第4話 容疑者、得田和十
「だから何度も言ってるじゃないですかー。僕は原稿を取りに行っただけです!」
警察署に何故か連れていかれた和十は先ほどから続く同じ質問に辟易していた。
「原稿を取りにねぇ。なら、なんで凶器を持ってたわけ?」
「だーかーらー」
これも何度も繰り返されている質問であった。警察は暇なのか…。
「落ちてたのを拾っただけ? そんな都合のいい言い訳通用するわけないでしょうが」
「はあ…」
取り調べの刑事は最初から和十を犯人と決めてかかっているようだった。なんでも
「刑事一筋35年のわしの目に狂いはない!」
ということらしいが…
「思い切り狂ってんじゃんよ…」
「何か言ったかね?」
「いいえー」
「わざわざ自分から警察に電話をしておいて白状しないとは、おかしな奴だな」
「だから119番に電話したつもりだったんですよ! 佐賀野さんがどこか悪いのかと思って」
「はいはい」
バイトをしていただけなのに、えらいことになってしまった。そっとため息をついた。
「ほれほれ、さっさと白状した方が楽になれるぞ~」
ため息をどう勘違いしたのか、このとんちんかんなベテラン刑事はニヤニヤしている。
しかしどうしたものか…。このままでは帰してくれそうにもない。和十は頭を抱えた。
その時、若手の刑事らしき男が取調室に入ってきてベテラン刑事に耳打ちする。
「あんたに面会だとさ」
ベテラン刑事…西宮は腕を組んでそう言った。