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ああ、そうです。お会いできたら、そのお方へ感謝を告げることにしましょうっ!!

 視点変更。


 お母様と一緒に領地へ戻り、外出はできませんが悠々とした療養(・・)生活を送っていると、お父様が領地へ戻られました。


「サファイラ、クラウディオ殿下との婚約は白紙撤回になったぞ!」

「まあ! ありがとうございますお父様」

「いや、長いこと苦労を掛けて、本当にすまなかった」

「いえ……」


 お父様が、直ぐ様クラウディオ殿下との婚約解消に動いてくれてとても嬉しかったのですから。


「では、妻を呼んでくれ。少々長い話になるかもしれん」


 と、お父様は使用人へ言い付けて慌ただしくお母様を呼びに行かれました。


 そして、なにやら長々お話をしたと思えば――――


「サファイラ。実は、隣国の王家と我が公爵家で交易をしようと思っている」


 真剣なお顔で呼び出され、告げられました。隣国は確か……国王陛下が何年も前に少々やらかして、実質的に政治を執り行っているのは王妃殿下ではなかったかしら?


「そうですか」

「ああ。そのことに関し、我が国の陛下や王室には内密で近々会談を行う予定をしている。それでだな、サファイラ」

「はい」

「お前も、隣国に行かないか?」

「え? わたくしも? お父様と一緒に会合へ参加せよ、ということでしょうか?」


 少々怪訝に思いながら、お父様へお聞きします。


「いや、会談への参加ではなく……どちらかというと、気分転換目的だな。場合によっては、お前をそのまま国外の親戚へ預けることもあり得る」

「成る程。わかりました」


 隣国へ旅行ついでに、お父様と一緒に外国の親族へ挨拶をしに行くということですか。場合によっては……というより、わたくしがそのまま外国で暮らすことになりそうですね。


 お母様と長いことお話していたのも、わたくしをどの親族へ預けるかという相談だったのでしょう。


 クラウディオ殿下との婚約は白紙撤回になったので、今までのように外国へ行く為に各種様々で面倒な手続きが不要になり、厳戒な警備体制を敷かなくてもよくなりました。


 まあ、元王太子殿下の元婚約者ということで、どこぞの有象無象に狙われるようなこともあるかもしれませんが……我が家とて、公爵家。婚約が決まってから、今の今までわたくしが無事であるという信頼がありますもの。


 むしろ……どこぞの王宮で益体も無い嫌がらせを受け続けるより、公爵家の護衛に囲まれていた方が身も心も健やかでいられるというもの。特に心配はしていません。


「それで、だな……」


 と、お父様が珍しく歯切れ悪くわたくしを見詰めて言葉を途切れさせました。


「はい、なんでしょうか? お父様」


 もしかして、外国で暮らすことへの心配でしょうか?


「その、だな。実は、お前の顔を拝見したいという高貴なお方がいるのだ」

「・・・それはもしや、お見合いということでしょうか?」


 おそらくは、外国の高貴な方というのはどこかの国の王族。確かに、この国から出るには外国へ嫁ぐことが手っ取り早いかもしれませんね。しかし、婚約を白紙撤回されたわたくしへ、すぐにお見合いを求めて来るお相手、ですか。


 わたくしとて警戒するのです。お父様の歯切れが悪くなるのも、道理かもしれません。


「いや、見合いではない。おそらく、お前の顔を拝見したいとおっしゃっている方は女性だろうからな」

「女性、ですか。外国の、高貴な……遠縁の王族の方でしょうか?」


 我が家も公爵家。一応、過去に他国の王族との婚姻もありますので、数ヶ国の王家の血が入っております。確か、数代程は国内での婚姻を繰り返しているので、縁者とは言っても血は大分遠いと思いますが。


「いや、実はだな……クラウディオ殿下似の男が、外国で指名手配を受けたことは知っているな?」

「ええ、無論です」


 クラウディオ殿下が、王太子位を下ろされることになった原因で、わたくしとの婚約を白紙撤回することへなった喜ばしいことの起因ですもの。


「その……クラウディオ殿下似の男を国際手配した方が、お前のことを大層心配しているらしい」

「え?」


 思わぬお相手に、思わず驚きの声が上がってしまいました。


「あの似顔絵手配をしたのは、さる高貴な子持ちのご婦人という話だ。そして、その方がわたしに内密で手紙を寄越されてな。お前と殿下の婚約解消。及び、お前を国外へ出すことを勧められたのだ」

「そう、でしたか……」


 驚きました。まさか、他国の方にそれ程わたくしのことを気に掛けて頂いていただなんて……


 クラウディオ殿下の婚約者でいる間、家族と傘下の……信頼できる方以外は、わたくしの味方をしてくれる人なんていないと思っていました。


「お前に悪いことをしたと、気に病んでいるそうでな。その方が、お前の元気な姿を見たいと仰っているそうだ。無論、お前が嫌だというなら無理強いはしないとのことだが。どうだ? 一度、その方とお会いしてみてはどうだろうか?」


 少しの心配と期待の入り混じる視線がわたくしへ注がれます。


「はい、是非。わたくしも、お会いしてみたいですわ」


 ああ、どこの誰かはわからないけれど……遠くにいた方が、わたくしの身を案じて動いてくださっていた。そのことを、嬉しく思います。


 そして、いいえ。クラウディオ殿下が国際的に指名手配されたことで、わたくしはクラウディオ殿下の婚約者という立場を辞退することができたのです。なにも、悪いことなどありませんわ。


 まあ、婚約者が務まらなかった女……と、一部では囁かれておりますが。そのような雑音など、些細なこと。婚約者として決まったとき、『自分は浮気をするが、それを咎めるな。されど、王妃としての務めは確りと果たせ』と、傲慢極まりないことを平気で告げて来るような酷い殿方でしたもの。


 おまけに、わたくしやウェイバー様が嫌がらせを受けているのに気付かないのか……さもなくば、嫌がらせをされていても知らぬ振りをして黙認しているような、わたくしや部下の身を守ってはくださらない方でしたもの。


 むしろ、キッパリと縁切りできて嬉しいくらいですわ♪


 ああ、そうです。お会いできたら、そのお方へ感謝を告げることにしましょうっ!!


 と、お父様の国外視察旅行(・・・・)に急遽わたくしも付いて行くことが決まりました。


 慌ただしく準備をして――――呆気無く、国を出ることができました。


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 すみません、めっちゃ夏バテです。_(¦3」∠)_

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