第8話 警察署へ
警察署に着いた時には既に19時を回っていた。
「いやいや部外者に何も話せやしませんよ」
西宮刑事は出迎えてくれたが、情報が欲しいと言う舎六に首を振った。
ああやっぱり。和十は帰りましょうと舎六の着物の袖を引いたが
「でも、捜査は行き詰まっているんでしょう?協力しますよ」
舎六は引き下がらずにそう言った。
「行き詰まってなどいやせんよ」
「捜査が進んでいたら私たちが来たからって相手にしないでしょう?」
「うーん…」
西宮は両腕を組んで唸った。
「凶器はトロフィーではない。それがわかったから和十くんを釈放したんですよね?」
「!? 誰からそれを?」
驚く西宮に舎六は落ち着き払って
「私が勝手にそう思っただけですよ。トロフィーのあった部屋からわざわざリビングに持ってきて殴り付けるなんて、不自然じゃないですか」
「ああ、先生はあの家をご覧になったんでしたな」
ええ、変質者よろしく双眼鏡で覗いてね。
…和十は心の中でそっと呟いた。
「今一番疑っているのは佐賀野さんの担当編集者の長田さんではありませんか?」
「…」
「彼は佐賀野さんとはあまり良い関係ではなかった。そして佐賀野さんが亡くなったのは昨日…つまり4月9日の20時から21時頃。違いますか?」
はぁ、とため息をひとつつくと、西宮は観念したように両手を揚げた。
「参りましたよ。こりゃ先生にご協力願った方が良さそうだ」
「ありがとうございます」
にっこりと舎六は答えた。