《メージェント》の日常:顔合わせの夕食会と……
三期生が食堂へ赴くと、既に二期生の人が席に座っていた。
汐莉と雷都は、後から来ると聞いている。
「あら、あなた方が三期生の皆様ね。ひとまず、席に座っていただいていいかしら。料理はもうすぐ出来上がると思いますから」
黒髪の女性が声をかける。
私たち、三期生はネームプレートが置いてある席に座る。
「……それでは、料理が出てくるまで自己紹介としましょうか。私は、二期生で組まれているVer.205の隊長である、八ヶ家詩乃と言いますわ」
詩乃が言う。
「僕は、那波智利と言います。副隊長を任されています」
「わ、私は、新近……まい、です」
「まい姉、自己紹介出来たね。……と、私は新近めいと言います。見ての通り、うちらは双子ですー」
三期生の私たちの自己紹介もする。
「よろしくね、皆さん」
詩乃がそう言うと、料理が運ばれてくる。
「三期生の隊長殿、雷都殿が来るまで待ちましょうか」
智利が言う。
「そうね、智利君」
「……そういや、塩小路さんと城川さんの捕まえたヤツ居るじゃん」
めいが私と先輩に聞く。
「は……はい」
「アイツ、まーた捕まったのねって思ってさ」
呆れたように、めいが言う。
「……野々羽君、私たちの、同級生……『重力無視』の突然変異持っている。それ犯罪に使っていたの、私たちが前に、捕まえた事があって」
まいが説明する。
「なるほど、通りであんな不自然な壁走りが出来た訳か」
先輩がそう返す。
「待たせたな」
その時、汐莉と雷都が食堂へ入ってきた。
「……全員、揃っているね。それじゃあ、食べましょうか」
▫▫▫
食事会が始まった。
皆、食事を取っていく。
「汐莉、久しぶりの仲間……どう?」
詩乃が汐莉に囁く。
「まあ、ね。みんなには無理しないで欲しいのだけ、願ってるけど」
汐莉はそう返す。
「汐莉の方が無理しそうで怖いわ。あの件みたいに……」
「こーら、これ以上は言っちゃ駄目よ」
汐莉は詩乃の頬をつねる。
「ふふ、相変わらずね……あの話になると」
「仕方がない事よ、それは。ほら、料理が冷めないうちに食べちゃいましょ」
▪▪▪
食事会が終わった。
「あの、片付け手伝います」
私は食堂に残って、料理長に話す。
「塩小路さん、と言ったかな?別に大丈夫だよ。初めての仕事もあっただろうし、今日は早く休みなさんな」
料理長はそう返す。
「……は、はい。分かりました」
ここは、料理長の言う通りにしよう。
食堂を出て部屋へ戻ろうとしたその時、寮の中庭に汐莉の姿が見えた。
誰かに電話をしているようだが、何か不穏な感じがする。
ちょっと、耳を澄ませてみよう……か。
「そうですか。彼奴らが最近、また活動を活発化しているんですね。とりあえず、三期生のみんなには、何かあったら連絡するように伝えておりますので……」
そう、汐莉の声が聞こえる。
(彼奴らって、誰の事だろう……)
「塩小路さん?」
後ろから、誰かに声をかけられた。
「ひゃっ!?」
私が振り向くと、詩乃が居た。
「どうしたの、こんな所で立っていて」
「……あ、いや……その」
しどろもどろに返す。
「まさか、何か企んでいるのかしら?」
詩乃の言葉に、冷や汗が出る。
「まあ、それは冗談よ。明日も仕事があると思うから、早く寝た方がよろしいわ」
「そ、そうですよね……失礼します……」
これ以上は言い返せない為、私はあの会話が気にしつつもその場を後にした。
▫▫▫
「あれ、詩乃?どうしたの」
電話を済ませた汐莉が、詩乃に話しかける。
詩乃は、さっきの事を話す。
「あちゃあ、電話する場所間違えたわね」
汐莉はため息をつく。
「この話はここまでにしときましょう?塩小路さんも、悪巧みで聞いた訳じゃないだろうし」
詩乃がそう言うと、汐莉は頷いた。