ふっ、今宵(まだお昼前だけど)のツンデレはよくデレることよ。それもまた善しっ!!
「や、別に礼言うとこでもねーかんな?」
「ふっ、これは、『美しいものは貴く尊い全世界の宝! その存在と生存を、生み出した神に感謝を以て拝観すべし!』というわたしの持論に賛同して頂いたことに対してのお礼です」
「ええっ? 僕、それに賛同したことになってるのっ!?」
「ほら見ろ、ライカ兄上が混乱してる。つか、お前が勝手に聞かせただけだし」
「ちなみにわたしは、シエロ兄上とライカ兄上が日々健やかに、愛らしく、麗しく成長していることに対し、常に貴腐神様に感謝しております」
「え? そんな……ネロが、僕のために毎日?」
蒼の冷たい視線に頷く。
「勿論です! シエロ兄上、ライカ兄上、アストレイヤ様という美しく、麗しい存在を生み出してくださった貴腐神様に、日々感謝と祈りを捧げています!」
そう、美麗なキャラを生み出してくださった神絵師さん、キャラ造形、生い立ちから性格、その他細部までストーリーを造り込み、販売までしてくださったゲームクリエイターの方々全てへの感謝をっ!!
まあ、リアルな破滅・死亡フラグが身近に迫ってる状況は、かなり大変なんだけどね!
「ネロ……」
ヤだ、ツンデレぷにショタが感激したような顔であたしを見てるっ!!
「……ま、そんなどうでもいいことはおいといて」
「え? ええっ? シエロは、こんなにネロに想われてるのになんとも思わないのっ?」
「思わない。つか、さっき言ったでしょうに? ネロは面食いだって。つまりコイツは、自分が可愛いとか綺麗だと思ったものを眺める度に、毎度毎度そんな風に思ってるってことだから」
「ふっ、さすがシエロ兄上ですね。わたしのことを理解して頂いて嬉しいですよ」
さっすが蒼、お姉ちゃんのことよくわかってるぅ♪
「え? う、うれしいの?」
「ふふっ、無論です。こうやって軽口を叩けるのは、シエロ兄上やライカ兄上がわたしと仲良くして頂いているお陰ですからね」
「ぼ、僕も……その、ネロとシエロと仲良くできて、うれしい……」
ぼそぼそと赤くなった顔をつんと逸らしたライカが言う。
ふっ、今宵(まだお昼前だけど)のツンデレはよくデレることよ。それもまた善しっ!!
「ライカ兄上は可愛らしいですねぇ……是非とも、その愛らしいまま成長してくださいね♪」
「え? 僕が、可愛い?」
「勿論です。子供は皆全て、ある程度は可愛いものですよ♪」
うん。むやみやたらと攻撃的だったり、酷く残酷なことしたり、嗜虐嗜好があって人を虐げるのが好きだとか、人を傷付けて悦に入るようなヤバいクソガキ以外は。ほら? 嗜虐趣味のサイコパスって、年齢関係無いし。仮令子供でも、頭おかしい奴はいるし。ヤバい奴は、幼児のときからガチでヤバい。というか、自分の異常性を隠せてない子供の頃の方がヤバいってこともあるし。
そういう意味では、ネロたんな身体は兎も角。ある程度中身を隠していないあたしも、大分可愛くない子供でしょうねー。
「えっと? ネロの方が、僕より年下なんだけど?」
「ふっ、誰かを可愛らしいと思うことに、男女の別や年齢は全く関係ありません! 老若男女、いずれどのような人にも、可愛らしいところは遍く存在するのです! 人は、誰かのその可愛らしく愛らしい箇所を見付けたときに、その人物に対して心震わせ、可愛いという感情が萌えて燃え上がり、萌えて燃え捲るのです!」
つまり、それが性癖の発露や萌芽と言っても過言ではない!
「は? え? 燃える?」
「はいはい、ストップストップ。ライカ兄上、こういう話を迂闊にネロに振ると、何時間でも一人でくっ喋り続けますから、下手な質問はせず、適当に聞き流して話を変えた方がいいですよ。っつーワケで、ネロ。これからの予定は? 他んとこも視察に行くんだろ?」
「……チッ、話を逸らされたか……」
「え? 舌打ち?」
「ふふっ、気のせいですよ。仕方ありませんね……ええ、そうですね。情報次第ではありますが、他にも『視察が必要不可欠な地域』はあるでしょうから……準備が整えば、また視察に出ることになるでしょうね」
そう、シュアンからの情報で、クラウディオが唆していた貴族は大体判明したし。ソイツらの領地を重点的に視察し、後ろ暗いことを根こそぎ暴き、あわよくば親アストレイヤ様寄りの人を後釜に就ける予定。
隣国の影響を排除し、レーゲン派の権勢を削り、アストレイヤ様とライカに有利な状況を作り出す。行く行くは、クソ親父ことレーゲンを王座から引き摺り下ろし、健全育成計画でヤンデレ化を阻止したライカを国王に就ける。
そうすれば、シエロたんの死亡、破滅フラグは大分折れる筈だ。
ま、それはそれでグレンルートが残りそうではあるんだけどねー?
今現在、クラウディオの立場は限りなく微妙なところへ追いやった。王都に戻って来る途中で聞いた報告によると、クラウディオは病気療養で王太子位を返上ということになっているそうだから……このまま、クラウディオが王太子に返り咲かないで、国王にならないかもしれない。
クラウディオが国王にならなければ、クラウディオルートはへし折ったも同然……じゃないかしら? ま、希望的観測ではあるし、これからクラウディオが王太子に返り咲く可能性もありはする。けど、未来で国王クラウディオを支えていた宰相シュアン・ウェイバーは限りなく存在しないと思うのよねー。
一応? クラウディオが、シュアン・ウェイバーの支えを必要としない程、優秀になる可能性もなくは無い……かもしれない。多分、万が一、億が一とかの可能性だけど。
まあでも、そうやって未来でクラウディオが国王になったとして、だ。そのときにもクラウディオルートのフラグは完膚無きまでにへし折ってやる所存だけどね!
「え? 二人共、また行っちゃうの?」
ああんもうっ、今日はホントによくデレるわね! そんなに寂しかったのかしら?
「大丈夫です。ライカ兄上が寂しくないよう、またお仕事を沢山用意しておきますね♪」
「だ、だからそれはいいんだってばっ!?」
「そっちに話が戻るのか……」
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