国家転覆罪って、物凄い大罪なんですよ? 知ってます?
ちょい疲れたので、休憩がてらにお茶でも一服しますか。
お茶と軽食が欲しいと侍女達に伝えると、パパっと用意してくれた。
「え? 茶飲むの? 今? つか、俺らもなんかしなくていいのかよ?」
「まあ、わたし達にできることは大してありませんからね」
ほら? 中身は兎も角、身体はお子様だし?
「や、なんかあんじゃね?」
「ん~……あると言えばありますが」
「なんだよ?」
「今は家探し&精査中ですからね。子供がうろちょろしていると邪魔になると思うので、大人しく待っていましょう。それになにより、わたし達が本格的に忙しくなるのは、家探しと精査が終わってからですよ。文官のシエロお兄様?」
実はお姉ちゃん、蒼を扱き使う気満々よ!
「ほら、出て来ちゃまずい帳簿の確認とか諸々の書類仕事が待っています。不正の証拠を徹底的に知らべ上げて、ギッチギッチに締め上げましょう」
げっへっへ、元銀行員としての腕が鳴るぜっ★
「ぁ~……裏帳簿なぁ……普通にありそー」
「というワケで、食べておいてください。ちなみに、用意された飲食物は全て持ち込みですのでご安心を」
「おう」
むぐむぐと軽食を食べていると、
「……ネロ様」
横合いから沈んだ声に呼ばれた。いやに暗い顔ね、なにかしら?
「はい、なんでしょうか? グレンさん」
「その、領主へ言っていたことは本当なんですか?」
不安そうな表情があたしを見詰めて聞いた。
「なにがでしょうか?」
「その、領主館の人間を皆殺しにする、というのは……」
「ああ、あれは勿論、嘘ですよ」
しれっと答えると、
「え? う、そ……? 嘘だったんですかっ!?」
琥珀の瞳が驚いたように見開かれる。
「はい。皆殺しに加えて、領主夫人と子供達にまで拷問云々というのは嘘ですよ」
領主に対する人質として利用するのは確定しているけど。
「わたし、血腥いことは嫌いですので。とは言え、無関係の人間を巻き込むのは心苦しいのですが……関連が無いと判明した時点で、他所の土地へ移ってもらおうと考えていました」
「だよなー? ま、そんなことだろうと思ってたぜ」
うんうん頷く蒼。
「ああでも言っておかないと、子供だからと舐められますからね。それに……」
「それに、なんでしょうか?」
「次にここの領主になる人が大変じゃないですか。国家転覆罪って、物凄い大罪なんですよ? 知ってます? 国家転覆を企んだ領主がいた土地の民は、他所の地域の民から差別されたりして、肩身が狭くなってしまうらしいですよ。過去には、そういう領地の治安が悪化して、現在までスラム地区として残っているところがあるそうです。なら、穏便に済ませた方がいいとは思いませんか?」
「ま、関係者以外は罰せず、表には出さない。関係者の身内は外国に出すってんなら、よっぽどのことが無い限りは外には洩れない、か」
「ええ。そうだといいですね」
洩れ難いというだけで、その限りじゃなのよねー。人の口に戸は立てられぬって言うし? ま、外国に行っても生涯監視は付くことになりそうだけど。ここで全員死んじゃうよりは遥かにマシでしょ。
「表向き、現領主は病気療養で引退ということになるでしょうね。新しい領主の選定をアストレイヤ様に確認しないといけませんね」
現領主の身内に丁度いいのがいなければ、国が選定した人を後任に就ける感じかしらねー?
「息子に継がせればいいんじゃね?」
「ん~……それは、どうでしょうね? 子息が、こちら側に恨みを抱かないとは限りませんし……」
獅子身中の虫は困るのよ。
「ネロ様の素晴らしさをお聞かせして、ネロ様が如何に知略に長け、慈悲深く、寛大であるかを徹底的に知らしめるのです! そうすれば、誰しも自ずとネロ様の足元へひれ伏すことでしょう!」
あら、ネロリン信者まる出しの発言。というか、足元にひれ伏せさせてどうしろってのかしら?
「え?」
「は?」
「あなたはお黙りなさい!」
つらつらと語り出した戦闘侍女を、侍女長が叱責。
「ご歓談中、大変失礼致しました。この者は交代させます」
「ええっ!? ね、ネロ様~っ!?」
「ふふっ、あなたはもう少し落ち着きを持った方がいいですよ? わたしの許可しない、身勝手な行動を取られると困りますからね」
ネロリン信者の勝手な行動には、ちゃんと目を光らせておかなきゃね! 暴走厳禁!
「そ、そんな~っ!? ああでも、その笑顔も素敵ですネロ様……」
にこりと見送ると、戦闘侍女はしくしくと泣きながら……若干、頬を赤らめて侍女長に引き摺られて退場して行った。
「さて、お次はさっきのおにーさんにお話を聞きに行くとしますか」
「ああ、さっきの……なんかこう……犯罪者呼ばわりされてめっちゃショック受けてた奴」
「ええ。先程の彼らの様子からすると……」
「まあ、濡れ衣というか、見事に切り捨てられた可哀想な奴ってか?」
「おそらくは、そのような感じでしょうね」
「で、その可哀想な奴をどうすんの?」
「どうもこうも、彼は隣国の王族付きの者ですよ? それはもう、大変興味深いお話を沢山聞かせてくれると思うのですが」
「え~? さっきのにーちゃん、自分はなんも喋んねぇっつってたじゃん」
「ふふっ、最初は雑談から責めてみますかねぇ?」
「どういう風に話持って来んだ?」
「まずは、自己紹介からでしょうか」
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