フハハハハハハハハハっ!! 我が本気を見たいなど片腹痛いわ!
視点変更。
「ぅう~、終わらない……」
と、書類の山脈に心折れ掛けている声を上げるのはライカ。
「せっかくみんないるのに……これじゃあ、遊ぶ暇もない……」
あらあら、ツンデレぷにショタったらここ数日は甘えん坊さんなんだからっ☆よし、その弱気デレな可愛さに免じて――――
「わかりました。では、ライカ兄上。気分転換を兼ねて、少し出掛けませんか?」
「え? いいのっ!?」
「ええ、どのみち農場の視察は行かなければいけませんし」
「視、察……なんだ……」
パァっ! と輝いた顔が、萎れたようにしょんぼりと俯く。
「はい。では、お出掛けの準備が済み次第視察へ向かいましょうか」
「……うん。まあ、視察だってお出掛けの一環だもんね。シエロとネロと一緒にお出掛けなのは変わらないし」
「え~っと、ライカ兄上。馬車の中でカードゲームでもします?」
「うん!」
気を遣った蒼の提案に、満面の笑みで頷くライカ。
「ボードゲームは、駒とか失くしそうだからやめておきましょう」
「わかった!」
「お菓子と軽食と飲み物、食べ物を用意させましょうか」
色々と試作品やレシピも用意しなきゃ。
「わぁ! ピクニックみたいだね♪僕、準備して来る!」
と、ワクテカな表情でライカは走り去って行った。子供らしくて実にいいんだけど。
「まあ、今日。というか、今直ぐに行くとは言ってないんですけどね? アストレイヤ様、お出掛けの許可をください」
「いいぞ。どうせだ、今から行って来るといい」
「いいんですか? 警備上の問題などは?」
「むしろ、突発的な行動よりも事前にスケジュールを組んで大仰にする方が、襲撃や事故などを仕掛け易いことだろう。集中力も切れているようだしな。無理をしても効率が落ちる。気分転換も必要だ。それに、子供は外で遊ぶことも大事だからな。行って来なさい。ライカを頼む」
「わかりました。では、行って来ます」
ということで、ゲリラ視察に出~発!
数時間後。馬車の停留所で合流すると、
「わ、なんかすごい荷物だね」
ド~ンと用意した荷物に驚いた顔をしているライカ。
「や、食べ物や飲み物用意するっつってたけど……これはさすがに多くね?」
呆れ顔であたしを見やる蒼。
「視察ですから。一応、こういう食べ物を作ってほしいというのを伝える為に、試食品としてサンプルを用意しました。どうせ行くなら、持って行こうと思いまして。道中、感想を聞かせてください」
「え? なに? もう、保存食の試作品作らせてたん?」
「ふっ、だって美味しいものは早く食べたいじゃないですか♪試作品を考案すると、一番に食べられますからね!」
ふふんと胸を張ると、
「ふふっ、そうだね。ネロは意外と食いしん坊さんなんだ?」
クスリとライカが笑う。
「ぁ~……まあ、ネロは結構食べるからなー」
「そうなの?」
「美味しいものは別腹です! さあ、早く行かないと日が暮れちゃいますよ」
「そうだね。それじゃあ、行こうか!」
と、馬車に揺られてライカ農場(仮)に出発。
「……えっと、ネロ?」
「はい、なんですか?」
「酔わねーの?」
「ネロ様、気持ち悪くなってしまいませんか?」
「まあ、これくらいの揺れなら平気です」
それに、馬車が何度も行き交うようになったお蔭か以前よりも揺れが小さいし。
「カードゲーム、しないの?」
呆れ気味の蒼に、心配そうなグレン。なんだか不満げなライカ。
「ああ、片手間でよければ参加しますよ?」
手許の資料から顔を上げ、
「なにをするか決めてからカードを配ってください」
チラリとトランプを一瞥。
「ネロ様。このようなときくらい、お休みされては如何ですか?」
こちらも不服そうな声を上げるシュアン。
「お気になさらず。というか……」
「なんでしょうか? ネロ様」
「ぶっちゃけ、片手間でも皆さんに勝つ自信があるので。わたしを本気にさせたいのなら、せめて五回くらいは負かせてみてください」
ニヤリと笑って言えば、
「おーし、絶対ぇ負かしてやる! 吠え面掻かせてゲームに専念させてやるぜ! やるぞライカ兄上、グレン!」
「はい、シエロ様!」
「ネロは、片手間で僕に勝てるつもりなの?」
ムッとした顔で挑発に乗る三人。
「シュアン、お前も参加しろ! 人数が多い方が勝てる確率が上がる!」
「え? あの、シエロ王子? どちらかというと、わたしも資料の読み込みをしたいのですが?」
「いいから、参加しろ! いいな!」
「少々横暴ではありませんか?」
「ネロを休ませたいんだろ?」
「はぁ……では、一回だけですよ」
仕方なさそうに落ちた溜め息に、猛然とカードを切って配り始める蒼。
「それで、なにをするの?」
「ぁ~、ここはど定番のババ抜きだな」
「いいでしょう。それじゃあ、順番が回って来たら声を掛けてください」
配られたカードのペアになった札をポイポイと出して行く。うん、持ち札にジョーカーは無し。とりあえず、誰が持っていそうか顔を見回す。
さて、この中で一番手強そうなのは……シュアンと言ったところかしら? まあ、運系のゲームは幾ら頭良くても、手札が良くなければ即行負けることもあるけどね? と、カードを伏せて置き、また手許の資料に目を移す。
「マジで片手間かよ! 顔を上げすらしない気かっ!?」
「フハハハハハハハハハっ!! 我が本気を見たいなど片腹痛いわ! まずは、適当に相手している段階で負かせてみよ! 話はそれからというものよ!」
な~んて、高笑いを上げて煽ってみる。
「くっ、僕達じゃネロの相手にならないとでも言うつもりっ!?」
「ふっ、先程からそう言うておろうが! まずは一勝負。様子見よ。我が最下位になれば、負けを認めてやってもよいぞ?」
「シエロ様っ!? ネロ様がすっごく悪役みたいなこと言ってますよっ!?」
「態度だけ悪ノリしてやがる」
「……シエロ王子が、ネロ様はふざけたお方だと仰っていた意味がわかりました」
「ま、ツッコミ入れたいなら入れろ。多分、今はふざけた適当な返事しか返って来ないぞ?」
と、お菓子や軽食を摘みながら、ワイワイ騒いで――――
「また、俺が最下位……」
「っ!? また負けたっ!!」
「……なぜ、相手を見もせずにこうも勝てるのでしょうか……」
「クッソっ!? 次は絶対ぇ負かす!」
「ふっ、負け犬共の負け惜しみが聞こえよるわ!」
片手間で一度も最下位になることなく、ライカ農場(仮)に到着した。
「さて、では視察へ向かいましょうか?」
「チッ……帰りは絶対ぇ負かす!」
「ふふっ、楽しみにしてますよ?」
と、みんなの悔しげに歪む顔を気分良く見回して、視察を開始。
ライカの案内で農場や牧場を見て回ると、食糧や油の増産には問題無さそう。ざっと見た感じだから、次来るときはもっとよく見て回らなきゃだけど。
そして、生産予定の保存食の候補として運んで来た多めの荷物。野菜の酢漬け、ジャム、ビスコッティなどを職員へ配る。
後で食事として出して、味の感想や意見を聞きたいとレポート提出も依頼する。
「試作品として食料品の差し入れか……ネロはよく考えているね」
「美味しければ自分達で作ってみたいと思うでしょうし、これをきっかけに料理人を目指したいと考える子も出て来るかもしれません。ついでに、ピクルスやジャムの応用レシピもガンガン考えてほしいところですね」
ぼそりと蒼が呟く声に、
ぼそりと同意するシュアン。
「生憎、試作を作るのに時間が無かったので持って来ていないのですが、ドライフルーツや果実酒、果実酢なども作ってみてほしいですね」
「ああ、ドライフルーツはいいね。長持ちするし、携帯食代わりにもなる」
うんうんと頷くライカ。
突発的な視察なのであまり長居はせず、見て回って言いたいことを言ってそのままとんぼ返り。
「さあ、勝負だっ!?」
「次こそは、ネロに本気を出させてみせるっ!?」
「俺も最下位ばかりは嫌です!」
「……なぜ、またわたしの分の手札が配られているのですか」
「フハハハハハハハハハっ!! よかろう、また吠え面を掻くがいい! 負け犬共め!」
な~んてふざけながら、片手間にカードゲームに興じた。
美少年達の悔しげに歪むお顔、頂きましたっ♪ ありがとうございますっ!!
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読んでくださり、ありがとうございました。
シエロ(蒼)「さあ、勝負だっ!?」(*`Д´)ノ!!
ライカ「次こそは、ネロに本気を出させてみせるっ!?」(; ・`д・´)
グレン「俺も、最下位ばかりは嫌ですっ!」ヾ(*`⌒´*)ノ
シュアン「……なぜ、またわたしの分の手札が配られているのですか」ε-(´⌒`。)ハァ。。
ネロ(茜)「フハハハハハハハハハっ!! よかろう、また吠え面を掻くがいい! 負け犬共め!」Ψ(`∀´)Ψフハハハハっ!!