いやんっ、ネロたんってばみんなのアイドルっ☆でもでも、一生手ぇ洗わないなんてのはめっちゃばっちいからやめてね?
ふっふ~ん♪
シュアンが寝ている間に――――
「あんまりシュアンを虐めないでくださいね? この側妃宮の中では年少の方なので、弟だと思って優しくしてあげてください」
と、使用人一人ずつにネロたんの必殺エンジェリックスマイル♡で釘を刺すがてら、手を握るときにお菓子を渡して……情報収集が得意な人には、こっそりと手紙を忍ばせておいた。『隣国クラウディオ殿下の婚約者の情報を集めるべし』という指令書だ。
まあ、別にアストレイヤ様にバレても支障は無いけど、クラウディオの婚約者ちゃんをどうこうするという方針が決定するまでは、伏せておいた方がよさそうだし?
アストレイヤ様の部下のいる前では、こっそりしておくに限る。
なにげに、一人一人に釘を刺すのは時間が掛かると思っていたんだけど……アレだわ。さっすがネロリン信者。あたしが声を掛け始めると、どこから現れたのか、暇な? 使用人達が一斉に列を成して、さながら握手会の様相を呈していた。
「いつもありがとうございます」
にこりと微笑めば、「ありがたき幸せ!」と、感激のあまり泣き出す人まで……いやんっ、ネロたんってばみんなのアイドルっ☆でもでも、一生手ぇ洗わないなんてのはめっちゃばっちいからやめてね?
「衛生観念は大事ですから、手洗いうがいは毎日しましょうね?」
と、言っておいた。
「そうですっ、ばっちい奴はネロ様とネリー様に近付くのは禁止ですっ!!」
なぜか、ここぞとばかりにどや顔をするミリーシャ。
「無論です。不潔な方は強制排除させますので、心しておくように」
にこにこと同意する侍女長に、騎士達がビクリと肩を震わせた。侍女が騎士を強制排除できちゃうんだ……うちの侍女強いなー。
そして、勤務時間中だった人には時間をずらして釘を刺した……というか、みんな喜んで釘を刺されに? 来てくれた。一部、アストレイヤ様の部下の中にはあたしを怖がっている人もいたみたいだけど。
それは仕方ないかしら? ぶっちゃけ、ネロたんの実年齢は七歳。七つの子供が、これだけ政治介入してたら、そりゃ恐ろしいと思う人がいるのは当然だろう。
腫れ物扱いなら、排除に動かれないだけマシというもの。人は、自分が理解できないものに対して警戒し、恐れ……迫害したりするものねー? 他人より優れたことがある、というのも考えもの。
妬み、嫉み、僻み、他人のやっかみなんかは特に面倒だ。そういう面倒を少しでも減らすには、なんだかんだ恩を売っておくのが一番なのよねー。恩を感じている相手には、普通の感性持ってる人ならそうそう酷いことはできないもの。
ま、それも絶対じゃないんだけど。
目先の自己利益をなにより優先しちゃう人なんかには、恩義や借りなんてほぼ無意味だし? 他人の足を引っ張るのがなにより好きだ! とかいう益体も無いことを生き甲斐にしているようなヤバい人だっているし? そもそもが誰かを助けること自体が余計なお世話や出しゃばりだって、嫌われちゃったりすることもある。
……って、そんなことはどうでもいいわね!
早速報告が上がって来ましたよ。ネロリン信者の仕事が早いったらないわ!
とりあえず、城内でも調べられた内容報告。
まず、クラウディオの現婚約者の名前は……サファイラちゃんね? 公爵家のお嬢様。クラウディオより四つ年下で、現在十五歳。婚約は二年前の十三歳のときに結ばれた。何事も無ければ、三年後の十八歳で結婚して王太子妃になる予定だった、と。
うん。ある意味、性犯罪者or人身売買疑惑の犯罪者として顔が売れちゃうという大スキャンダル(まあ、性犯罪者の方はほぼ事実だけど)起こしちゃったから、クラウディオが王太子になるのはもう無理ね!
それにしても・・・うん。クラウディオの婚約者のサファイラちゃんには同情しかないわー。多感なお年頃である思春期を、あんな手の早い両刀野郎の婚約者として過ごさざるを得なかっただなんて。本っ当、可哀想過ぎるわ!
まあ、あたしみたいに腐女子覚醒しちゃってたら、BL的な男同士の絡み♡を身近で拝観できる環境なんてある意味パラダイスっ♪なんだけど。普通のお嬢さんに、男色疑惑? もしくは、両刀のモテモテ遊び人の相手はかなりキツいんじゃないかしら?
これはもう、なんていうか・・・思春期の女の子がこんなん間近で何年も無理矢理見せられて巻き込まれて、下手するとクラウディオの愛人(全員男)に嫉妬されて、嫌がらせや八つ当たりやらなにやらされちゃったら、色々歪んじゃっても仕方ないわよねー。なんだろ? クラウディオの愛人(男)とは限らず、男性不信になっても全然不思議じゃないっていうか?
一応? 婚約者ちゃんが年下だから、手ぇ出さないよう、妊娠の心配が無い他の男で遊んでた……って言い分も通るっちゃ通るけど、何分クラウディオのやってることがクズ過ぎだし。なんだったら、まだ成人してない部下であるシュアンの前で、男同士の愁嘆場繰り広げちゃってるから。特段綺麗に遊んでるワケでもないわよね?
なんていうか……ガチのクズでクソ野郎だなっ!! 両刀の遊び人リア充、迷惑掛けた関係各位に五体投地の全力土下座で頭踏み躙られながら詫び入れたあと爆ぜろっ!!!!
爆発四散して獄門で晒されろっ!!
ふぅ……駄目ね。浮気三昧クソ野郎のことになると、思わず熱くなっちゃうわ。数多読んで来たBL作品の、ドアマット的な不憫受けの恨み辛みが思わず頭を過ぎっちゃうんだもの。仕方ないわね!
まあ、それはおいといて。
クラウディオの婚約者ちゃんはサファイラなら……サフィーちゃん? ん~……でもでも、侍女長のソフィーネさん(愛称はソフィー)とちょい被るわね? フィーラちゃん、ってとこかしら?
それじゃあ、フィーラちゃんの報告が上がって来るのを待つことにしましょう。
その間に――――アーリーたんの受け入れ体制を整えて、シュアンのお見舞いでも行きますか。
読んでくださり、ありがとうございました。