〈5話〉エビフライとレモン
アスファルトから湧き上がる熱気にあてられ、汗だくになっていた。
「ああ、夏期講習しんどかった…」
「地獄」
なゆたは今にも溶けそうで、喋るのがやっとだ。
「あぢーー……」
「ファミレス行く?」
「いこう」
快適な空間を求め、入店した。
「「涼しい〜…!」」
店外との温度差に、冷えた風が吹く。
「何食べよー」
「肉食べたい」
なゆたの目は肉一色だ。
「私は、冒険したい気持ちもあるけど……やっぱり唐揚げ定食にしようかな」
「結局安定の美味しさ求めちゃう気持ち、わかるよ」
「わかってくれる?量もあって、味噌汁と漬物付き……圧倒的満足感が好きなんだよね」
「わかる」
なんだかんだ気が合う。
「そういえば、こめこちゃんは?」
「こめこは部活だってさ」
「夏期講習の後に部活……ご苦労さま」
(その手はご愁傷さまじゃないか?)
なゆたは両手を合わせて拝むポーズを取っていた。
「ああ、お腹いっぱい」
「もう食べれない」
「もう少しゆっくりしたいなー、デザートでも食べよ。なゆたは?あ……お腹いっぱいか」
「ふふ、デザートは別腹」
「だよねー」
仲良くデザートページを見る。
その時、なゆたのお皿に残ってるものを見つけた。
「しっぽ……食べないの?」
「うん食べない」
「もったいなくない?」
「昔は食べてたんだけどね、最近は食べなくなった」
「なんで?」
「聞いたら後悔するよ」
「そんな残酷なこと?」
「(ううん)食事中だから」
「今食べてないし、いいよ」
「テレビで見たんだよ。エビのしっぽ……はGと同じ成分だって!それから食べれなくなった…」
「なんだそりゃ」
「成分が一緒なだけでGじゃないでしょ?何言ってんだこの子。みたいな顔しないで」
「よくわかったね」
「…許して欲しい」
弱気ななゆたは珍しい。
「食べていい?」
「いいよ」
私は、エビフライのしっぽを食べた。
「このパリパリがいいんだよね」
「そのパリパリが、ゴ…」
「今食べてるから」
Gの姿が頭に浮かんんだのをなゆたのせいにし、冷ややかな視線を送った。
「私もなんかあげるよ」
「じゃあそれ頂戴」
指さしたのは、唐揚げ定食に添えられたレモンだった。
「えっ、うん……いいけど」
皿に乗っているレモンを箸でつかみ、そのまま口に運んだ。
(えっ!そのまま食べるの……!?)
皮ごと口の中に消える
「ありがとう」
「皮返されても……」
なゆたは満足そうだ。
二人は、きれいに完食した。
「レモン食べる人初めて見たかも」
「あんまりいないよね。お陰でオードブルのレモン独り占めできる」
「よかったね(?)」