さあ、そのばっちいブツを蹴ったお靴を脱ぎましょう! そんな汚物は即刻焼却処分しなくては!
「知人、友人、家族、親族を道連れで囚人行きか、進んで協力してそれを免れるかは、ご自分で決めてください。ああ、ちなみにですが。国家転覆罪は通常、一族郎党の処刑が妥当だということは覚えていてくださいね」
「あ~、疑わしい家族、友人、知人、全~部道連れにブタ箱行きに加え、後顧の憂いを無くす為に綺麗サッパリ死刑かー。めっちゃ恨まれそう。んで、通常ってのは? 特例があるってこと?」
と、蒼が合いの手を入れてくれる。
「ええ。情状酌量や、積極的な捜査協力。具体的には、情報の進呈、内部告発などの司法取引があれば、減刑も十分あり得ます。有能であれば、囚人からでも捜査官として雇うことがありますからね」
「成る程なー。ま、どっちがマシかは、馬鹿でも判るわな」
「では、取り調べをお願いしますね」
と、いつの間にか近くにいたアストレイヤ様の手先の執事さんへ丸投げする。
「かしこまりました」
その途端、
「リー様っ!? あんなばっちいものに触ってはいけませんと言ったでしょうに!」
「そうです! あんなばっちいものに触れたら、リー様が穢れてしまいます!」
「さあ、そのばっちいブツを蹴ったお靴を脱ぎましょう! そんな汚物は即刻焼却処分しなくては!」
「本当はお風呂に入って消毒するべきですが、この状況では仕方ありません」
「妥協して、念入りに足を洗うだけで我慢しましょう! さあ、準備なさい!」
リーちゃん設定を律儀に守り、走り寄って来た侍女長達に取り囲まれ、あっという間に抱き上げられて靴と靴下まで脱がされた。
素早いわね、ネロリン信者!
「あ~、もう、どうせだったら着替えて来たらどうだ?」
蒼がちょっと引き気味に、ネロリン信者を見上げている。
「そうですね。シエロ兄上も変装を解きますか?」
「ま、その方がスムーズに行くか。んじゃ、俺も着替えるわ。おい、行くぞグレン」
「はっ……はい!」
と、着替えまですることになった。
侍女達にお着替え用の馬車へ連れ込まれ、ふくらはぎの辺りから念入りに足を洗われ、爪先から指の間までマジで丁寧に消毒された。
ヤだ、なんかちょっと恥ずかしいわ! あ、でもでも、フットマッサージやネイルの下準備だと思えば平気かしら? ペディキュアはしてないけど。
リフレッシュ気分で男の子の服装に着替えて外へ出ると、馬車の近くでもくもくと煙が上がっていた。ちょっと焦げ臭い。
なんだろうと疑問に思ったら……なんでも、本当にあの靴を焼いているのだとか。金属製のバケツに入れ、上からオイルを掛けて燃やしているらしい。
有言実行だったのね、即刻焼却処分。
それにしてもクラウディオ(仮)……とんでもなく、汚物扱いされたものねー? ぷぷっ、俺様傲慢キャラで美形な王太子のクセにっ!? さっきの逃走の仕方とか、もうギャグキャラじゃないっ!?
「お、着替え終わったか」
「はい。お待たせしました。大丈夫ですか? グレンさん」
「え? あ、はい……」
と、顔を赤くして俯くグレン。
「? どうかしました?」
「や、なんかお前の侍女が来て、あんなばっちいものに触れられて可哀想にっつって、めっちゃ念入りに顔拭かれてたから、照れてんだろ」
「ああ、成る程。わたしも、足を消毒されましたね」
「え……? あの、先程の彼はなにか、移るような病気持ちだったんでしょうか?」
グレンの顔が不安そうに曇る。
「いえ、おそらくは大丈夫だと思います」
う~ん……美少年達と遊んで、下の病気に罹っている可能性は否定できないけど。接触感染や飛沫、空気感染するようなヤバい病気は持っていない筈だ。
もうゲームストーリーはかなり崩壊しているとは言え、一応約十年後のクラウディオは健康そうに国王をしていた。まあ、こっちに来ていた方が影武者だという可能性も否めないけど。
そういう意味では、クラウディオは約十年後まで元気でいる筈。
「わたしの侍女達が言いたいのは、なんでしょうね……犯罪者が穢らわしい、ということなのだと思います」
『ねーちゃんにしてはマイルドな表現だな?』
『え~? 両刀で、美少年達を部屋に連れ込むような奴だって。お子様には説明し難くない? しかも、アンタも狙われてたわよ、って言ったらショック受けない?』
『ぁ~、うん。それもそうだな』
「シエロ様? ネロ様?」
「ああ、すまん。奴には、人身売買容疑が掛かってるから。グレンが無事で良かったって話してたんだ」
「あ、そう言えばそうでしたね……」
「ええ。グレンさんが奴の毒牙に掛からなくて、本当に良かったです」
YESショタコン、ノータッチ! YESロリコン、ノータッチ!
おねーちゃん、ロリコンやショタコンという性癖は許容(遠くから眺めて愛でるだけならOKよ♪)しても、実際にロリやショタに性的に手を出す不届きな犯罪者共は断固として赦しませんっ!! 可愛らしいロリやショタの心にトラウマを植え付けるなど以ての外っ!!
「毒牙……うん。お前、ホント気ぃ付けろよ。さっきの奴、ネロが撃退したけど。あんなんでも隣国の王族だって話だぜ?」
「! そ、そうでしたね……」
「あれ? 忘れてました?」
「そ、その、シエロ様を侮辱されて頭に血が上ってました」
「まあ、彼らは正規に我が国へ入国していないらしいので、『国として正式に苦情を言うぞ』という脅しで怯んだお陰でしょう。そうでなければ、こちらの方が不敬罪を食らっていた可能性もありますからね」
「あの、ネロ様」
「はい。なんでしょうか?」
「助けて頂いて、ありがとうございます」
「ふふっ、どう致しまして」
「その、俺は……ネロ様の舎弟、なんですか?」
読んでくださり、ありがとうございました。




