怖い怖い怖いっ! そして闇が深いっ!? ……でも、うん。まともな女の子がそんな環境に置かれたら普通に病むかもなぁ。
『? 壊れてなくて、ってどういう意味だ?』
『ん? ほら、前に話したと思うけど。婚約者ちゃんは、未来の隣国王妃サマなワケよ』
『ああ、それで?』
『クラウディオルートだと、クラウディオと一緒になってシエロたんをペット扱いして甚振る感じの王妃様なワケですよ』
『忘れてたっ!? って、ちょっと待てっ!? なんでそんなヤバい女を助けるんだよっ!?』
『ん~……なんて言えばいいかしら? 例えばの話よ? いいとこの箱入りのお嬢さんがある日突然、男と遊び歩いているクラウディオの婚約者になるワケよ』
『お、おう……』
『もしくは、幼い頃から婚約していた王子サマがある日突然、男遊びを始めちゃいました。しかも、男同士の愁嘆場が繰り広げられちゃう程、遊んでいるワケ』
『ぅっわ……』
蒼の表情が嫌悪に満ちる。
『これが、普通の女の子じゃなくてあたしみたいな腐女子なら……鼻血出さないよう、傍から愉しく男同士の愁嘆場を眺めていられるけど。そうじゃなかったら? 男に負けた! と、女のプライドずたずたになるんじゃないかしら?』
『……なんだろ、めっちゃ可哀想ンなって来た』
『まあ、クラウディオが上手く遊んでて、婚約者ちゃんに一切悟らせてない可能性もあるっちゃあるんだけどねー? でもさ、男同士の愁嘆場が繰り広げられちゃうくらいにモテモテなクラウディオの婚約者ちゃんは、果たしてクラウディオの愛人達(男)に嫉妬されずに済むでしょうか? 護衛騎士や使用人、文官達などなど。手近なとこで遊んでいたクラウディオ。婚約者ちゃんが、お城に用事があるときに、嫉妬や嫌がらせを受けていないということがあるのかしら? って、思っちゃって』
クラウディオの男遊びに気付いても、気付かなくても……ある意味地獄でしょ。気付いていれば、女としてのプライドはずたずた。気付いてなくても、城の、若い男に意味不明で嫌われている。地獄の種類が変わるだけ。そして、いずれは絶対に気付く。
『なんかもっと悲惨さが漂って来たっ!?』
『んで、更に言うと、王太子の婚約者って立場でその地位を狙うおおよその貴族令嬢を敵に回してるようなもんでしょ? 結婚するまで、ある意味そんな針の筵状態で、結婚してからもそれが続くとしたら? 城に味方がいない状態で、気が休まることがなくて。いつかどこかの時点で婚約者ちゃんがぶっ壊れちゃったり思いっ切り歪んじゃったりして・・・それで将来、シエロたんをペット扱いするようになっちゃうんじゃないかしら? と、お姉ちゃんは思い至ったワケなのです。今ならまだ、間に合うんじゃないかな~? って』
クラウディオのせいで、周囲が敵だらけの四面楚歌状態になると言っても過言じゃないわよねー。なんだろ? 現婚約者ちゃんが将来王妃になると、クラウディオの愛人(男)を甚振るのが趣味になっちゃう感じ? クラウディオの部下という名の愛人に妬まれて、やっかまれて、やたら敵視されたり、蔑ろにされたり、マウント取られたりされることに対する鬱憤を晴らすって言うか……人間不信まっしぐらになっちゃう状況で、そういう憂さ晴らしがなきゃ多分やってられなかったのよねー。
そして、その分の付けが全てシュアンに圧し掛かって行くことになる、と。
う~ん……こっちはおおよそレーゲンのせいで不幸になる人が多いけど、あっちはおおよそクラウディオのせいで不幸になる人が多いって感じかしら?
本っ当、碌なもんじゃないわね! 浮気三昧の両刀リア充クソ野郎は大爆発しろっ!! 弄んだ人達に死ぬ気で詫びろっ!!
『怖い怖い怖いっ! そして闇が深いっ!? ……でも、うん。まともな女の子がそんな環境に置かれたら普通に病むかもなぁ。ねーちゃんがクラウディオの結婚予定相手を気にする理由は納得したわ』
首を振り、恐怖に引き攣った顔をする蒼。
『というワケで、婚約者ちゃんが手遅れじゃなかったらどうにかしてそういう場所から助けてあげたいなぁって思ったの。ほら? 一応、クラウディオの自業自得だと言え? 追い詰めたっていうか、王太子から引き摺り下ろした責任みたいな?』
『わかった。で、なんでシュアンが寝てる間に? その婚約者さんとは、多分知り合いだろ? 直接聞いた方が早くね?』
『え? だって、婚約者ちゃんが既にぶっ壊れちゃってたら手を差し伸べようとは思わないもの。その前段階としての調査よ? シュアンに知らせる必要ある? 確実に助ける、って決定してからなら教えてもいいけど……状況次第では婚約者ちゃんを見捨てるのに?』
『……わかった。現時点では、シュアンには知らせない。但し、確実に助けることが決定したら、シュアンにも教えてやれよ?』
『勿論♪』
『で、どうやって調べんの?』
『そこは、ネロリン信者の調査力に期待ってとこかしら?』
『そうかよ。んで、もし助けるってなったら、どうやって助けるんだ? そこを考えてないじゃ話にならないぜ?』
『そこはほら? 婚約者ちゃんのお父さんを唆す感じ? まともに娘を可愛がってる親なら、話に乗る筈よ? まあ、娘を駒としか思っていないというタイプだとしても、やりようは幾らかあるでしょ。娘さんを留学させた方がいいですよ、とか? 他国の修道院に預けては如何ですか、とか? 行儀見習いに出してはどうか、とか? 兎に角、向こうの国を離れちゃえばこっちのもんよ!』
『仮にも、王太子の婚約者だった子だろ? そう簡単に行くかよ?』
『国際的に犯罪者かもしれないと疑われ、王太子から下ろされた王子の婚約者よ? 扱いに困るご令嬢だとは思わない?』
『・・・まあ、うん。なんだろ? 今更ながらに罪悪感がめっちゃ凄いんだけどっ!?』
『でしょ? というワケで、クラウディオの婚約者ちゃん救出作戦! 開始よ♪シュアンが寝てる間にね?』
『・・・もしかしたら、見捨てるかもしれねぇから?』
『うん。ほら? さすがに、クラウディオと同系統の嗜虐趣味全開のお嬢様なら、そういう状況から自分でどうにかできちゃいそうなバイタリティーありそうじゃない』
あと、蒼やアーリーたんに加えて、シュアンを害する可能性がある人物を近付けるワケには行かないし?
『まあ、確かになぁ……そっか。クラウディオとバリバリ趣味が合うやべぇ感じのイっちゃってるお嬢様って線も、あるのか……怖っ!』
『万が一、婚約者ちゃんが腐女子で、クラウディオの美男子だらけのハーレムにキャッキャウフフしてる可能性も無きにしも非ず、だけどねー?』
『や、それは無いだろ。つか、腐女子って概念が存在するのかよ?』
『そう言えばそうねぇ……ってことはBLを拝観するのが好きな人、つまり腐女子や腐男子、貴腐人、腐兄という概念をこの世界に布教するのがこのあたしの使命ということねっ!! 俄然やる気出て来たわっ!!』
『マジやめろ』
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読んでくださり、ありがとうございました。
茜「城に味方がいない状態で、気が休まることがなくて。いつかどこかの時点で婚約者ちゃんがぶっ壊れちゃったり思いっ切り歪んじゃったりして・・・それで将来、シエロたんをペット扱いするようになっちゃうんじゃないかしら?」σ(´・ε・`*)
蒼「怖い怖い怖いっ! そして闇が深いっ!?」ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ