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お父様って実は案外お母様のお尻に敷かれていて……そして、結構な親バカでいらしたのね。知りませんでしたわ。


 お父様と一緒に、少し余裕を持っての移動旅は……これまでの、次期王太子妃としての窮屈な日常からは考えられない程に、開放的で快適な時間でした。


 マナーに厳格で監視込みの王宮付きの侍女は無論居らず、堅苦しいドレスを着なくてもよく。なにも考えず、誰との兼ね合いや遠慮せず、服や髪型、メイクをその日の自分の気分次第で決めたことなど、一体何年振りだったでしょうか?


 わたくしへ敵対的な視線を送り、イヤミばかりを言って揚げ足取りや失敗をあげつらってやろうという殿方も全く居らず……お父様や、小さな頃からわたくしを可愛がってくださる護衛のおじさま達、気心の知れた侍女や使用人達ばかり。


 お父様を筆頭に、みんなで買い物を勧めたり、立ち寄った先の名産品の使用されたという服やアクセサリーを作ろうと言ってくれたり、銘菓を沢山持って来られたりと……これでもかとわたくしを甘やかしてやろうとするのは、少々面映ゆくて困りましたが。


 でも、久し振りに……クラウディオ殿下の婚約者ではない、ただの(サファイラ)、ただの貴族のお嬢さん(貴族子女)としての時間を過ごせました。


「サファイラの屈託の無い笑顔など、何年振りに見たことか……ハッ! 絵の得意な者を呼び、今すぐスケッチをさせるのだっ!!」

「ちょっとお父様っ、さすがに恥ずかしいですわよっ!」

「なにを言う! お母様にも、お前の笑った可愛らしい顔を見せてやりたいだろう! 大体な、お母様は留守番を任されることをかなり不満そうにしていたのだぞ? それを、サファイラが久々に楽しそうな顔で笑っていた、と後で報告だけしてみろ? きっと暫くは『わたくしはお留守番でしたのに、わたくしもサファイラの笑ったお顔を見たかったですわ』とチクチク言い続けられるのだぞ!」


 全く、お父様って実は案外お母様のお尻に敷かれていて……そして、結構な親バカでいらしたのね。知りませんでしたわ。


 そんなこんなで、隣国王家との会談場所である観光地に辿り着きました。


 都市部はありながらも、豊かな自然を売りにしている土地と言ったところでしょうか? 程よく外国の方もいて、わたくし達一行だけが目立つということもありません。


 少々目付きの鋭い方があちこちを見回っていらっしゃるようですが、観光地ですし。なにより、これからお父様と会談予定の高貴なお方がいらっしゃるのですもの。それも当然の警戒態勢です。


 お父様の会談中、護衛は絶対に外すことは許さんと言われましたが。危険な場所以外、町中を散策する許可は頂きました。護衛の指示には従うことを約束するなら好きに過ごしてもいいと言われました。


 お父様は、文通相手と交渉するのだと張り切って出掛けて行きました。


 ということで、わたくしも早速町中を散策ですわ♪


 可愛らしい雑貨屋さんを覗いたり、流行っているというお菓子屋さんに行ってみたりと、楽しく過ごしていると――――


「旦那様の会談が終わりました。お嬢様にお話があるとのことです」


 と、お父様からの呼び出し。宿へ戻ると、


「その、だな……サファイラ」


 お父様が真剣なお顔でわたくしへ告げました。


「実は、シュアン・ウェイバー元伯爵令息が生きていたのだ」

「え?」

「本日の交渉相手……わたしが暫く文通をしていた相手なのだが……が、クラウディオ殿下を嵌めたということは話したな?」

「え、ええ。はい」


 驚きで一杯ながら、返事を返します。


「ウェイバー元伯爵令息はクラウディオ殿下がこの国の法に抵触した際、この国の王子殿下に誰何(すいか)されるところへ居合わせ、クラウディオ殿下に身代わりとして置き去りにされたようだ」

「はいぃっ!?」


 色々とあり得ないことだらけのお父様の言葉に、思わず声が裏返ってしまいました。


 まず、ウェイバー様が生きていらっしゃったことへの喜びと驚き。そして、クラウディオ殿下は一体なにをしていたのかっ!? という驚きと、犯罪行為をしていたことに対する怒りと羞恥。


 更には、ウェイバー様を身代わりにし、ご自分だけ国に逃げ帰っていたということへの驚きと、強い不快感。不信感は強い不審感へと変わり、強い怒りが沸いて来ます。


 本当に、本当にクラウディオ殿下が情けなくて嫌になりますわっ!!


 ご自分よりも年下の部下へ、ウェイバー様へ責任を全て押し付けて逃走。更には、死人に口なしとばかりに、ウェイバー様の葬儀をご自分で執り仕切っていらっしゃいましたよねっ!?


 いえ、一旦落ち着きましょう。お父様のお話だけで判断してはいけません。まあ、お父様はおそらく会談で直にウェイバー様が生きていらっしゃったことを確認しておいででしょうけど。


「その、それで、だなサファイラ。お前さえ嫌でなければ、ウェイバー元伯爵令息と……彼を捕虜から拾い上げ、現在の彼の主となっている方とお会いしてみるか?」


 なぜだか困ったようなお顔で、お父様が言い募りました。


「その、お前が……『お嬢さんがもし、男性に苦手意識を持っているのであれば、怖がらせないように女装して向かいますよ?』とのことだ」

「?」


 ちょっと、お父様の仰っている意味がわかりませんわ。


 だって、お父様の会談のお相手は女性。それも、子持ちの高貴なご婦人という話でしたもの。


 それとも……その方は男装の騎士様、だったりするのでしょうか?


 読んでくださり、ありがとうございました。


 パパ公爵「サファイラの屈託の無い笑顔など、何年振りに見たことか……ハッ! 絵の得意な者を呼び、今すぐスケッチをさせるのだっ!!」Σ(*゜Д゜*)ノ


 サファイラ「ちょっとお父様っ、さすがに恥ずかしいですわよっ!」(*>д<)っ


 パパ公爵「なにを言う! お母様にも、お前の笑った可愛らしい顔を見せてやりたいだろう!」( ・`д・´)


 「大体な、お母様は留守番を任されることをかなり不満そうにしていたのだぞ? それを、サファイラが久々に楽しそうな顔で笑っていた、と後で報告だけしてみろ? きっと暫くは『わたくしはお留守番でしたのに、わたくしもサファイラの笑ったお顔を見たかったですわ』とチクチク言い続けられるのだぞ!」( ̄□ ̄;)!!


 サファイラ(お父様って、実はお母様のお尻に敷かれていたのですね)( ̄~ ̄;)


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