第12話 道すがら
警察を出たときにはもう21時を過ぎていたので、舎六と和十は捜査を翌日にすることにして一度帰途についた。
次の日、若い刑事に「翻訳」してもらったメモを見ながら、ふたりはまず佐賀野の恋人の自宅へと向かった。
「和十くんはこの事件どう思う?」
「え」
舎六に突然聞かれて和十は驚きながら
「そう…ですねえ。強盗の仕業ということはないんでしょうか? 先生は最初からその線では捜査してなかったみたいですけども」
「ああ、なるほど」
舎六はうなずくと
「強盗というのはないと思うよ。まず、部屋が荒らされていなかった。物取りなら部屋を物色するだろうからね」
「あ、そうか」
「もうひとつ気になったのが、和十くんが見たという靴の存在だ。靴を脱いで上がる強盗もいなかろう」
「確かにそうですね。ていうか先生、僕の言うこと信じてくれてたんですね」
瞳をキラキラさせながら和十は舎六を見た。
「和十くんは嘘をつくような人じゃないからね」
「先生…」
和十は感動しながら目を潤ませた。
(おじさん、凄いね!)
瞳を輝かせながら舎六を見る少年の姿が和十に重なった。
そう。きみは、違えない…。
「何か言いました?」
「いいや、何も」
にこりと笑って舎六は答えたのだった。




