最後ノ決戦 2話 ついに、突入する(前編)
次回、最終話!
翌朝、《メージェント》の皆は強行突破に向けて準備をしていた。
(……緊張する)
私はそう思いながら、準備をする。
(絶対に、隊長を助けないとね)
その気持ちは、皆も同じだろう。
失敗は許されないが、精一杯頑張るだけだ。
「皆、準備出来たかしら」
詩乃が三期生の部屋へ、話しかけてきた。
その言葉に、皆は頷く。
「では、改めて突破の件についてお話をするわ。二期生の部屋へ来ていただけるかしら」
▫▫▫
三期生は、二期生の部屋へ入った。
先輩方の表情が、いつもより固い。
……私達以上に、緊張をしているように見える。
「それでは、本日……《反組織部隊》の施設へ強行突破をいたします。組織員は全員、凶暴な能力を持っています。気を付けて、戦って欲しいわ」
針の術を持っている『チェイ』は、まいとめい、そして冬馬。
多重分身の術を持っている『ジレラ』は、雷都と智利、ネオン、ベベロ。
そして、奥へ向かうのは私と詩乃。
そのフォーメーションで行くと、説明をした。
「組織員を捕獲した組から、私と翠子さんのバックサポートをお願いしたいわ」
詩乃はそう付け加える。
「詩乃さん、そろそろ車が出ます」
樹也巡査が、そう話しかける。
「分かりました。……それでは、皆!行くわよ!」
「「了解!」」
▫▫▫
「《メージェント》側、動きましたね」
インナー・イヤーで通話しながら、白賀谷が言う。
「……はい、向かいます」
そう言うと、バイクにエンジンをかけて走り出した。
▪▪▪
数十分で、現場に着いた。
特殊部隊が包囲しており、バリケードがあちこちに立てられている。
「お待ちしていました」
警備第一課の、仲野谷警部が話しかける。
「突然変異特殊部隊を、配備致しました。いつでも突入出来ます」
「ありがとうございます、仲野谷警部。今から中へ入ります」
詩乃がそう返すと、仲野谷警部は頷いた。
「皆、突入準備!」
▫▫▫
「外、騒がしいな」
テイトが、そう呟く。
「テイト様、《メージェント》が居る模様です」
そうテルガが報告をする。
「……ようやく、オデマシだね。テルガ、皆に片付けるように伝えろ」
「は、承知しました」
▪▪▪
《メージェント》の皆は、施設の中へ進んでいく。
「ここは通さないよっ」
最初の扉に居たチェイは、針を大量に持ちながら言う。
「……かかってこい!」
眼帯を外した冬馬が、そう言う。
まいとめいはその場に留まり、他のメンバーは奥へ進む。
「小賢しいヤツめ!これでも喰らいな!」
チェイはそう言い、針を飛ばす。
……が、冬馬の気の流れで針は別の方向へ飛ばされる。
「今です、まいさん」
「……はいっ!」
まいは冬馬の背後から、塩ビパイプをチェイに向けて飛ばす。
「その術に、引っ掛かるもんか!」
チェイが針を持とうとした瞬間、在らぬ方向からナイロンテープが飛んでくる。
「……っ!?」
手首をテープで縛られ、チェイは困惑する。
「そこまで、よ。お嬢さん!」
めいはそう言い、手元を頑丈に縛った。
「やだやだ!放してよ!」
チェイは抵抗するが、ほどけない。
むしろ、更に縛りが強くなる。
こうして、一人目が確保された。
▫▫▫
「チッ、チェイがやられたのね。仕方ない、ここで本気出すよ!」
ジレラがそう呟くと、分身をし始める。
その数は、どんどん膨れ上がる。
「……何とか、戦うぞ!」
そう雷都が言うと、ネオンとベベロは頷いた。
「熱化!」
「憑依!」
「帯電流!」
三人はそれぞれ、分身に向かって拳を振り上げる。
拳が当たると、その分身は消えた。
その中で、智利は目を見開きながら集中していた。
自身の能力で、沢山ある分身から『本体』の方を探しているのだ。
(『本体』は、『オーラ』が若干違うはず……)
そう智利は思いつつ、見張る。
分身は白い『オーラ』を身にまとっている。
それでは無いのが、『本体』だ。
智利が集中して見始めてから、数分。
分身の中から、少し赤みがかった『オーラ』が見えた。
智利は、その『オーラ』に向かって走る。
「堪忍!」
智利が拳を喰らわすと、分身が一気に消し去った。
「……まさか、本体を見抜くとはね」
倒れたジレラが、そう呟く。
「僕の眼を、侮るな」
そう智利が返すと、ジレラの手に手錠をかけた。
▪▪▪
私と詩乃は、ようやく『玉座』の部屋へ入れた。
……が、そこには誰も居ない。
「……何処に隠れて居るのかしら」
そう詩乃言い、踏み入れる。
その瞬間、私は何か嫌な気を捉えた。
普段働かないような、勘だ。
「詩乃隊長、伏せて下さい!」
詩乃が伏せようとしたとき、誰かが横切った。
「……イッ!?」
詩乃が、苦痛の声をあげた。
ものの一瞬で、その人が詩乃の腹に蹴りを炸裂したのだ。
「……ククク、鈍間だねぇ」
『彼』は言うと、詩乃の髪を捕まえる。
――そう、蹴りを炸裂したのは、紛れもなくテイトだった。
「詩乃隊長を放してください!」
そう私は言い、手に力を入れる。
……その時、テイトは私に向かって手をかざす。
テイトが目を見開くと、衝撃波が炸裂した。
「!?」
余りの衝撃波に、言葉が出ない。
それに、身体が痛み始める。
(……どうしよう、このままじゃ!)
そう思った時、見覚えのある玉が部屋に入ってきた。
その玉から、煙が出てくる。
「てめぇ!これ以上、姉の子に手を出すな!」
そう声が聞こえた。
「誰だ、貴様」
テイトがそう返すと煙は消え、人物が現れた。
「……FBI特別捜査官の、白賀谷珠希さ」
▫▫▫
「FBIの、特別捜査官?」
私は、白賀谷の言葉に困惑する。
「アメリカ本土では、《メージェント》はFBIの管轄下にある。僕はそこに所属しているのさ」
白賀谷はそう返す。
「貴様……どうしてここに」
テイトが声を震わせながら、言う。
「そりゃ、FBIのお偉いさんからの指示さ。それと、テイト……いや、三島武瑠。さっきも言ったが、そこの娘子はあんたの姉の子で、塩小路翠子さんと言うのさ」
テイトは、私の方へ向く。
「……んなもん、信じられるか。俺には、親族は姉しか居ねえ……」
テイトが言うと、私に向かって拳を振り上げてきた。
私は咄嗟に身構えた瞬間、誰かが私の前に立ち塞がった。
目の前に、三島あけみの姿が見えた。
テイトの拳を、身体で防いだのだ。
「あんた、いい加減、目を覚ましなさい」
彼女はそう静かに言うが、次の瞬間には汐莉の姿になり口から血を吐き出す。
「グッ……」
汐莉は、腹を手で押さえながら倒れ込む。
「隊長!」
私は、咄嗟に汐莉を抱え込む。
「……ごめんね、翠子さん。私には、これしか、出来な……」
そう、汐莉が言うと意識を失った。




