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第1話 初めての仕事

翌日。


「……うーん、眠れなかった」

朝の支度を済ませながら、そう私は呟く。


住み慣れた家を離れ、寮暮らしになった。

寮の部屋は至ってシンプルで、持ち込みは自由らしい。


……が、緊張で寝れなかった。


「おはよう、翠子」

お父さんの声が扉の向こうから聞こえる。


「朝ごはん、出来た」


「……あ、うん。もう少しで出るから」


▫▫▫


ちなみに、お母さんは居ない。

旧姓を使って弁護士やっていたが……5年前、不慮の事故で亡くした。

今は薬剤師として働いているお父さんと共に、暮らしている。


▫▫▫


部屋を出て、食卓の方へ向かう。

食パンと卵焼き、トマトスープがある。


「いただきます」


黙々と朝ごはんを食べる。


「……今日から、『仕事』が始まるんだな」

ふと、お父さんが言った。


「うん」


「怪我だけはしないでくれ。これでも大事な娘、だからな」


いつも、私の事を心配してくれている。

突然変異(アンバランス)と言われた時も、色々と心配した。


「大丈夫だよ。無理はしないから」

そう私が返すと、お父さんは微笑んだ。


朝ごはんを食べ終え、荷物を持つ。


「行ってきます」

と私が言うと、「行ってらっしゃい」と言うお父さんの声が聞こえた。


▪▪▪


「おはよう」


寮のエントランスに、城川先輩が居た。

どうやら、私を待っていたみたいだ。


「おはようございます、先輩」


「一緒に登校したいと思ってな。待っていたんだよ」

そう、城川先輩が言う。


「学年違いますし、私の事は気にせずに早めに学校に行ったらって、思うんですけど」


「……まあ、そうなんだけどな。俺、誰かと一緒に登校するのはあまり無くて」


先輩のそういうところ、なんか不思議……


「とりあえず、学校に行こうか」


私と城川先輩は、寮から出た。

ここから学校までは、歩いて15分程。いつもはバスを使っているけど、たまには歩くのも良いかも。


「……なあ」

途中、ふと先輩が話しかける。


「はい、なんでしょう?」


「これから、お互い大変な仕事を請け負うと思うが……頑張ろうな」


「はいっ!」


▫▫▫


学校へ着いた。

正門に、何人かの警察官が居る。

その中の一人は、確か樹也巡査だったっけ。


「あ、お二人とも。おはようございます」

樹也巡査が話しかけた。


「おはようございます。……何故、巡査が此処に?」

城川先輩が言う。


「見張り担当の警察官と、打ち合わせをしていました」


どうやら、Ver.305(私たち)が通っている学校に警備を付けるらしい。


「どうして、そこまでするのかなぁ」

と、私は呟く。

『保護として寮に入居』と聞いた時から、ずっと気になっていた事だ。


「……此処だけの話、顔合わせの時に言っていた『一期生』の件が絡むらしいのです。それ以上に関しては、流石に分かりませんが」

と、樹也巡査は小声で言う。


「それ、話しても大丈夫なのです?」

城川先輩が言う。


「まあ、汐莉さんに言わなければ大丈夫だと思いますが」


その時、チャイムの音が聞こえる。

1時限目の10分前を知らせるチャイムだ。


「引き止めてしまいましたね。……それでは、また放課後に」

そう、樹也巡査は言った。


▪▪▪


その日の授業が終わった。

私と先輩は、特別施設へ戻る。


「お疲れ様です」

部屋へ入ると、既に皆が集まっていた。


「集まったわね。それじゃあ、本日から任務が始まります。とりあえず今日は、能力の小手調べみたいな感じでやりましょう」

汐莉が言う。


突然変異(アンバランス)の能力は様々な事から、暫くのうちは二人一組でやる際にどの能力が合うかやってみるみたいだ。


「では、本日は……翠子さんとネオン君で組んで今日は麹町圏内、ベベロちゃんと冬馬君で蔵前圏内をお願いします」

そう汐莉が言う。

(見回り箇所は、緊急時以外は都内の警察署の圏内で伝えられる)


「……あれ、野瀬先輩は?」

冬馬が言う。


「野瀬君は、基本的に内勤で取り調べの補助を担当します」

樹也巡査がそう答える。


「他に質問は無いか?」

雷都が言うと、皆は首を横に振る。


「それじゃあ、皆!お願いね!」


▪▪▪


私と城川先輩は、最初に麹町警察署の方へ出向く。

見回り任務の開始時と終了時に、挨拶をするのが決まりだからだ。


受け付けの所で事情を話すと、そのまま特別対策課の部屋へ案内された。


「失礼します」

私と先輩は、部屋へ入る。

そこには、一人の男性が書類に目を通していた。

……が、こちらに気がついて読むのを止め、席を立つ。


「御二人が、《メージェント》三期生の方ですな……(わたくし)、麹町警察署の突然変異(アンバランス)特別対策課の課長で警部、岸良(きしら)と申す」

岸良警部がそう言う。


「私は塩小路翠子と言います」

「城川ネオンと申します」


私と先輩が言うと、岸良警部は頷く。


「さて、任務に関しては汐莉殿からお伺いしていると思われますが、大丈夫ですかな」


「はい、大丈夫です」

城川先輩が言う。


「そうですか。拘束者を捕らえましたら、(わたくし)らが動くので通信機(インカム)で申してください。それではよろしくお願い致します」


「「了解です!!」」


▪▪▪


私と先輩は麹町警察署を出ると、圏内を一通り見回る。


「しかしまあ、2時間程見回るのか。なかなか大変だよな」

街中を歩きながら、城川先輩はそう呟く。


「何事も無ければ、暇ですしね……」

私はそう返す。


……その時だ。


「「きゃぁぁー!泥棒ー!!」」

女性の声が、近くの路地から聞こえた。


「……っ!?」


声のした方へ向かうと、路地の奥から男性がバックを片手に走ってくる。

さらに奥には、女性が追っている。


「止まりなさい!」

私がそう叫ぶ。


「……クソ」

男性そう呟き、飛んだかと思うと壁に足を付けて走る。

明らかに不自然な行動だ。


「塩小路、アイツは突然変異(アンバランス)を持っている。捕まえるぞ!」

片眼鏡式の発見器(チェッカー)を光らせた城川先輩が、そう言う。


「わかりました!」


私は手に力を入れる。


「『ジェット・ウォーター』!!」


犯人に向けて、水を勢いよく発射する。

しかし、高いところを逃げるからか、なかなか当たらない。


(どうしよう)

私は一瞬悩む。

……が、犯人が体勢を崩す。


「今だ、塩小路!」

「は、はい!」


もう一度、『ジェット・ウォーター』を繰り出して、犯人に当てた。

見事に当たり、犯人が落ちてくる。


「憑依!」

城川先輩がそう呟くと、落ちてくる犯人に向かって、拳を喰らわせた。

犯人は、気を失った。


「……確保!」


初任務にして、確保する事が出来た。


▫▫▫


その後、警官に犯人を明け渡した。


「御二人、初任務にしてはお手柄ですね」

一人の警官が、そう言う。


「あ、ありがとうございます」


「それでは、後はお任せください」

警官と犯人がパトカーに乗り込み、その場を去った。


「腑に落ちない顔をしているな。気になることでもあるのか?」

見送った後で、城川先輩が言う。


「あ、はい、その」


私は先輩に、自分の攻撃がなかなか標的に当たらない事が気になると話した。

どうしても、動く相手には不向きなのかと心配なのだ。


「……そうか、それだったら冬馬くんと組ませたら良いかもな」


「弐崎さんのって、確か」


「『目的対象(ロックオン)する術』さ。相手に向けて攻撃を仕向けやすくなるらしいが、もしかしたら……彼と相性合うかもしれん」


話を聞く限り、先輩の言う通りなのかもしれない。


▪▪▪


そのあとは何事も無く、麹町警察署にも挨拶を済ませ、本部の方へ戻る。

部屋には、汐莉が資料を読んでいた。


「お疲れ様です」

二人が部屋に入ると、汐莉は気がついた。


「お疲れ様。突然変異(アンバランス)の犯人を捕まえたと、岸良警部から聞いたわよ!よくやったわね」

汐莉が言う。


「あの、隊長」

私は汐莉に、さっき思った事を話した。


「……そうね。そろそろもう一組も戻る事だし、二人にもどうだったか聞いてみましょう」

そう話していると、丁度戻ってきた。


「おつかれさーん」

ベベロが言う。


「こちらは何事もありませんでした」

冬馬が言う。


汐莉は二人に、さっきの事を話す。


「……ああね、それうちらも話とったんよ。私はどっちかってぇと、物理的な力技を使うし、それだったらってね」

ベベロが返すと、冬馬の方を見る。


「お二人が良ければ……次回は僕と塩小路さん、ベベロさんと城川さんで組んでみませんか」

そう冬馬も言う。


私と先輩は、その意見に同意した。


「それじゃあ、決まりね。……と、これから二期生の皆と三期生(あなたたち)の面会を兼ねて夕食会を開くわよ。準備が出来たら、食堂へおいで」

そう汐莉が言った。


こうして、初任務の日は終わった。

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[良い点] 久しぶりに見たジェットウォーター! ジックリもう一回読むと動きがなお分かって("・∀・)イイ!! 憑依で、今だ打ちするのも("・∀・)イイ!! つまり 全部("・∀・)イイ!! [気に…
[良い点] Σ(゜∀゜ノ)ノキャー 異能バトルやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ バトっとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ かっこえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! [気になる点] 必殺技叫ぶ …
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