《メージェント》の日常:休日の過ごし方 (その1)
日曜日になった。
三期生は、休みである。
(うーん、目まぐるしかったなぁ)
そう私は思う。
《メージェント》に所属が決まってから、仕事まで……
とにかく忙しかった、という感じだ。
「今日は、気晴らしに出掛けたらどうだ」
父が、そう提案してくれた。
「お父さんは?」
私が聞くと、父は苦笑いをする。
「ちょっと仕事が忙しくてな。今、手が離せないんだ」
そういえば、家でもご飯以外はずっと部屋の方へ居る。
フリーランスの薬剤師としてやっている父は、様々な会社や病院と連絡やらしている。
仕方がない、な。
「じゃあ、そうするね」
「気を付けるんだぞ」
私は、寮のエントランスの所へ出る。
出掛ける、としたもののどうしようか。
「……あれ、翠子姉ちゃん?」
この声は、ベベロだ。
「どっかに出掛けるんかい」
「うん、そうだけど……何処へ行こうか決まってなくて」
そう返すと、ベベロは何か言いたそうにしている。
「どうかした?」
「あんな、あんな……一緒に行って欲しい所があってな、良かったらって話なんよ」
「いいよ、行こっか」
ベベロは、笑顔で頷いた。
▫▫▫
ちなみに、外出に関しての制限は特に無いらしい。
……が、万が一の為に『通信機』の携帯が必須となっている。
これも法令で決まっているらしい。
▫▫▫
寮を出てから、10分。
「ここなんやけどなー」
連れて来られたのは、ゲームセンターだ。
「へえ、なんでまたゲームセンターに……」
中へ入っていく。
そそくさと奥へ行くと、プリクラコーナーに来た。
「あんな、これ興味があったんやけど……なかなか踏み入れなくて」
「どうして、私と?」
そう聞くと、ベベロは顔を赤らめた。
「姉ちゃんと、仲良くなりたい……から」
こういう所は、まだ歳相応に見える。
断る理由は無い。むしろ、そう思ってくれているなら―――
「じゃあ、撮ってみようか!」
私がそう言うと、ベベロは笑顔で頷く。
▫▫▫
「ふわぁぁ!」
初めて撮ったプリクラを見て、ベベロは嬉しそうにする。
「はしゃいでる所、可愛かったよ。ベベロちゃん」
「ふ、ふえ?か、可愛い、やて?」
ベベロは顔を真っ赤に染めたかと思うと、頭から煙が出てきて周りが暑くなる。
(……マズイ!照れゲージがキャパオーバーになると、ヒートアップするっけ!)
昨日、城川先輩から聞いたのを思い出した。
急いで、手からかなり弱めに水を出して頭にかける。
「ふにゅ」
とりあえず元に、戻ったようだ。
▪▪▪
ゲームセンターを出た。
「なあ、姉ちゃん。今度……また、一緒に出掛けてもええ?」
ベベロが聞く。
「もちろん、いいよっ!」
「えへへ」
ベベロは笑顔を見せる。
(……意外と、こういう友達もいいな)
と、私は思った。