あの一件の、後日談
汐莉は、病院へ運ばれた。
私と詩乃は、手術が終わるまで待っていた。
『手術中』のライトが消える。
「……終わったみたいね」
そう詩乃が呟く。
対応した医師が、手術室から出てきた。
「あの、手術は……?」
私が聞く。
「無事、終わりました。容態は安定しています」
医師の言葉に、二人は安堵した。
その後、汐莉は集中治療室へ運ばれた。
退院まではまだ少しかかりそうだと、医師が言っていた。
▫▫▫
「……無事で、良かったわね」
帰り道、詩乃がそう言う。
お母さん――三島あけみ――に変装したのは汐莉の判断だが、その結果お母さんが汐莉を助けてくれたのかもしれない。
そう私がその旨を話すと、詩乃は頷いた。
「そうかも、しれないわね」
▪▪▪
その頃、逮捕された《反組織部隊》の取り調べが行われていた。
「久しぶりだな、武瑠殿」
机越しに面と向かった後、そう剛条寺巡査部長が言う。
「………」
武瑠は目を逸らし、口を塞ぐ。
「詩乃殿から電話があったのだが、汐莉殿の手術が終わったそうだ。……何とか、生命を繋いだと話していた」
その言葉に、武瑠は涙を流した。
「……汐莉に、言ってください。申し訳なかった、と」
《反組織部隊》の幹部達は、突然変異特別法第7条の『国家組織に相反する行為は禁ずる』が適応され、全員無期懲役の刑は免れない結果になった。
▪▪▪
《反組織部隊》の施設――母のかつての仕事場――の近くにある、交差点に私は居た。
その場所は、お母さんが襲われた所だと剛条寺巡査部長から聞いている。
私は、信号機の所に小さな花束を置いた。
「翠子さん」
ふと、後ろから声がした。
その声の主は、車椅子に座っている汐莉だった。
「具合、大丈夫なんですか?隊長」
私が聞くと、汐莉は頷く。
「どうしても、ここに来たくてね。……ほら、今日はあけみさんの命日だから」
そう、汐莉が言う。
「あの、一つ聞きたいことがあって」
「ん、何?」
「どうして、あの時……私のお母さんに、変装したんですか?」
「そうね……貴女を守りたい、そう思った時にあけみさんの事を思い出して。『彼女』に変装するしかない、と感じたのよ」
「そう、ですか」
「ともかく、事が終わって良かったわ。……皆には、迷惑かけたけどね」
そう汐莉が言う。
「私は、隊長が無事で良かったです」
その言葉に、汐莉は微笑んだ。
私の《メージェント》生活は、まだまだ長く続いていく。
これから先、苦しい事もあるかもしれない。
けれど、その度にこの事を思いだそう。
「皆が居るから、活動出来ている」と。




