それでこそあたしの弟。さあ、レッツ救出作戦!
『さ、行くわよ蒼!』
その間に、
『あ、おい、ねーちゃん!』
見覚え……というか、おそらくはアーリーであろう金髪の人物と、具合が悪そうにアーリーに凭れ掛かって歩いている灰色髪の男性へと近付く。
「この階なんですよね?」
心配そうな声に、
「ああ……そう、この階の……」
自分の部屋番号を答える男性。
『ちょっ、ねーちゃんっ! 部屋まで付いてく気かよっ?』
潜めた声であたしの袖を引く蒼。
『あのね、蒼。アレ、よ~く見てご覧なさい』
『は? って、アレ……もしかしなくても仮病かっ!?』
『ま、見ての通り』
具合が悪い振り&偶然を装っているつもりだろうけど、灰色髪の男の手が眩い金髪の少年(仮定アーリー)のお尻を撫でているのが見て取れる。アーリー(仮定)は、男性のことを支えるのに必死なのか、はたまた偶然だと思っているのか、セクハラに気付いてはいなさそうだ。
『さて、ここで質問です。具合の悪い振りをして、支えてくれている相手のお尻を撫で回すような輩の部屋に連れ込まれたら、この後あの少年はどうなるでしょうか?』
『っ……あ~、もうっ!? わかったよっ!? ねーちゃんの言う通り、アイツを保護してやりゃいいんだろっ!?』
『ふふっ、それでこそあたしの弟。さあ、レッツ救出作戦!』
パタパタと走り出し、前を歩く二人に近付く。
「あのっ、その人具合が悪いのっ?」
きゅるんとした上目遣いで見上げると・・・ぐはっ!? なにこの眩い美貌はっ!! ゲームのスチルでも圧倒的だった神々しさが・・・少し幼い少年の姿で目の前にっ!!
「え? ああ、そうみたいなんです。なので、今からお部屋へお連れするところなんですよ」
にこりと、優しく微笑む神々しいお顔! 中性的で、まさに天の御使いと呼ぶに相応しい!
「心配してくれるんですか?」
声変わり前なのか、ゲームヴォイスよりも幾分高めな柔らかい声。こんな、こんなっ・・・マジ天使かっ!! な、アーリーたんを、エロ親父の餌食にさせて堪るもんですかっ!!!!
「はい、そっちの人がとっても具合が悪そうなので、お兄ちゃんがホテルの人を呼んで来るって」
「ホテルの従業員を呼んだ、だと……?」
と、どこか聞き覚えのある硬質な低い声。背けていた顔が、嫌そうにあたしを見下ろした。
「っ!?」
傲慢そうな面持ちに、アッシュブルーの鋭い視線に息を飲む。灰色髪の時点で、まさかとは思っていたけど・・・まさかのまさかでしょっ!?
この野郎、なんでこの国にいやがるワケっ!?
男女どちらもイケる両刀鬼畜な攻略対象、俺様イケメン。隣国国王のクラウディオ! あ、今はまだ即位してないから王太子だけど。つか、クラウディオがここにこうしている時点で、隣国の介入が限りなく黒ということじゃない!
それにしてもこの婚約者持ちのリア充野郎、変装もしないで素顔を晒して歩いているとは・・・ん? もしかして、影武者の可能性もあるかしら? それは兎も角、婚約者いるのに美少年お持ち帰りしようとしてんじゃないわよ!
リア充めっ、爆発しろっ!!
「なんだ?」
「おじさん、具合悪いんでしょ? お医者さんを呼ぶからちょっと待ってて?」
にこりと笑顔で言うと、
「誰がおじさんだ。わたしはまだ十代だ」
不機嫌そうな声が返す。チッ……無駄にいい声だぜ! さすが、人気声優が源氏名使って十八禁ゲームの声当てしているだけはあるわね! あと、実は若いってことも知ってる。
「余計なことをするな。少し休めば良くなる。子供はさっさと保護者のところへ戻るんだな」
これは・・・あれかしら? アーリーを部屋に連れ込む寸前で邪魔されたから不機嫌になっている、ということかしら?
「遠慮しなくて大丈夫よ? お兄ちゃんが、すぐにホテルの人を連れて来てくれるから。ね?」
と、笑顔でアーリーのお尻の方へ置いていた不埒な手を取って見詰める。ふっ、これでセクハラはできまい!
「触るな!」
バシッと、払われる手。
「きゃ!」
そんなに痛くないけど、驚きの声を上げておこう。
「こんな小さな女の子になにをするんですか!」
おおう、アーリーがクラウディオへと非難の声を上げた。
「いいの、ごめんなさい。きっと、具合が悪くて気が立っているのよ」
しょんぼりした顔で謝って……
「ああ、そうだな。さっさと帰れ」
「大丈夫よ。このホテル、いいお医者さんが駐留しているってフロントの人が言っていたの。容体が急変しても、きっとお医者が見てくれるわ。だから、頑張って?」
と、めげずに健気に励ます振りをして、またクラウディオの手を取る。
片や、アーリーを部屋へお持ち帰りしようと仮病の振りしたクラウディオ。片や、それを阻止しようと病気の心配をする振りのあたし。これぞ、狐と狸の化かし合いというやつね!
「要らんと言っているだろうが!」
ギロリと見下ろすアッシュブルーの瞳。
ふふん、お姉ちゃんは元バリキャリの銀行員。王太子とは言え、十代の色ガキなんぞに負けるワケないでしょ? 軽~くあしらってやるわ!
「ね、お兄ちゃんも。部屋に連れて行ったあとでこの人がもっと具合が悪くなったりしたら心配でしょう? だから、お医者さんが来るまで待ってましょうよ」
「そうですね。わかりました」
と、アーリーが素直に頷いたところで、後ろの方で実に厭そうな顔で見守っていた蒼にチラリと目配せをする。
「こっちです、こっち! こっちに、一人では歩けないくらいに具合の悪そうな人がいます! 早く来てください!」
大声を上げてのナイスアシスト。
「騒ぎを起こすな!」
こっちもこっちで嫌そうな顔をするクラウディオ。
ま、おそらくはお忍び旅行中だろうし? しかも、うちの国に。もしかしたら、正規のパスポートで通って来ていない可能性もあるだろうし? そりゃあ、なるべく騒ぎは起こされたくないだろう。
だが、しかし! ここは敢えて騒ぎを起こす!
だって、困るのはクラウディオだから! あたしは全く困らない! つか、むしろここでコイツの弱み握ってやりたい! 本妻がいるのに遊びや浮気で他人に手を出すクズは爆散しろっ!!
「医者は連れて来ている。もうここでいい。お前達はさっさと帰れ」
と、具合の悪い振りをやめたクラウディオは、アーリーから離れて忌々しげな顔をしながら一人で部屋へと向かって行った。
ふっ、勝った! アーリーの貞操を巡る第一ラウンドではあたしの完全勝利っ☆
とは言え、第二ラウンドはこれから始まるんだろうけど――――
「あの、お兄ちゃん……」
読んでくださり、ありがとうございました。
茜「ふぅ……とりあえず、本妻(まだ婚約者だけど)がいる浮気野郎の魔の手から、アーリーたんを無事守れたわ♪」(๑•̀ㅂ•́)و✧
蒼「はあっ? あの野郎既婚者のクセに男に手ぇ出そうとしてたのかよっ!? 最悪だな!」Σ(`д´/;)/
茜「もう、本当よね! 浮気野郎は爆散すればいいのにっ!」(ノ`Д´)ノ彡┻━┻




