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九議題目 昼休みの熟睡は危険か?

「……大丈夫かい?」

 そんな声が聞こえて顔を上げた。薫さんが心配そうな顔でこちらを見つめている。

 今日から授業が始まって六限まで存在することになって迎えた昼休み。仲のいいもの同士で席をくっつけたりしてる姿を見て一旦トイレに逃げ込んだ後戻ったら、知らない奴に席が取られてるのに気づいてしまって、逃げ込むように部室に来たんだっけか。

 もう戻らないと五限に遅刻してしまう。十三時二十分頃からだったよな、と薫さんに尋ねる。

「今……何時ですか?」

「…………十五時十五分だけど」

「ああ、十五時…………十五時!?」

 ガバッと上体を起こせば呆れたような顔をした薫さんと目が合う。

「……『高校生活三日目で授業をすっぽかした者はどんな末路か?』。キミはどう思うんだい?」

 淡々と言いながら薫さんは席に座った。

「………………」

  未だ唖然として言葉が紡げない僕をたっぷり一分ほど待ってから薫さんは言った。

「……ちなみにワタシはね、不良としての断定がついたと思う。優しい何人かは『昨日いなかったけど』みたいな話を明日掛けてくれる可能性はあるが、言葉を選ばないと信用は落ちる。教師なんかはキミの言い訳も聞かないレベルに不良と決められただろう」

 言ってることは正論だった。

「……失敗した」

 戯言のように呟くが、薫さんは小さくため息をついた。

「昨日の約束を守る気はないのかい? このままじゃ他の部活に入ってもムダだと断定せざるを得ないけども」

「……こんなはずじゃなかったんで…………」

「どうだか」

 今日の薫さんはいつもより厳しい。目を伏せて諦めたような顔をしている。

「昼食を食べたあとの残りの時間を寝て過ごすならアラームはかけるべきだ。ここは部室棟だからさして迷惑にはならない。また、友人を作る気があるなら誰かに声をかけてみるべきだと思うよ。撃沈したなら話は別だけどね」

 言ってることは正しい。酷く正しく、だからこそ図星である僕にとってはナイフのように突き刺さる。

「…………ごめんなさい」

「謝られても困るよ。というより謝罪は教師にしてくるべきだ」

 薫さんはそう言いながらカバンから本を取り出した。『青い春の夢物語』と書かれたタイトルが見える。

「何をモタモタしてるんだい?」

 そう声を掛けられて、さっきの提案は今すぐやらなきゃいけないのか、と思いながら立ち上がった。教師の名前は分からないから、一旦教室に戻って教科を確認してこなくてはいけない。

 一つ息をついてから僕は部室の扉を開いた。

「……言い訳をしないと教師の話は早く終わる」

 薫さんの言葉に振り返ると、彼女はニヤリと笑った。

「ワタシからの有益なアドバイスだ」

「…………はい」

 まるで何回も怒られ慣れてるみたいだな、という気持ちと共に僕は頷いた。

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