〈2話〉鉛筆
「プリント配るぞー、後ろに回してくれ」
私がプリントを配ると、後ろでロングヘアのなゆたが工作しているのを見つけた。
「なゆた、何してるの?」
「小さくなった鉛筆、捨てるのもったいなくてさ」
見ると5センチほどの背丈になった鉛筆に、長い棒を取り付けようとしていた。
「ちっちゃ……よくそこまで使ったね」
「美術で黒く塗りつぶす専用にしてたんだ」
「ああ、可哀想なことになってるね」
「力入れると折れちゃうんだよ」
不格好に取り付けた棒が、無惨に折れ曲がっていた。
「はあ……」
大きくため息をつき、落胆するなゆた。
「接着剤つかう?」
なゆたの目に、生気が戻り、輝きをます。
(何するんだろ…)
ちょっと気になるけど、授業に集中しないと。
ノートを取り始めて暫く経つと、肩を叩かれた。
「ねぇねぇ」
「んー?」
「見て、ストロングアーム」
「ぷふー!」
あまりにごつくなった鉛筆の集合体に、思わず吹き出した。
「どう?」
「耐久性に特化しすぎて、使いずらそう」
「じゃあ、これは?」
机の下から、別の鉛筆の集合体を取り出すなゆた。
「ツインズ」
「もうちょっと、長さ欲しいかも」
「ロングネック」
「長けりゃいいってもんじゃない」
「エッフェル塔」
「もはやアート!?」
「小さい鉛筆使い切るの…簡単じゃないね……」
全気力を使い切り、机に突っ伏した。
「そんなに苦労してるの、なゆただけだと思うよ!?」
「そねこは、小さい鉛筆どうしてるの?」
「私はこれ使ってる」
〈鉛筆延長ホルダー〉を取りだした。
「な、何それ」
「鉛筆ホルダー」
「ちょっと貸して」
じっくり観察し始めた。
「なにこれ、超画期的なアイテム……!」
驚愕したなゆたの顔は、絶望しているようにも見える。
「私の苦労が……」
「ごめんごめん、邪魔するのも良くないかなって」
相当ショックだったのか、作り出した作品たちを泣く泣く壊し始めた。
「これあげるから、許して……ね?」
みるみる笑顔になる。パー!っと効果音が出そうだ。
(本当は、忘れてただけなんだけど)
なんだかんだ、良い方向に事が運びホットする。
「ふふふ〜ん」
(なゆた嬉しそう)
ご機嫌な鼻歌。気に入ってくれたみたいだ。
安心したのもつかの間、後ろから不穏な声が聞こえる。
「……あっ」
「どうした?」
「抜けなくなった……」
小さい鉛筆が、ホルダーの奥にぎゅうぎゅうに詰まっていた。