〈4話〉それはさすがに…
ーーギュー……
教室にお腹の音が響いた。
「お腹空いたーー!」
恥ずかしさを消すように、私は声を張る。
「そねこっていつも飴持ち歩いてるの?」
「うん、小腹がすいた時用。いる?」
「(うんうん)」
相変わらず嬉しそうに食べるなゆた。
「これ、固っ……あっ!」
飴が勢いよく飛び出す。
「そねこって、袋開けるの苦手なの?」
「え、開けるの苦手とかあるのかな?」
「うーん」
地面に落ちた飴を拾うと、中からガムが出てきた。
「もったいない…」
私は洗い場に向かう。
その後ろを、ゆたはそろそろ付いてくる。
「まって、そねこ。食べるの?」
「うん、洗えば大丈夫でしょ!なゆたを見習おうと思って」
ドヤ顔をしてみせると、なゆたは、シーサーの様に口を開き、目を丸くして、私を見ていた。
(なにか間違ったこと言ったかな?)
「やめた方が……いいと思うよ」
「え、なんで?」
「だってガムだよ?砂ついてるよ?洗ってもベタベタには勝てないよ……!?」
ありえない!と顔が必死に訴えている。
一瞬間が空く。
「そねこってもしかして……バ」
恥ずかしさが込み上げ、席に飛び込んだ。
(ガムは食べないのか……)
新しい飴を取り出し、袋を開ける。力が入る。
ーーポンッ!ペチャッ
「開けてあげようか?」
「(…うん)」
無言で一度だけ頷く。
とびきり甘い飴だった。