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第七話 来訪者【15番】──“番号を持つ者”の忠告

前話の内容:俺は朝比奈真央に誘われて、朝のカフェにやって来た。そこに突然現れた長身の男……。

「……誰?」


朝比奈真央が眉をひそめ、椅子ごと少し距離を取る。


「初対面なのに自己紹介もなしとは失礼だったね。私は──オットマー・ハヤシ・リヒター」


長身の男は少し癖のある日本語で言って、胸に手を当ててお辞儀をした。


「オムハヤシ……?」と朝比奈がつぶやく。


「違う。オットマー・ハヤシだ。正しくは、オットマー・ハヤシ・フィフティーン・リヒター」


ハヤシはニヤリと笑って、俺の顔を見た。


「そう──15番。君と同じ、“バックナンバーズ”さ。38番くん」


「っ……!?」


思わず背筋が伸びる。


(なぜ……俺が38番って?)


「驚かせてしまったかな? でも、どうしても直接、君に伝えておきたくて。昨日の戦い──本当に見事だった。だが、君の存在はすでに、“彼ら”の関心を引いている」


「彼ら?」と俺がたずねると、


「ああ、そうだ。”彼ら”が誰であるかは言えない」


朝比奈が険しい目で男を睨みつけて、少しきつい口調でたずねる。


「あなた、何の目的でここに?」


「心配しないで。僕は敵でも、味方でもない。君たちに“忠告”しに来たんだ」


ハヤシは、勝手に椅子を引いて、朝比奈真央の横の席に腰を下ろした。朝比奈はムッとした表情で、 メニューをハヤシの胸に押しつけた。


「じゃあその前に注文して。一人一品がルールよ。日本では常識なんだけど?」


ハヤシはきょとんとした顔になって、メニューをめくる。


「てか、あなたメニュー読めないの? 日本語の読み書きダメなパターン?」


ハヤシは少し困った顔になって、両手を広げた。


「じゃあ、私が頼んであげる。あなたはオムハヤシね。オムハヤシライス。ここの、とびきり美味しいんだから」


朝比奈真央は慣れた感じで店員を呼び、注文を済ませる。


「それで──あなたの目的は?」


「フッ。お嬢ちゃん、厳しいね。私が君たちに会いに来た理由は“忠告”だよ」


「忠告?」


「君の存在は──もう噂になっている。昨日の戦いの映像はネットでも出回っている。“二体のバックナンバーズが戦った”という情報は、すでに拡散されてる」


「そんなこと、知ってるわ。だからどうしたのよ」


「君の周りに──バックナンバーズが集まってくるかもしれないということだ。敵も、仲間も、目的もバラバラにね。だから今のうちに、心構えだけはしておいた方がいい」


「そうね。その可能性は考えられるわね。じゃあ、あなたが15番っていう証拠は?」


朝比奈がすかさず口を挟む。ハヤシはやれやれと肩をすくめて、微笑んだ。


「そうだね。なら教えてあげよう。僕の能力は『ブリンク』──空間を一瞬で移動する力さ。能力者のいる場所にだけ移動できる。そして、誰が能力者かも、すぐに分かる。たとえば──金髪の君は“非該当”だね」


「はぁ?」と朝比奈があきれたように目を細める。


「じゃあ、逆に聞くけど──あなたたち“バックナンバーズ”って何者なの? 誰かに命令されてるの? 宇宙人?」


「おっと、それには答えられない。でもひとつだけ言えるのは──僕の知る限り、“もっと危険な番号”のバックナンバーズもいる。そして彼らの中には、情け容赦ない連中もいる」


そのとき、オムハヤシライスがテーブルに運ばれてきた。湯気が立ちのぼる。ハヤシはそれをじっと見つめた。


「まあ、今日はこれくらいにしておこう。君の立場はすでに特別だ。なにせ“命令に逆らった”初めての番号なんだから。だからこそ、君に興味がある」


そう言って、ハヤシは俺に軽くウインクをした──その瞬間、彼の姿が“ふっ”と掻き消えた。まるで煙のように。


「……え、なにあいつ。もう帰っちゃったの?」


朝比奈真央がぽかんとしたままつぶやく。


「急に現れてさ。せっかく注文した料理、食べもしないで消えるとか非常識にも程があるわ」


そう言いながら、彼女はちらっと俺を見る。


「いらないの? もったいないから、私が食べる」


(えっ、さっきパンケーキ完食してたよね……?)


朝比奈真央は、少し怒ったような顔で、オムハヤシライスを平然と食べ始めた。


その姿を見ながら──


俺は、これから自分が置かれる“日常”が、もう日常じゃなくなっていることを、ようやく実感しはじめていた。



《第8話に続きます》

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


励みになりますので、面白かったらぜひ、ブックマークやレビューをお願いします。


第8話は2日以内に更新予定です。

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