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第一章 第三話 Exclusive executives

ー六波羅学園ー


次の日も、学園では大将の話で持ちきりだった。

俺が通ると皆が俺の話をする。やめてほしいなあ…


「あの大将、昨日の演習で誰も手が出なかった仮想敵を一人で倒しちゃったんだって。」


「すごーい。ほんとに幹部になっちゃうんじゃない?」


こっちでも俺の話か?


「いやー、俺もかっこいい幹部になる予定だったんだけどなあー」


「なにいってんだ、お前は夢語る前にいい加減、部隊加入の準備しろよ。

 なんの部隊があるかすらもあやふやだろ。」


「だって、どれもしんどそうじゃん〜。

 いっそここに居続けてたほうがマシじゃね?」


「はあ〜。君が幹部になったらこの国が潰れちゃうよ〜」


「その心配はないと思うよ。」


その二人の間に入っていったのは、学業優秀の空羅殿 密庵(クウラデン ミツアン)だ。

彼の家系は帝国の政治を裏から支えている重鎮である。


そのせいか、彼の法律や帝国の構図についての知識は人一倍だ。

偏見を覆す知識に驚かされることもよくある。


興味が湧いたので聞き耳を立てることにした。


彼の話は大まかにはこのような話だった。


多くの人が勘違いしてるが、実は幹部は政治的権力を持っていない。

幹部が政治的権力を持ってたら、

この国はたちまち軍事国家になっちゃうだろ?


だからそれを防ぐために、幹部含む『独立統治機関』は

政治的権力を一切有していない。


しかし、例外はある。

大統領令という、議会の認証なしに出せる命令があり、これは誰も止められない。


だが、『独立統治機関』は政治的な横暴はできないような構成になってるから

基本的に軍事的な招集や命令時にしか使われない。


まあ、たまに政治に対して神対応するけどね。

そういうのは幹部が関わってるっぽいけど、細かいことは一切わからない。


「そういや幹部になったら結婚できない、なんて噂も聞いたことあるなあ。」


「まじかよ。この最高にイケてる俺が結婚できないなんてまっぴらゴメンだぜ。」


「お前はまず病院で頭に氷詰めてもらえ。」


この話を耳にしたものがもう一人いた。夜桜だ。彼女は少し驚いた表情を見せると、

いつも冷静沈着な顔に、珍しく物寂しげな気色が浮かんでいた。

しかし、鈍さ満載の当事者は一切気づいていなかった。


(昼飯の特製ローストビーフ楽しみだなー)

などという呑気なことを考えながら、彼は教室へと向かった。


ー独立統治機関本部 研究書庫ー


この帝国の中心には、約1400メートルもの高さを誇るセントラルタワーが

そびえ立っており、その最上部が独立統治機関の本部となっている。


当然のごとく皆めんどくさがって飛び降りて移動するので、

本部とその下の階は物理的につながっておらず、

自然と一般人は侵入できない状態になっている。

(外から見ると繋がっているように見せている)


その研究書庫には、一般には出されていない極秘の古書などが貯蔵されており、

幹部たちは自由に使うことができる。


そこでスペトスとフェルドラが裏世界について話していた。


「この前面白い文献を見つけたんだけど、聞く? フェルドラ」


「君は本当に物好きだねえ。普通幹部はこんな古書面白がって読まないよ。」


「はあ〜、幹部になったからって探求をやめちゃうなんて、怠慢極まりないよ。

 それに、ここを自由に使えると聞いて、ときめかないなんておかしくない?

 宝箱見つけて開けずに置くのと同じだよ。」


「いや、僕も最初は面白いと思ったんだけどねえ。

 あまりにも難解だし、そもそも古すぎて今じゃ通用しそうにないし、

 使えなさそうだなあって思ってやめちゃった。

 それよりは幹部同士で鍛錬してるほうがよっぽどいいと思わない?」


「ところがどっこい、裏世界について新しい推論が立ちそうなんだ。」


まあ話だけ聞いてやろうと呆れた顔でフェルドラはため息を付いた。


裏世界というのは、主に上位概念がしまわれている空間、といったものだ。

そこにある概念は、この表の世界に呼び出されたときのみ、

干渉することができる。


この前には、大昔に裏世界を表の世界と繋いで切り開いた者がいるといった

馬鹿げた話をされたフェルドラは、もうそのようなおとぎ話を聞くのに

飽き飽きしていた。


「夢って見たことある?」


「君の毎日のお話が夢物語そのものだよ。」


「まあ冗談はさておき、その夢が裏世界での概念と関係しているみたいなんだ。」


まんざら嘘でもなさそうな話をされたフェルドラは、少し真剣になった。


「それで、そしたらなにか起こるの?」


「それで、それで、表の世界が…どうなんだったっけ?

 解読で精一杯だったからあんまり内容覚えてないや。」


呆れ返ったフェルドラが帰ろうとすると、

スペトスが一緒に解読してくれないかと頼んできたので、

彼は少しだけつきやってやることにした。


「…手伝ってくれるのは嬉しいけど、そろそろ時間じゃないのかい?」


「…いや、これは…一体どこにこんな物があったんだ…!

 出前のピザなんかよりよっぽど大事だ!」


「いや俺の話、出前のピザ以下だったのお!?」


ひどく落ち込むスペトスを、フェルドラは懸命に急き立てた。

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