第11話 ダイイングメッセージ
それから思い出したように
「そうだ、忘れるところでした。現場にはパソコンがありましてな。画面に数字の羅列が残されとりましたよ。血痕がキーボードに付着していたので、恐らく立ち上がろうとしてパソコンに触ってしまったのでしょうな」
「え! それ、ダイイングメッセージって奴じゃないんですか?」
和十が思わず声をあげると
「我々もそう思って調べたんですが、ロッカーの番号でも車のナンバーでもなくて。色々と思い付く限りはやってみたのですが結局わからずじまいで。キーボードに指が当たっただけだろうという結論になりました」
「佐賀野さんは即死ではなかったのですか?」
舎六が西宮に聞いた。
「殴られたあと、一時意識を取り戻したということのようです」
「宮さん」
扉がガチャリと開いて若い刑事が顔を出す。
「こら、ノックくらいしろ」
「すんません」
笑いながら頭をかく。
「奥さんからお電話ですよ」
「なんだそうか。わかった、今行く」
「西宮さん、佐賀野さんの恋人と長田さんの家の住所、それとパソコンの数字を教えて頂けますか?」
「ああ、いいですよ」
メモ用紙に走り書きすると、西宮刑事は軽い足取りで部屋を出ていってしまった。
「意外ですねえ。西宮さんて愛妻家なのかな?」
「そうみたいだね」
にこりと笑って舎六は和十に答えた。
「そうなんですよ、結婚して長いみたいなんですけどね、未だにラブラブです」
苦笑ぎみに若い刑事が口を出す。余程あてられてきたのだろう。
「さて、まずは佐賀野さんの恋人のお宅に行こ…」
「先生?」
絶句してしまった舎六を不思議に思って、和十は声をかけながら手元を覗き込んだ。そこには文字というには無理があるミミズのような線が走っていたのだった…。




