ふっ、掛かったわね。これは助け船……なんかじゃなくて、奈落へのチケットよ!
誤字直しました。ありがとうございました。
グレンとそのお父さん役のおじさまを筆頭に、第二王子の護衛&従者が領主館を訪ねて来た……という体で領主館に潜入成功。
シエロたんこと蒼と、ネロたんことあたしは、顔バレ防止の為に変装中! ちなみに、あたしと蒼は第二王子の侍女の子供兄妹ロー君&リーちゃんという設定。うん? あたしは安定の女装ですがなにか?
まあ、誰があたしと蒼のお母さん役をやるかという、壮絶? な、侍女同士の争奪戦はあったけど……
「十代や二十歳前後の小娘なんかに、七歳の子供が二人もいるのはおかしいでしょう! わたくしなら子供がいても全くおかしくない年回りです! ここは是非とも、わたくしがネロ様のお母様役という大役を果たしてみせますわ!」
と、侍女長(年齢不詳)がお母さん役を勝ち取って、にこにこと慈愛に満ちた表情であたしと蒼を見ている。その慈愛に満ちた表情なら、お母さんと言っても全然おかしくはない。
それに・・・うん。十代や二十歳そこそこで七歳の子供が二人もいたら、マジ恐ろしいので侍女長は間違ってない。更に、未婚女性(ローティーンの女の子の大多数は未婚だけど)ならとんでもない事態過ぎるわっ!!
YESロリコン、ノータッチ! の精神、超大事。遵守を切に願う。
と、そんなことはおいといて。
領主は、取り繕ってはいたけど、若干迷惑そうな顔をしていたのを見逃さなかったわ。
なにせ、隣国王太子のクラウディオ……ま、奴が自身の身分を領主に明かしているかは不明だし、影武者だという疑いもあるけど。との、ダブルブッキングだものね!
無論、狙って来てやったわ!
他国の人間と共謀して甘い汁を吸おうとしているから、クラウディオは粗末に扱えないし、かと言ってクソ親父ことレーゲン派閥の貴族として、レーゲンに贔屓されている第二王子も粗略にはできないという板挟み。それはそれは困るだろう!
フハハハハハハハ! もっと困るがいいわ!
な~んて思いつつ、
「第二王子殿下はまだ七つですので、領主様のお子のお話が聞いてみたいですね」
打ち合わせ通りのことをグレン父役のおじさまに言わせると、
「そうですか! そうですな。子供目線の意見というのでしたら、息子を呼んで来ましょう。では、わたしは少々席を外します」
と、足取り軽く席を外した。おそらくは、クラウディオ(仮)の方へ行ったのだろう。
ふっ、掛かったわね。これは助け船……なんかじゃなくて、奈落へのチケットよ!
程なくして、ローティーンの少年が現れた。
「父に言われて来ました。屋敷を案内致します」
大人しそうな顔をした少年が、ちょっと困ったようにあたし達を見ている。
なんだか押しに弱そうな子ね。ラッキー♪
それじゃあ・・・屋敷捜索開始!
「シエロ殿下はかくれんぼが好きなんですよ」
「あ? ああ、そうですね」
あたしの言葉に一瞬きょとんとした顔をしつつ、合わせる蒼。
「このお屋敷は、広いので隠れ甲斐がありそうですね」
護衛のおじさま(グレン父役)が続ける。
「え? そう、ですか?」
戸惑ったような顔をする領主子息。
「というワケで、シエロ殿下がかくれんぼをするときに危険が無いか、調べても宜しいでしょうか?」
「え?」
「シエロ殿下になにかあったら、ご領主も困るでしょう。危険が無いかの確認だけさせて頂けないでしょうか? 子供は、思わぬ場所に隠れてしまうことがありますから。それに、丁度良くここに子供が三名います。子供がどこに隠れようとするかを、彼らで見てみたいと思いまして」
「それは……父に聞いてみないと……」
「ああ、お父上でしたら、ご子息の判断に任せると仰っていましたよ」
「そうですか……では、危険な場所には近付かないと約束して頂ければ」
よっしゃ、気弱そうな言質を頂きましたっ!!
「それじゃあ、お兄様が鬼ね? 三百数えてくださいな。さ、みんなで隠れましょう!」
うふふと笑いながら駆け出すと、
「あっ、こらリーっ! 一人で先行くなっ!?」
怒った顔で蒼が追い掛けて来る。
「二人共、待って!」
遅れて付いて来るグレン。
さあ、家探し開始!
「おじさまは、お兄様と後でゆっくり来てくださいね!」
領主子息の足留めを指示。
そして、一緒に潜入している使用人達には、あたし達を探す体で怪しい場所をガサ入れするように指示してある。普段からストーキングやスニーキングをしている護衛や、ネロリン信者達なら隠密行動は得意でしょうし。
怪しい場所第一号は、領主の書斎かな? そして、クラウディオはどこにいるのかしら?
客間で密談、もしくは書斎で密談。はたまた、プレイルームという娯楽室でビリヤードなんかをしながら……という可能性もあるわねー?
ま、とりあえずあれだ。気になったとこは、全部見に行こう!
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読んでくださり、ありがとうございました。




