第18話 本当に?
「あの人が犯人だったんですねえ。他に男がいたっていうのは納得だけど」
和十は苦笑しながらひとりごちた。舎六は先ほどから返事もしないで考え込んでいる。
「先生、どうかしました?」
「う~ん、いやね、なんだかしっくり来なくてね」
「そうですか?」
舎六は再びパソコンに向かってキーボードを叩き始めた。
「これも違うか…。これは? うーん…。ん? あれ? これとこれを押すと…あ」
「先生、どうかしました?」
和十が聞いた時、
「あ、いらした。」
「ん?」
部屋に刑事でもなさそうな服を着た人物が入ってきた。
「あ、どもです。私、鑑識のものなんですが…宮さんに頼まれたものを持ってきたのに宮さんいなくて。こちらに持っていけば良いと言われましたもので」
やけに「もの」を連発する人だなと和十は思った。
「これはどうも。家並舎六と申します。西宮刑事にお願いしたのは私です」
「おおー! あの舎六さん!? なんとまあ! ナマ舎六!」
「はあ、どうも」
勢い良く差し出された手を思わず握ってしまった舎六だった。
(個性的な人だなぁ)
和十はこっそりと思ったのだった。
「あ、そうだこれ、キーボードの血痕です」
「どうもありがとうございます」
「はい! ではまた来週~」
ヒラヒラと手を振りながら鑑識の人は去っていった。
「…濃かったですねぇ」
「だねぇ…」
ふたりとも少々呆気に取られてしまった。気を取り直してもらった血痕の写真を見るや、舎六の顔色が変わった。
「そういうことか…」
「和十くん」
「急いで西宮さんに連絡を取らないと、間に合わないかもしれない!」
「え? は、はい!」




