フハハハハハハ! クラウディオが愚かなお陰で、労せず優秀な人材ゲットだぜ!
「っ!? あ、あなただったんですかっ!? 先程の少女は!」
ぎょっとした、まさに驚愕! という顔があたしを見詰める。
「ええ。変装です。というか、シエロ兄上もあの場にいましたよ。ね、シエロ兄上」
「おう。やー、目の前であんな悪口言われるとは思わなかったぜ」
「グレンさんが怒るのも道理ですよ、全く」
「目の前にいた……? で、ですがっ、王子があんな真似していいと思っているのですかっ!?」
「? さて、あんな真似とはどのようなことでしょうか?」
暴言に暴力……心当たりがあり過ぎるわねっ☆ま、基本クラウディオの自業自得だけど。名乗れるものなら、名乗ってみやがれってものよ!
「た、他国の王族の……その、王族へ、あのような暴力を振るって……」
あら、驚愕し過ぎたのか、ぽろっとクラウディオ(仮)が王族だって零しちゃってるわよ。ということは、やっぱアレは(仮)が必要無い存在だった、というワケね!
ということは、クラウディオ(マジもんの王太子)は……本当の本当にゲス野郎で間違いないのね!
王族、と明言したことには今は触れない。確りと記録は取らせているし、下手にツッコミを入れて否定されても面倒だ。後でキッチリとその辺りを詰めてあげましょう♪
「ああ、あの金的なー。めっちゃ痛そうだったなー」
「きっ、金っ……そのような下品な言葉……」
と、シュアンはシエロたんの清楚で麗しいお顔から放たれた言葉に絶句した。
あら、なんだか既視感のある表情ねー?
ライカも、蒼とあたしが最初にちょびっとだけ素で話したときにそんな顔してたわー。そういえば、お留守番なライカは元気にしてるかしらねー? 一応、お土産と一緒に新しい人材(違法にお買い上げした人達)とお仕事も送り付けておいたから、あんまり暇はしてないと思うけど。
あ、でもでもお仕事片付いたら暇するかしら? よ~し、ライカが寂しい思いをしないように、お姉ちゃんもっとお仕事作ってあげなきゃね! ふっふーん、やることは作れば幾らでもあるし。なにをやってもらおうかしらねー?
「えー? 金的は金的じゃん。なー? ネロ」
同意を求める蒼に、
「最近のシエロ様は少々口が悪いですよ。先程のネロ様の口調も、シエロ様の影響ですかね? 俺だけじゃなくて、あれにはみんなビックリしていましたよ。あんな真似は、もうやめてください」
やれやれと溜め息を落とすグレン。
「はっはっは」
「ふふっ」
なにせ、中身がアラサー近い蒼とあたしだもの。以前の純粋なシエロたん、ネロたんよりは確実にお口が悪くなっているのもしょうがないわね。
「お二人共笑い事ではありませんよ。全くもう……」
「そうですね。では、雑談はこれくらいにして。これからは時間との戦いです。シュアンさん。早くお手紙書いちゃってください。あちらは、あなたが情報を洩らすとは思っていない筈」
シュアンも最初はなにも話さない、って明言していたものね。ま、こうやってあたしが懐柔して話させる方向に持って行ってる上、精神状態がまともじゃないせいか、ぽろぽろと重要な情報を零しちゃってるけど。
「とは言え、あちらがあなたのことを悪いように触れ回る前に、ご家族には事情を説明しておいた方が宜しいかと。早く出せば、その分早く着きますからね。ご家族や大事な方を、なるべく早く安心させてあげましょう」
家族が出掛けたっきり、ずっと帰って来ないと……待ってる方は不安で不安で仕方ないもの。生きているなら、せめて元気であることくらいは報せてあげなきゃね!
あたしは、家族が帰って来ない状況を二度経験した。一度目はお父さんとお母さん。二度目は、蒼だ。帰って来なくて心配してたら、事故に遭ったって聞いて――――あんな風に胸が押し潰されるような気持ち、経験しなくていいならしない方がいいわ。
「……心より感謝致します」
と、なんだか言いたいことを飲み込んだような顔でシュアンは手紙に向き直った。
それにしても、クラウディオはマジで悪手を取ったわね。なにせ、シュアンは隣国の未来の宰相だ。側近としても、かなり有能だった筈。そんな風に自分を支えてくれる人を、こうも簡単に切り捨てるなんて……愚か過ぎるにも程があるわ。
ま、こうしてまんまとあたしが拾っちゃうワケだけどね♪
確実に宰相になっているのは約十年後だとしても、シュアンは将来宰相になれる能力を有している上、国王夫妻の負担も担えるくらいに優秀だということだ。
ってことは……もしかしなくても、クラウディオが国王になれたのは、実はシュアン・ウェイバーの働きが大きかったんじゃないかしら?
フハハハハハハ! クラウディオが愚かなお陰で、労せず優秀な人材ゲットだぜ!
さてさて、クラウディオ陣営がシュアンを切り捨てた後、これからどんな風になって行くのか……大分見物よねー。
ふふっ、シュアンにはどう動いてもらおうかしら?
現状ではあたしの言ってることへ耳を貸してくれる人、そして理解してくれる人が少ないのよねー。蒼にネロリン信者、アストレイヤ様だけじゃ足りない。
あたしも蒼もまだ子供だし。王族じゃなかったら、まともに話聞いてくれる人がいたかも怪しい。ネロリン信者は恩人フィルター掛かってるせいか、あたしの言うこと聞いてくれるけど。言っていることをちゃんと理解しているかどうかは、若干怪しい。あの人達、基本使用人だし。書類仕事ができる人もいないことはないけど、お役所的な小難しい書類を捌ける人は少ないもの。アストレイヤ様はあたしの言ってること理解してくれて、割と好きにさせてくれるけど、国王代理業務が忙し過ぎて時間を割いてもらうのがちょっと申し訳ない。
というワケで、あたしと蒼の言ってることを理解できて、別の人へ指示できる大人……シュアンは成人してるか、もしくは成人近いわよね? が欲しかったところなのよ! まだ宰相にはなっていないけど、そういう小難しい執務は得意そうだし。たっくさん働いてもらおっと♪
まだまだ色々やりたいことがたっくさんあるのよねー♪
読んでくださり、ありがとうございました。




