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結論としては、アレだ。自分の精神衛生……心身の健康を損なったり、害するような相手とはさっさと縁切りすべし!


「……もう、こうやって話すこともできないのね」


 しんみりとしたような声が落ちる。


 ふむ。今更ながらに、もっとあたしと話したい、と。


「わたし達とあなたは、親子にはなれませんでした。離縁すれば、もう他人です」

「ええ、そうね……」


 本当に今更なんだけどねー?


「でも、他人でもなれる関係はあるんですよ?」

「え?」

それ(・・)は、年齢も性別も、身分も、国籍、人種すら越えてなれるものです」

「身分も、国も?」

「ええ。なんでしたら、相手が人間である必要すらない」

「人間じゃなくても、なれるもの?」

「はい。一切の赤の他人からでも、仮令(たとえ)敵同士であろうとも、友人(・・)にはなれます」

「友、人……お前と、わたくしが?」


 ぱちぱちと瞬く紫紺。


「まあ、あなたがどうしても寂しいと言うのであれば、お友達になってあげてもいいですよ? あなた、性格悪いですし。友達とか全くいなさそうですからね? ミレンナ」

「本当に生意気ね? でも、いいわ。お前とお友達になってあげる。どうせ、お前もお友達なんて一人もいないだろうから」


 ふっ、なにせネロたんは離宮で何年もぼっちしてないものね!


「しょうがないですねぇ? では、現在のごたごたが落ち着いたら女子会でもしましょうか。まあ、遅くても十年後くらいには」

「お前は男でしょうに。なにが女子会よ? でもまあ、それくらいなら……少しくらい待っていてやらないこともないわ」


 呆れ混じりの表情に照れが見える。


「ふふっ、素直じゃありませんわね? それに、今はネリーちゃんなので、わたくしの心は乙女のつもりですわ♪」


 というか、乙女は乙女でも腐女子だけどね!


「・・・お前がそんなに愉快な子だったとは思わなかったわ。わたくしのせい、かしら?」


 じっとりとした視線が、戸惑いを含む。


「さあ? どうでしょう? では、また会いましょうね? ミレンナ」

「そうね。お前がわたくしをもてなすなら、招かれてあげる。最上級の物を用意することね。だから、それまでせいぜい元気でいなさい。……どうせお前には、手紙をやり取りする相手もいないだろうから、わたくしが出してやってもよくってよ!」

「え~? ミレンナの実家とはやり取りしたくないんですけど?」

「……そう。それならいいわよ」


 ぷいっと寂しそうな顔でそっぽを向くミレンナ。ヤだ、なんかちょっと可愛いかも。さっすが、ネリーちゃんが大きくなったバージョンのお顔だけあるわね!


「でも、そうですね。実は離宮には、わたしと同じ年の侍女見習いのリーちゃんという可愛い女の子がいたりするワケですよ。侍女見習いのリーちゃん宛に、お友達のミリィちゃんからお手紙が届いてもいいんじゃないでしょうか?」

ミリィ(・・・)ちゃん? なんだか安っぽい、どこにでもいそうな名前ね? まあ、いいわ。そのうち、リー(・・)宛にミリィ(・・・)からお手紙が届くかもしれないわね。返事、絶対に出させなさいよ」

「リーちゃんも、あれこれと忙しい身ではあるんですけどねぇ? 余裕があるときになら、返事を出せるかもしれないですね」

「そう。その……リーは、好きなお菓子とか、あるのかしら?」


 もじもじと切り出すミレンナ。ツンツンしながらも、結構なデレっ振りを混ぜて来るとは。こやつ、なかなかできおるな!


「ふふっ、リーちゃんもまだまだお子様ですからねー? お菓子は普通に好きですよ。お砂糖たっぷりの甘過ぎるお菓子より、甘さ控えめなお菓子が好きなようですね。それと、どこぞのおうちから贈られて来ても困りますが、匿名の差し入れなら有難く頂きましょう。ああ、わたし達の事業にも、匿名の寄付はいつでも大歓迎ですよ?」

「まあ、図々しい。でも、寄付や慈善事業は貴族の義務だもの。気が向いたら、貧しい者達へ施してあげるわ」

「ふふっ、そうですか。どこぞのおうちには、わたし達の事業には一切関わらせるつもりはありませんが。貴族がお忍びのお客さんとして品物を買うのは止められませんからね」

「品質が良ければ、個人的に買ってやらないこともないわ」

「ふふっ、楽しみにしていますよ。それではご機嫌よう、ミレンナ」


 と、ミレンナとの面会は終了。


 鉄格子の部屋を出て歩いていると――――


「……宜しいのですか? ネレイシア姫様」


 複雑そうな表情の女性騎士が問い掛けた。


「なにがですか?」

「本気で、側妃様とご友人になられるおつもりで?」

「ええ。ミレンナが思ったより話せる相手でよかったです。どの道、ミレンナの侯爵家にはクソ親父と手を切ってもらう予定でしたからね。離縁については……もっとごねるかと思っていたのですが、すんなり飲んで頂けて助かりました」

「そう、ですか……」


 にこりと笑顔で返したら、なんだかドン引きしたような顔をされた。解せぬ。


 まあ、気を取り直して。


 そりゃ婚約期間を含めて八年以上もクソ野郎に付き合うのは非常に疲れることだろう。一応、自分から関わりに行っているとは言え、ね?


 なんだか、頭おかしいやべぇヒス女から、傲慢ツンデレ女にクラスチェンジした感じかしら? 丸くなったっぽいのは、いい変化だと思う。


 女性が子供を産める期間というのは限られているワケだし。なんだったら、初産が双子で、しかも難産だったミレンナは本当に死に掛けたのかもしれない。更に言うなら、後遺症が残っている可能性だってある。最悪、再びの妊娠が難しいということだってあり得る。元から気性が烈しい人だったから判り難いかもしれないけど、ホルモンバランスが崩れての情緒不安定というのもあっただろう。


 こういう、女性が不安定なときってのは精神的に支えてくれる人がいればまだマシだと思うんだけど・・・まあ、相手がクズ中のクズだし。そんなことは期待するだけ無駄。むしろ、ミレンナの神経を逆撫でするばかりだっただろう。


 結論としては、アレだ。自分の精神衛生……心身の健康を損なったり、害するような相手とはさっさと縁切りすべし! 仮令(たとえ)相手を好きになってしまったとして、相手との良い未来を思い描けないなら、とっととその恋心とはおさらばした方がいい。身も心もずたぼろになってまで、自分の周囲の人達に心配や迷惑を掛けてまでしがみ付くことはしない方がいい。


 だって、自分も好きになった相手も傷付けて、傷付けられて、憎んで、恨んで、嫌な思いだけが残るなんて悲しいじゃない。


 相手を愛し、自分のことも愛して大切にして。自分の気持ちを押し付けるだけじゃなくて、相手の意志や気持ちも尊重して。相手にも自分の意志を尊重してもらって。その上で相手の幸せを考えてあげなきゃ。


 自分の気持ちや慾望のみを優先し、相手に押し付ける関係は、どの道破綻する。


 好きになった人と二人での幸せな未来を望むなら、恋は愛に育てて行かなきゃ。


 そして、愛になったら……ときには、相手の為に自ら身を引くことだってある。


 レーゲンもミレンナも、自分の気持ちのみを優先して、好きになった相手のことを一切考えていなかったから、こんな面倒くさい状況になったのよねー?


 そもそもの話、綺麗に終われる恋愛なんてファンタジーの産物。物語の中にしか存在しない。どちらか片方には綺麗な思い出になったとしても、もう片方は綺麗なだけの思い出じゃない……かもしれないし? そうじゃなかったら、叶わなかった片恋を美化してるのよ。ま、あたしの私見だけど。


 とりあえず、アレだ。相手のことを想うって意味での理性ってすっごく大事ね! 相手の意志を確認しない囲い込み、全然良くない!


 あたしはいいの! だってアーリーたんやシュアンへの囲い込みも、全部保護だから! そう、美形が傍で観られるヒャッハーっ!! とか、ちょっと……いや、めっちゃ思ってるけど! でも、放置すると絶対不幸になる系の二人なんだもん。意志確認なんかしてたら、絶対間に合わなかったでしょ?


 それに、他人に恨まれて憎まれる覚悟なんてとっくに持っているし。


 な~んて思いながら、一仕事終えたぜ! な気分で馬車へ乗ると・・・


「・・・ネロ王子、わたしを嵌めましたね? どこまでがあなたの計算ですか?」


 読んでくださり、ありがとうございました。


 ネロ(茜)「しょうがないですねぇ? では、現在のごたごたが落ち着いたら女子会でもしましょうか。まあ、遅くても十年後くらいには」ꉂ(ˊᗜˋ*)


 ミレンナ(母)「お前は男でしょうに。なにが女子会よ?」 (꒪꒫꒪)


 「でもまあ、それくらいなら……少しくらい待っていてやらないこともないわ」゜+。:.(⸝⸝º ^ º⸝⸝ ).:。+゜


 ネロ「ふふっ、素直じゃありませんわね? それに、今はネリーちゃんなので、わたくしの心は乙女のつもりですわ♪」ζ*'ヮ')ζ

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミレンナ様の特大のデレいただきました。 あーもう、もったいない。 クズに引っかからなければ誰かがこのかわいい生き物を堪能しただろうに… でも、ネリー様じゃなければこのデレを引き出せなかった…
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