面子、信用、人材、時間……その他諸々がうちの国に喧嘩吹っ掛けて来た代償だと思うがいいわっ!!
「なにをする気なんですか?」
「なに、と言いますか……ほら? 先程のように、他国の人間に我が国の人……それも、子供が拉致監禁などされては堪りませんからね。犯罪者の似顔絵を描いてもらって、この顔にピンと来たら要注意! というやつを、張り出してもらおうかと思いまして」
「マジかっ!?」
「ええ。住民達は、喜んでくれると思いますよ? 人攫いは、他人事じゃありませんからね。特に、子供のいる家庭にとっては」
「他国の王族を犯罪者として指名手配とか……すっげぇこと考えんのな?」
「ふっ、正規に入国してればなにも問題ありませんよ。そう……偶々似たような顔をした犯罪者がいた、だとか言っておけばいいのです。というか、心当たりがあるなら騒がれて困るのはあちらの方。わたし達には、国民を守るという義務がありますからね。見目麗しい子供にばかり声を掛けてホテルに連れ込むなどという、不審で不埒な行動を取る方が悪いのですよ」
つか、不審もなにも・・・下手すりゃクラウディオは児童買春でしょ。まだ十代前半のアーリーを部屋に連れ込もうとするとか、普通に完璧アウトっ!! だしさ?
「そして、周辺諸国の国境警備隊にも、その似顔絵を子供を狙った人攫い、人身売買の疑いありの要注意人物としてリークするのです! 関所を通るとき、そして出入国の際には、厳しく取り調べをされるようになっ!」
「想像してたよか、かなりえげつねぇなっ!?」
「フハハハハハハハっ!! これから先、自国から出る度に犯罪者として疑われるがいいわっ!!」
「いろんな意味で滅茶苦茶大ダメージっ!!」
「というワケで、至急町中にいる隣国の怪しい人物達の似顔絵をお願いします」
「素晴らしいお考えですっ、ネロ様!」
パチパチと拍手をするのは、ネロたんの侍女達。
「か、かしこまりました」
「な、なんて恐ろしいことを……」
と、戦慄したような恐怖に引き攣った顔で手配を始める執事と護衛のおじさま達。
ま、犯罪を取り締まる側や護衛する側からすると、対外的に護衛者だと顔割れ、身バレするのは避けたいもの。それを、指名手配にも似た形で大々的に顔を晒されることになる。しかも、人身売買及び、児童買春の容疑者として――――
高潔であることを誇る騎士として、それはそれは非常に侮辱的で屈辱的なことだろう。
おそらくは、王太子としてもね?
顔が割れ、しかも犯罪者の容疑が掛かってはこれからクラウディオは気軽に……お忍びで外国に行くことができなくなる。正規の手段とルートで。公式な外交としてしか、外国には出られない。
クラウディオのフットワークの軽さを潰すことができる。ま、王太子が気軽にホイホイ他国に出掛けてんじゃねぇよってのもあるけど。
更には、王族の護衛が顔割れするということは、その護衛がいる場所には王族がいると宣伝しているようなもの。
犯罪者の容疑が掛かっている護衛を連れて歩けるワケも無し。複数名……下手をしたら数十人単位での護衛の入れ替えが必要となる筈。近衛としての有用な人材を、潰すことができる。
そして、既に決められていた護衛の総入れ替え。それも、王太子直属の近衛となれば選出に時間が掛かること間違いなし。
王族の近衛は精鋭だと相場が決まっている。それを入れ替える上、現状と同じ練度の護衛を揃えようと思うなら、その分の手間と時間と人材育成費を潰すことができる。
オマケに、王太子の新しい近衛が選出されるまで、クラウディオの動きを潰すこともできる。これで奴は、自国内だろうと自由に動くことができなくなるだろう。
うちの国に喧嘩売っておいて、ただで済むとは思わないことねっ!!
クラウディオがこれまでに積み重ねて来たもの。面子、信用、人材、時間……その他諸々がうちの国に喧嘩吹っ掛けて来た代償だと思うがいいわっ!!
そして――――婚約者いるクセに、旅行先で美少年騙くらかしてホテルに連れ込んで浮気三昧とはいいご身分だな! おそらくはガチの王太子だけどよ!
爆散しろっ!?
「あ、似顔絵制作&ばら撒きの依頼主は、偶々この地にお忍びで来ていた、心配性な子持ちの高位貴族夫人だということにしておいてくださいね? 『この町で、外国人による美少年誘拐事件が発生している』という話を聞き付け、不安で居ても立っても居られなくなり、子供に声を掛けてどこぞへ連れ込もうとしている不審な怪しい外国人の似顔絵を片っ端から描かせて警備隊へと持ち込んだ……という感じの設定で」
「ぁ~……うん。子供心配する母親なら、そういうことしても全然不自然じゃねぇよな。しかも、どこぞの高位貴族夫人が、ってのがなんとも言えず信憑性があるわ」
微妙そうな顔でうんうん頷く蒼。
「ここだけの話ですが……と言って、『外国人の人攫いに気を付けろ。特に美少年が狙われているらしい』という風な噂も合わせて流しておきましょう。そうすれば、住民が彼らを監視してくれることでしょう」
「似顔絵と噂を流すだけで、そのようなことができるとは……」
と、どこか畏怖するような視線をあたしへ向けるグレン。
「それじゃ、夕ごはんを食べに行きましょう♪」
「え? 今から夕食ですか? お菓子食べた後ですが、入ります?」
ぱちぱちと瞬く琥珀。
「勿論。なんたって、育ち盛りですからね!」
「え~? 俺、もう少ししてからがいい」
「なにげに、ネロ様はよく食べますよね」
「そう言えば……頭良い人って、よく食う奴が多いらしいな」
「ああ、考えると結構カロリー消費するってやつねー」
将棋の棋士なんかが有名よねー? 対局すると、一勝負で数キロ痩せちゃうような人もいるそうだ。脳って、案外カロリー使うのよね。運動せず、勉強だけしていて低血糖で動けなくなっちゃうこともあるみたいだし。
「そうでしたか、成る程……」
「ネロ様。申し訳ありませんが、今夜は警備上の関係で夕食はルームサービスを取ることになっております」
「わかりました。では、夕食が来るまでに着替えておきます」
「あ~、そう言や、変装したままだったな。俺らも着替えるか」
各々着替えて、夕食は部屋でわいわい食べた。
さすが高級ホテルね! 豪華なお食事だったわ!
さぁて、仕込みは上々。明日に備えて寝ましょうか♪
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
読んでくださり、ありがとうございました。
ネロリン信者「さすがネロ様! 素晴らしい作戦です!」(*’ω’ノノ゛☆パチパチ
執事「ネロ様は、なんて恐ろしい作戦を……」(((;°Д°;))))
護衛「ほ、本当に……」((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
執事「ネロ様は、絶対敵に回してはいけない方だと肝に銘じましょう」(゜Д゜l||l)
護衛「了解しました!」("`д´)ゞ




