第6話 釈放
西宮は少し呆れたように
「それは犯行の自供かね?」
「まさか~。和十くんからの電話が切れてから佐賀野さんのお宅に伺いましてね。外からですが色々と拝見しました」
舎六は笑いながら答えた。
「拝見しましたって…刑事たちが張ってるはずだけど?」
「ええ、だから少し遠くから隠れて双眼鏡で覗かせてもらいました」
「先生…なんだか思い切り犯罪臭いです…」
うーん、と西宮は腕を組んで
「おい、佐賀野邸の奴らに連絡して、窓の鍵が開いてるかどうか調べさせろ」
と、若い刑事に言った。それから舎六と和十の方を振り返って
「あんたがたの疑いが晴れたわけじゃないんでな。連絡先教えてもらうよ」
「あ、ナンパですか? うーん、どうしようかなー」
「…人の話聞いとったかね?」
「先生…」
のんきな舎六に少々不安な和十であった…。
少ししてふたりは警察署から解放された。東側の窓がひとつだけ鍵が開いているのが確認され、その窓の下の草むらに人がいた痕跡があったらしい。
「は~、シャバの空気はやっぱいいなぁ~」
伸びをしながら和十は言った。舎六は笑いながら
「何年もどこかにいた人みたいだね」
「一度言ってみたかったんですよこの台詞。自由はいいなー」
「まあでも気をつけてね。多分私たち泳がされてるだけだから。見張りは付いてると思うよ」
「え?!」
思わず和十が辺りを見回すと、サッと隠れる影がチラッと見えた気がした。
「わー。見張られてるとかいい気分ではないですね。これじゃあ変なことはできないな」
「和十くん、変なことするんだ、意外だね」
「何を言ってるんですか! 変なことって何ですか!?」
「和十くんが言ったんでしょう~」
ケラケラ笑いながら舎六は言った。和十はからかわれたことにやっと気づいた。
ああそうだ、この人はこーゆー人だった。少々むくれ気味に彼は舎六の隣を歩いた…。
「先生、これからどうするつもりですか?」
「どうって…このままだと和十くんか私が犯人にされかねないからね、自分で犯人を探すよ」
「え!」
こともなげにそう言う舎六を和十は驚いて見つめた。
「アテはあるんですか?」
「アテかあ…とりあえず佐賀野さんのことを聞くために編集者のところにでも行ってみようかな」
のほほんと答えると、舎六は早速、和十と共に出版社まで足をのばしたのだった。