六議題目 人生の地図とはなんなのか?
「そういえば、明日が入学式だっけ」
「……そうなりますね」
部室に集まって数分経ってからようやく口が開かれたと思ったら、そんな雑談だった。
いつもこうだ、というのには流石に期間が短すぎるが、昼頃に集まって五時頃に帰るなんてスケジュールを組んでる癖に、実際に議論をしてるのは長くても三十分程度、しかも一議題についてしか議論しない僕らは残りの時間を大いに持て余していた。
多分休日にやる必要性はない気がしているが、薫さんがそれをよしとしない以上、従うしかなかった。
「入学式ということは、キミは新しい『人生の地図』を手に入れるのかい?」
「…………人生の地図?」
首を傾げれば薫さんは少し自嘲気味に笑った。
「……なんか、言うじゃないか。人生の道標がどーのこーの的な」
「よく分からないですが、見つけられたらいいなと思います……?」
理解もせぬまま適当に返せば、薫さんは大きくため息をついた。
「嘘はいけないよ、ミオくん」
「じゃあ、貴女にはあるんですか? 人生の地図」
「まさか! ワタシはそんな決まりきった道なんて通りたくないからね」
ニヤリと笑いながら薫さんはそう言った。