除は盛大に
プール掃除ほど、楽で面倒な授業はない。
「もうすぐプールかー」
「やりたくなくても強制的にやらさらるプールの授業をするために、生徒自らの手で洗わせるなんてスパルタだなこの学校」
「まぁそういうな」
「そねこはプール好きなの?」
「私は好きかなー。座学と比べて楽だし、運動好きだし」
「最後の流れるプールだけやってたい」
「子供か」
「なゆた運動得意そうなのに、なんか意外かも」
「私天パ(天然パーマ)なんだよ。プール入ると髪が爆発するんだよね」
「なゆた髪長いし、そんなに目立たなそうだけど」
じとっとした目でこちらを見てきた。
「まぁ色々あるんだ」
「色々あるのか」
それ以上踏み込むことをやめた。
そんな会話もそこそこに、掃除が始まった。
陽キャは楽しそうにプールに突入。水遊び大会になる未来が見えるーー
残された私となゆたの担当は、トイレ掃除。
(まあ、なゆたと一緒なら気楽か)
個室は先生の死角。自由度が広がる場所だ。
そこで思い出した。
(なゆたって節水にこだわってたよね?てことは……)
水を丁寧に無駄なく出しながら、ちまちま掃除する姿を想像した……
(まあ時間あるし、ゆっくりやるか)
と思った矢先。
ーードバーーーッ!!
(何事!?)
ホース全開で水をぶちまけるなゆたの姿。
「なゆた!?」
「どったの?」
「い、いや。節水してたから意外だなと…」
「バカだなー」
「ば…、」
「掃除でチマチマしてたら落ちるもんも落ちないでしょ。それこそ本末転倒だよ」
やれやれといったポーズで首を振る。
「水を沢山使った方が、勢いそのまま広範囲の掃除ができるし、洗剤を使えば、泡が汚れを絡めとって一石二鳥だよ。洗浄効果も上がるってわけ、わかったかね?そねこくん」
何故か博士口調になるなゆた。今日は良くしたが回る。悔しくも、ぐうの音も出ない。
「ぐぬぬ…恐れ入りました」
「よろし」
エッヘンと小さい背をのばし胸を張る。
「なゆたって、意外と考えてるんだね」
「地球を愛してるからね」
「どゆこと?」